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この繰り返す人生は、きっと俺への罰なんだ。齋藤を死に追いやった俺への。
数日後、気づけば俺は齋藤が入院しているという病院に来ていた。
『アレ』を乗り越えた個体に興味がわいたんだ。だってこんなことは今まで一度もなかった。
もしかしたら…今度こそ、この繰り返しが終わる前兆なのかもしれない。今の齋藤は、俺の希望だった。
やっと許されるかもしれない。俺の殺したあいつに。
許してもらおう。解放してもらおう。俺は耐えた。きっと許される。そうに違いないんだ。
友人だと言えばナースステーションですぐに病室を教えてもらえた。非常に険しい顔で。
何か言いたそうに口をまごつかせる看護師に促すように視線を送ると
「会ってあげて欲しい。でもあんまり…ショックを受けないでね」とだけ言葉を残し、彼女は去って行った。
その言葉に嫌な予感が胸を走る。
先から冷えていく手足の不快感を振り切り、俺は教えてもらった病室に向かった。
*****
齋藤のベッドは二人部屋の窓側にあった。
隣のベッドで寝ている老婆を横目に過ぎ、カーテンのかかった奥のベッドに向かう。
「齋藤、いいか」
ノックをするような場所もないので、代わりに小さく声をかける。
逸る気持ちからか緊張からか、かすれてしまった声に恥じるも、向こうから声が返ってくることはなかった。
待てども返ってこない返事に、構わず中に入ってしまうべきかどうか迷っていると、
「ヒロに、何か用ですか」
冷たく低い、俺の聞いたことがない声が後ろからかけられた。
声の元をたどると、そこには今の俺より何歳か上に見える落ち着いた風貌の男が立っているのに気付く。
いつの間にそこにいたのだろう。
「なになに、おにいちゃん、ヒロくんのお友達なの?」
何と答えていいかわからないまま立ち尽くしていた俺に、更に声がかけられる。
声の主を捜すように下を見ると、俺の脚にしがみ付く小学校低学年くらいの子供がいるのに気付いた。
男の傍にはあと2人ほど子供の姿がある。
いきなりのことにパニックになっている俺に焦れたのか、足元の子どもが「ねえねえ」とズボンを引く。
「い、いや……俺は…。齋藤君のクラスメイト、です」
その言葉を聞いた子供は、ふうん、と声を漏らし、男は静かに目を細めた。
「変なの。クラスメイトって友達じゃないの?ボクはクラスのみーんな友達だよ?」
子どもは無邪気に笑って言う。昔はきっと、俺だってこういう風に考えていたはずなんだ。
「……。…そう、だな」
“そうだったらよかったのに。”続く言葉はうまく音にならなかった。