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事態が変わったのは何度目の中学生活だっただろうか。もう数えることすら馬鹿らしいほどのあいつの死を見届けようとした時だ。
あいつは教室で、いじめの中心である山梨に裸で購買部までパンを買いにいくよう強要されていた。
その時「ああ、こいつ今日死ぬな」そう悟った。繰り返す中で俺は齊藤が死を選ぶ状態に何となく見当が付いていた。
あいつは『裸になること』を強要されると死ぬ。
何があいつをそうさせているのか、それはわからないままだが、確かにあいつは毎回それで死んでいた。
……最初にあいつが死んだのは俺が裸躍りを強要したからだった。
中々脱がないあいつに焦れて、服に手をかけた瞬間、……あいつはそれを振りほどいて教室を走り抜け、そのままの勢いで廊下の窓の外へ飛んだ。
山の上にあるこの学校は、裏側はそのまま山の斜面になっていた。……見つかったあいつは頭が窪み、脚には太い木の幹が突き刺さっていたそうだ。
その後の俺たちのクラスは……あまり、思い出したくない。
*****
教室がざわめく。
今回も変わらず、あいつは窓から飛んだ。何も変わらなかったこの現実に落胆する。ああ、今回もダメだった。
「今回はどうやって終わらせようか……」
繰り返し生きることにも飽きてきた俺は、痛みの少ない自殺方法を編み出すことを新たな生き甲斐としていた。
どうせ死ねばまたこれを繰り返すだけなんだ。一度として大学にも進まなかった俺の知識が持て囃されるのは精々高校1年くらいまで。
それなら辛い高校受験や高校での勉強、仕事を経験する前に死んでしまった方が楽だと、3度目の終わりあたりに判断したんだったような気がする。
しかしそう考えていたいつもの俺は、翌日の担任の一言に打ち砕かれた。
「昨日残念な事故にあった齋藤くんですが、幸い一命をとりとめたようです。皆さん、よかったですね」
“人殺しにならなくて。”そう暗に言っているような気がした。なんだよ、お前だって見て見ぬふりしてきたくせに。
そう言って一番安心してるのはお前なんだろ?責任問題だもんな。
甲田総合病院に入院していますから、と一言付け足してHRを終わらせた担任は足早に教室から去って行った。
見舞いに、行けっていうのか?