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めぐる世界の幸せを  作者: 麻埜ぼったー
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俺の中学生活では、毎回必ず一人の生徒が死ぬ。

……変な言い方に聞こえるかもしれない。でも、確かに毎回――あいつ、齊藤尋人は死んでいるんだ。




この世界が繰り返していると言ったら、人は俺を「狂っている」と指差すだろうか。

でも俺は知っている。あいつが死ぬ運命から逃れられないことを。


最初は夢か妄想なんだと思った。しかしそれでは、この先に起こることがわかる理由が説明できない。俺はこの現実を受け入れるしかなかった。





この世界は繰り返している。少しずつ形を変えながら、何度も、何度も。それは昔聞いた童話の一節。

おとぎ話に過ぎなかったその話は、二回目を自覚した中学2年の春、現実として俺の元へやってきた。


『俺はこの光景を知っている』

クラスメイトの一人がパシられているのを見てそう思った。

それをさせているのは俺がよくつるんでたやつで……。そうだ、前は俺も苛めの中心にいた。



しばらく見ていると「お前も入れよ」と友人から声がかかった。……そう、前と同じように。

なんとなくバツが悪くて、俺はそれに参加しなかった。


だってソイツ、自殺したんだぜ?


言っても誰も信じないだろうが。

……結局数ヶ月後のよく晴れた夏の日、『その齋藤』も宙を飛んだ。




*****




また何度かそれを繰り返して……何度目かのそれが起こったとき、俺は目を疑った。

だってあいつは女だったから。

今まで名前や見た目が違うことは稀にあったが、性別が違うのは初めてだった。


どうなるのだろうと、楽しみにしていた。所詮他人事だから。



結局、あいつが男だろうが女だろうが、そんなことは関係なしに苛めは始まった。


女の苛めってのは陰湿らしい。

男の時の方がまだマシだったんじゃあないかとさえ思った。


そう……その時俺は少しだけ、干渉した。そいつを助けるために。

最初以外で関わったのは、初めてだった。

理由は……女だったあいつがちょっと可愛かったからとか、そんなところだったと思う。


結局事態は悪化。

男に庇われるなんて生意気だ、とでも言うように事態は急激に悪化した。……行き着く先は変わらず自殺。それでも男の時より長くもったんじゃないだろうか。



その時からなんだろう。俺は……あいつに執着していたんだと思う。

いつかあいつが死なない道が見つかるんじゃないかって。

直接助ける気もないのに。


ああ、所詮他人事だからだ。これが人生の楽しみの一つになっていた。



俺はいつだって傍観者だった。

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