悪役令嬢に転生したんですが夫が甘過ぎるので誰かなんとかしてほしいのですが。
私→わたくし
それでは~
わたし、中澤優良はどこにでもいそうな高校二年生でした。
はい、どこにでもいそうな高校二年生でした。大事なことなので繰り返します。乙女ゲームヲタクでしたが、クラスに1人はいると思います。だから乙ゲーヲタクということは大事なことではないのです。乙ゲーヲタクのこれといって目立たない高校二年生でした。
つい先ほどまでは。
というのも水泳部だったのですが、先輩方の悪ふざけで飛び込み台から落とされてしまい…気づいたら豪華絢爛なお部屋に倒れていたのです。あの先輩方は今どうしているのでしょうか。本当に迷惑な先輩方です…。
それにしても…ここはどこでしょう。無駄に広いお部屋ですけど。たぶんわたしの家よりも広いですよここは。変にキョロキョロしていましたら、でっぷりと太ったおじ様がお部屋に入ってきました。
「我が娘よ、起きたか?心配したんじゃよ?倒れたりして。王家に取り次ぐ道具が消えるかと思ったぞ、我は。わはは!」
開口一番なかなか酷いことを言うおじ様ですね。私は娘でもないですし、それにその娘さん(?)が可哀想です。子供は道具ではありません!ですのでわたし、おじ様に一言物申しました。
「おじ様、娘さんが可哀想とは思いませんか?」
すると、このおじ様は顔を真っ赤にして
「なんだと!可哀想っ?!ハッ!この世界において子供は道具も同然だと、家を繁栄させることが第一だとずっと言ってきただろう!ユーリ、お前はドゥンディンガル公爵令嬢だぞ!いい加減わきまえろ!」
と怒鳴って来ました。
公爵令嬢と言われましても…。ユーリさんでもありませんのに…。あれ?ユーリ…ドゥンディンガル公爵令嬢…。あ!もしや…これは…知る人ぞ知る乙女ゲーム「王妃目指してれっつとらい」なのでは!あぁ、皆さんは知りませんか…。
男爵令嬢のアリス・カナルリーンラというめっちゃ可愛い女の子がユーリ・マリアーノ・ドゥンディンガル公爵令嬢の婚約者であるディーゼル・チャールズ・ファルコン第一王子…その他諸々のイケメンを虜にして逆ハーを目指す…っていう普通のストーリーの乙女ゲームです。何故、知る人ぞ知るなのかといいますと細部まで細かい設定があるからなのです。ただ、素人の方が作られており表立って販売もしていなかったので…知る人ぞ知るっていう表記になったわけです。
…なぜわたしが知っているのかと?
それは素晴らしい乙女ゲーム探して日々ネットサーフィンをしていたからです。自慢は出来ませんが。華の高2がやることでは…ありませんよね…。話が逸れました。
ということはいわゆる転生をしたんですね!わたしは悪役令嬢ですか…。そういえば悪役令嬢はどのルートをとっても死罪ですね。死罪は避けたいですが生で乙女ゲームのストーリーも見たいですし。そのためには勉強をしてある程度の教養を身につけなければ…。不本意ですけれどもあのおじ様についていくしかないでしょう。
そこからのわたしの努力は素晴らしいものだったと自画自賛してもいいでしょう。礼儀、乗馬、武術、勉強、王妃教養、魔術など。血の汗が滲むような努力をしました。
そして、運命のカルガシューン学園への入学。貴族の子は皆カルガシューン学園へ入学する事が義務づけられています。勿論費用は家持ちです。税金は使えません。しかし、それまでの功績が素晴らしい人には国持ちになります。今年はわたしだけでした。わたしは孤児院への寄付、訪問は一週間に一回の頻度で、学校の設立、これが一番難しかったです…貧民層やシングルマザー家庭などへの寄付…ちゃんと審査しましたよ…あとは公園の設置などをしましたから。しかしそれは家にお金があったからなので、権利はヒロインに譲りましたが。その後お礼がありました。ここでは珍しい生地を使用していて、綺麗な刺繍が施されたハンカチでした。婚約者との仲は上々でしたし友達もできました。幸せでした。
しかし、学校内でこんな噂が飛び交うようになりました。
「アリス嬢がディーゼル王子とその取り巻きに取り入っていて仲がよくなっている。」というものでした。
取り巻き…いえ、宰相の息子のエドワード様、経理大臣の息子のハッセル様、魔術大臣の息子のカインズ様、総務大臣のトーマス様とわたしの婚約者の第一王子のディーゼル様達はアリス嬢にメ…メロメロだという噂でした。最初は信じられなかったのですが、現場を目撃してしまい…噂を認めざるを得なくなりました。半分のわたしは乙女ゲームを生で見ることができて嬉しいのですが、もう半分は寂しかったです。
そして、遂にディーゼル王子から呼び出しを受けてしまいました。断罪…その言葉が頭の中を壊れたレコードのように繰り返していました。取り巻きのご令嬢方は婚約破棄をされており、退学までしてしまっているのです。彼女達は泣き崩れることなく、自分を律して、最後まで凛としていたといいます。わたしはできるでしょうか。指定された中庭まで行くとディーゼル様と取り巻きの方々と…囲まれるようにしてアリス嬢がいました。
「マリア、アリス嬢がマリアが苛めてくると言っているのだが本当か?」
ディーゼル様が優しい声で仰りました。最後まで優しいディーゼル様の心が嬉しくて、でももうこの方の隣にいることは叶わないのだと考えると涙が溢れてしまいました。最後まで醜態しか晒せませんでした。彼女達は素晴らしかったのだと増してわかります。アリス嬢が叫びました。
「なんで!なんで、私を苛めてたあんたが泣いていいのよ!私を苛めたくせにぃ」
しかし、やってないことで責められると流石にわたしもイラつきます。文句を言おうとしたその時でした。
「苛められたって言ってるけど、何されたかは今日話すからって教えてくれなかったよね?何されたの?」
とディーゼル様が厳しい顔つきで仰りました。アリス嬢はディーゼル様がそんな顔をしているのに気づいているのかいないのか泣きながら話始めました。
「ドレスを破られたり…鞄を切られたり…階段から落とされたり…。」
すると、宰相の息子のエドワード様が聞きました。
「うん…いつやられたの?」
アリス嬢は不服そうでしたが答えました。
「最近は先日のダンスパーティーの帰りですわ。」
すると、エドワード様は
「ダンスパーティーの帰りねぇ…ユーリちゃんの立場知ってると思うけど、第一王子の婚約者だよ?未来の王妃候補だよ?ダンスパーティーの帰りだろうが何だろうが護衛がつくんだよ?護衛はユーリちゃんはそんなことやってないって証言してたけど?」と嬉々として反論しました。それはそれは嬉しそうに。
「それはっ!ユーリ様が護衛を買収したか何かしたからでっ!」
アリス嬢の苦し紛れの答えに皆さんは顔を歪めていました。
「知ってた?護衛って俺の妹なんだけど。流石に男が女子寮に入れないデショ。」
と一番顔を歪めていたトーマス様が苦言を呈しました。アリス嬢は可愛い顔を歪めていました。そして、わたしを睨んでいました。可愛い顔が本当に台無しですよ。そんなことを思っているうちにとんとん拍子に話は進み…遂に
「アリス嬢、いや、アリス・ニーファンルクス・トーベルス、あなたは間者だったのだな。そして、未来のこの国のトップを誑かして揺るがせ、そのすきに攻めてくる予定だったと。」
ハッセル様が静かに言いました。知らなかったのはわたしだけなようで、
「あのハンカチで分かったのだ。アレを手に入れられるのはこの国では王家のみ。アリス嬢は王家ではないのに、アレを手に入れていた。ということはかの国の間者としか考えられない。」
ここまでカインズ様がいうとアリス嬢は狂ったように笑い出しました。
「あははははははは!ははははっは!あんた達は、失敗したら私がどうなるか、知らないくせに!でも、少しの間あんた達が私の手のひらで踊るのをみるのは楽しかったわよ!特にあんた!そう、そこの女だよ!こっちは命懸けなのにお前は恋で泣いたり笑ったり、男を私に捕られて泣いていたのは傑作だったわねぇ!…っ!私はっ誰かに愛されたことがなかったっ!前世でもっ!現世でもっ!現世はっもっと酷いのっ!道具としかみてくれないっ!だから少しの間でもっ少しでもっ愛されたことがっ嬉かったぁっ!敵なのにっ!うれ…し…かったの。嬉しかったのっ!形だけだとっ知っているのにっ!心はっどう足掻いたってっあの女のものだとっ知っていたハズなのにっ!心まで欲しくなった…。」
そして、泣き崩れました。どこからか現れた衛兵が地下牢まで連行して行きました。刑を免れることはできないでしょう。助けることは出来ませんしあの方も望まないと思います。わたしの頬を涙が一つ伝っていきました。そんな自分のイヤな女加減に腹が立ちました。暫くの沈黙の後、声を発したのはカインズ様でした。
「マリーに許しを乞わなければいけないな。」
どこか諦めたような声でした。そして、中庭を去っていきました。ハッセル様とトーマス様もそれに続きます。中庭に残ったのはわたしとディーゼル様だけになりました。第一声は
「マリア…。俺が追求した時どうして泣いた?」
という意地悪な質問でした。ディーゼル様が好きです、なんて言える訳ありませんから。前世の推しメンはディーゼル様でしたけど。恥ずかしさの方が増しているので言えません。
「マーリーア?どうしたの?婚約者なのにー?」
ディーゼル様は意地悪な声でまだ続けます。答えを知っているのに聞くディーゼル様に逆らえない事に悔しくなってつっけんどんな声で返します。
「婚約破棄されると思ったからですっ!これで満足ですかっ!」「つぁっ!」ディーゼル様が変な声を出しました。
「カワイイッ!ウワッ!まさかそうくるとはっ!」
ディーゼル様の様子がおかしいです。アリス嬢に感化されたのでしょうか?それとも素が出たのでしょうか?前者だったらヤバいです。
「病院いきましか?」
ああっ!焦って噛んでしまいました。ディーゼル様は震えています。
「ププッ!『いきましか?』だって!マリアは本当に可愛いなぁ!」
悶絶するわたしを残して、ディーゼル様は自分の世界へと入ってしまいました。なんかブツブツ言ってますけど…聞いていないフリをしてをきましょう。ええ、わたしはなーんにも聞いておりませんとも。聞いてないったら聞いてない!やっと、こちらへ帰ってきました。
「ごめん!マリア、ゆるしてよ!」
下手にでるディーゼル様が珍しくてにやけてしまいました。許しととったのかなんなのか、
「これからマリアは俺のことディーって呼ぶんだよ。わかったね?」
という無理なお願いをしてきました。断ろうとしてディーゼル様の顔を見たら…
「ディー様。これでよろしいですか?」と言ってしまいました!なんたる失態でしょう!わたしとしたことが!でも、大型犬が小型犬の目をするのは反則です。イケメンに限りますけれど。かくしてわたしは婚約者に甘やかされて溶けたアメのようにドロドロにされました。そして、ディーゼル様という型に入れられて名実共にディーゼル様の婚約者…いや妻となったのです。
転生したら悪役令嬢になりました。でも、今私もわたしも幸せです。ただ一つ願いが叶うならばこの夫をどうにかして欲しいです。甘過ぎます。私もわたしも糖分過多でディーゼル様という沼に益々墜ちてしまうでしょう。
どうでしたか?(汗)初めて書いたものを引っ張ってきたので…。
誤字脱字とうごさいましたら報告の方よろしくお願いします。
また、お気づきの方もおられるかと存じますが、ディーゼルがマリアと呼ぶのはユーリ・マリアーノ・ドゥンディンガルのマリアーノからとっています。分かりにくくて申し訳ありませんでした。
17・07・13 後書き改稿