12話
「キャーーーー!!」
声が聞こえた方向に視線を向けると、生徒会長が屋上の作にしがみつき、今にも落ちそうにぶら下がっている。
「おい!和樹!!」
元気が振り向くとそこに和樹の姿は無く、和樹は体育館と校舎をつなぐ渡り廊下の屋根を走っていた。
「言葉より体か……、アイツらしい」
元気も和樹に続いて、屋根から屋根へと飛びうつり、生徒会長がぶら下がっている屋根の下へ向けて走る。
「っ…………」
藍花は必至に屋根を掴み上ろうとするが、コンクリートの壁に突起は無く、ただ滑るばかりで全然上れない。
(このままじゃ落ちちゃう……)
藍花の頭に死と言う文字が鮮明に浮かぶ。
「柔道部の奴らは何故助けない?、まさか、動揺しているのか」
和樹は時間がたっても助けない柔道は使い物にならないと判断し、今出来る最善策を考える。
「今から屋上までは遠すぎるし遅い、霊力は人の目が多すぎる、下はコンクリート、あの高さだと即死、何か方法はないか……」
和樹は渡り廊下から校舎のベランダに移り、走る。
「もう…………だめ…………キャーーー!!」
藍花は限界を迎え五階の屋上から地面にまっ逆さまに落ちるが、突如、和樹の視界がスローモーションの様に遅くなる。
(まずい!!、このままじゃあ間に合わないどうするんだ!)
視界に生徒会長が写りゆっくり下に落ちていく。
(霊力を使うか?、いや、あれはまずい、だが他に手は……)
ゆっくり流れる景色の中で和樹は考える。
(どうすればいいんだ!!)
ちょうどその時、生徒会長の姿とその向こうに満開の桜の木が移った。
「これしかねぇ!!」
和樹はベランダの手すりを蹴って飛び出し、落ちる生徒会長を抱き止めて自身の背中から桜の木に突っ込み、いくつもの枝を折って地面に落ちた。
「怪我は無いですか?」
腕の中で震えている彼女に優しく声を掛ける。
「うっ……うん……こわかった……ものすごく……こわかったよ……」
彼女は和樹の腕の中で声を震わせながら、ただ、泣いていた。
「もう大丈夫だからね……大丈夫だから……」
和樹は震える彼女の頭をなで、恐い夢を見た子供を安心させるように、
優しく、何度も大丈夫と言い聞かせる。
「おい……和樹大丈夫か……」
後方から、元気がやって来た。
「ああ……かなり痛いが、無事だ……」
元気に視線を移し、苦笑いで答える。
「だが、結構血が出てるぞ!!」
「え?」
和樹は地面に視線を移すと、赤い水溜まりゆっくり広がっている。
「あ……」
一言言うと和樹は地面に倒れ、薄れ行く意識のなかで聞こえたのは会長の声だった。
・・・・
「ここは...」
上半身を起こし、部屋えお見渡すと、そこには真っ白な壁と、シンプルな棚、テレビ、折りたたみの椅子と洗面所、が写った。
「...って事は...ここは病院か...」
取り敢えず、ここが牢屋や、未知の場所でなかった事に安心感して、再びベットに倒れこむ。
「..うっっ..」
ベットに倒れた衝撃で背中に痛烈な痛みが走った。
「どうなっているんだ...」
痛みが走った背中に恐る恐る右手を伸ばすと、突然、窓の外に気配を感じた。
「白か?」
「白です」
閉められたカーテンの向こう側から、窓ガラスをつつく音が聞こえ、和樹はベットから起きてカーテンと窓を開けると、左側に縦に走っている雨樋に器用に止まっている白いカラスがいた。
「白、そんな所で何をしている?」
「何をしているって、和樹が怪我をして病院に運ばれたと聞いて、心配して来たんじゃが...具合はどうだ?」
「まだ怪我の確認はしていないけど、感覚で言えばそこそこひどいかな?」
後ろに振り向き、呟く。
「どれ、みせてみい...」
和樹が後ろを向いて上着を脱ぎ、痛々しく巻かれている包帯を取ると、右の腰から背中の真ん中まで、枝に切り裂かれたと見られる、傷痕があり、綺麗に縫られていた。
「そこそこひどいかな」
「やっぱりか...」
和樹はため息をつくと取った包帯を眺める。
「包帯取ったわいいけど...白...巻き直せる?」
「鳥が包帯を巻けるとおもうか?」
白は翼を広げ、首を横に振った。
「え...」
「え...」
一人と一羽の間に何とも言えない空気がただよった。
「ええっ!!!!」
このあと和樹はナースを呼び包帯を巻き直してもらったが、ナースの軽蔑の目線が心痛かった。




