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風に校門前の桜が揺れている。馬鹿みたいに明るいざわめきが場を占めているのを遠くで聞いている。
ああ、今日は中学の入学式の翌日だ。
放課後俺は尋人を屋上に呼び出すんだ。
殴られると思って警戒している様子の尋人に思わず頬が緩む。
ああ……ああ、この言葉を言うのにどれほどの時間がかかったか……なぁ尋人。いいかげん待ちくたびれちまっただろ?
火照る頬に春の冷たい風が当たるのが気持ちいい。
深呼吸して真っ直ぐ尋人の目を見る。
尋人――
「――お前のことが好きだ。付き合ってくれ」
今なら俺はお前に許してもらえるか?