11話
「おっはよう、和樹!!」
朝っぱらにも関わらず元気のいい声が後ろから聞こえて来る。
(朝から元気だなぁ~あ、元気だからか……)
「挨拶はしっかりかえしなさい!!」
元気が和樹の背中にドロップキックを入れ、和樹は通学路を三回転ほど転がる。
「いっていなあ……朝っぱら友達にドロップキック入れる奴がおるか!!」
和樹は埃のついた制服を払いながら起き上がり、元気に強く抗議する。
「俺は挨拶のろくに出来ない和樹に育てたつもりはない!!、俺は……友として、親友として、親として……悲しいぞぉ~~う」
元気はわざとらしく、涙を拭く仕草をする。
「友としては分かるが……俺はお前の子供になった覚えはないぞ!!」
和樹が強く言うが、元気は何処吹く風と全く気にしていない。
キーン、コーン、カーン、コーン♪
その時、門限五分前のチャイムが鳴った。
「和樹!!急がないと遅刻するぞ~!!」
元気は陸上部のように見事なロケットスタートで、和樹を置いてきぼりにする。
「こら!!元気!!自分の荷物ぐらい自分で持ちやがれ!!」
姿が完全に見えなくなった、元気を和樹は必至に追いかけるのであった。
・・・・
「はぁ……はぁ……なんとか……間に合った……はぁ……」
「遅いぞ和樹、早く俺の鞄よこせ!!」
教室に滑り込み、なんとか遅刻せずにすんだ和樹を元気は揚々とした態度で迎える。
「元はお前が……」
「はい~席につけ~ホームルームを始めるぞ~」
和樹の頭に主席簿を入れて、担任の萩原先生が教卓に付く。
「え~、今日から平常の授業を行う訳だがくれぐれも、真面目に取り組む様に、授業中携帯触るような奴は、異性のトイレで携帯触るか、クラス全員の目の前でエロゲーやってもらいますのでそのつもりで!!」
(((((普通に没収だろ!!)))))
全員が心の中でツッコミを入れた。
・・・・
「以上でホームルームを終わります、くれぐれも指導票なんて書かれないようにな!!俺、残業したくないから!!」
萩原先生はそう言うとさっさと教室を後にした。
(あ~、眠い、早く授業終わらないかな……)
心の中で呟くやくと和樹は一時間目の授業の準備をし、机にうつむせになった。
和樹は授業を話半分に聞きながら過ごし、昼休みに入る。
「あ~、腹へった!!メシだメシ!!」
「成瀬さん一緒に食べない?」
人それぞれ、購買に昼食を買いに行ったり、桜の木の下で食べようとしたり、他のクラスに行ったりと、教室はがらがらになる。
「和樹~、昼飯高校生らしく屋上で食おうぜ!!」
元気がコンビニ弁当をぶら下げてやってきた。
場所は移り変わり、和樹と元気は校舎の屋上目指して階段を登ってると、目の前に人だかりが出来ている。
「ねぇ、この学校屋上は大人気なんだね」
元気は近くにいた男子生徒に話かける。
「いや、いつもはこんなに混雑していないんだけど、今日は柔道部の奴らがやって来て……」
ちょうどその時、がたいのいい男子生徒が屋上のドアから入って来る。
「お前ら!見せ物じゃない!!早く帰れ!!」
男子生徒は、集まっている生徒に強く言うと、ふたたび屋上に出て、ドアを強く閉めた。
「我が物顔のあの態度気に食わねいなぁ、和樹」
元気は怒りを表にして、腕を組む。
「俺は興味ない、屋上はここだけじゃないし……」
「いや、屋上は一番高い所にあるから屋上なんだ!!」
元気は胸を張り堂々と宣言する。
(なんだ、そのこだわりは?!)
「だったら、どうするんだ?、入学早々柔道部の奴らと喧嘩するのか?、俺はパスするぞ、やりたきゃ勝手にやれ!!」
和樹は振り返り教室に戻ろうとすると、元気が慌てて、和樹の腕にしがみつく。
「待って、待ってよ~、折角ここまで来たんだ、何もせずに教室に帰るのは無しでしょ!!」
和樹は元気の腕を振りほどき、向き直る。
「じゃあ何処行くの、他の棟の屋上にいくか?、体育館の屋根の上か?」
「それだ!!」
元気は何か納得したように手をポンと叩く。
「え?!」
こうして、和樹と元気は先程の屋上とは反対側にある体育館の屋根に登った。
「しっかし寒いなぁ……」
元気が身体を震わせながら言う。
「四月とは言えまだ上旬だからねぇ」
※この日最高気温九度、風速三メートル、まだまだ寒い。
「藍花さん俺と付き合って下さい!!」
反対側の屋上から声が聞こえて来る。
「新年度早々、モテモテだね、あの生徒会長」
和樹が棒読みで言う。
「そうだな」
元気もまた、棒読みで答える。
「ん?!それだけか?」
元気に視線を移し、不思議そうに見る。
「それだけだが?」
元気もまた、何聞いてるんだ?と不思議そうに和樹を見る。
「確かお前、あの生徒会長室の親衛隊、隊長じゃ、なかったっけ?」
「だっただ、今は、次の世代に託したよ」
「次の世代って誰だよ」
「佐藤だ」
「ああ、昨日生徒会長に告白していたあの佐藤ねぇ~、あの佐藤?!」
和樹は屋上に向けかけていた視線を戻し驚く。
「元気!!あの佐藤だぞ、大丈夫なのか?!」
元気の胸ぐらを両手で掴み、強く揺さぶる。
「だ、大丈夫、だって……」
数回揺さぶられた後、和樹の手を振りほどく。
「あいつは、惚れっぽい奴だが、純粋だ、変な方向には進まないさ」
元気の確信した台詞に和樹は「そうか……」言うしか出来なかった。
「キャーーーー!!」
「藍花さん!!」
声が聞こえた方向に視線を向けると、生徒会長が屋上の屋根にしがみつき、今にも落ちそうにぶら下がっていた。




