第二話 約束
きゃらきゃらしたのを書きたいのに、何だこのドヨドヨは。
――紡げ、紡げ、大海より生まれし絶えぬ炎――
「地を生み出し火炎、フレイムグラウン!」
***
「これは……また」
「えへへーすごいでしょー褒めて褒めて~」
しかし銀髪の少女を褒めるべきか、暫く休日さえまともに取れず疲弊し始めている受付嬢アリスは、逡巡してしまう。
ギルドとは一般的に討伐、採取、雑用の3つに主だって依頼は別れる。それに加えてお尋ね者を討伐するといったものがある。
基本人間やエルフやドワーフといった人型で知性あるものへの、お尋ね者が貼りだされるため中には忌避している者もいる。討ち取った証明としてはお尋ね者の所持する武器と、ギルドから配布される討ち取った本人のカードとなる。大抵お尋ね者となるものは魔剣と呼ばれる違法な武器を持っており、回収すれば報酬は上乗せされるのだが――
「その袋の中の剣、何本あるか分かりますか?」
「え、んー……40ちょっとかなぁ?一杯いたから取り敢えず皆の持って来ちゃった」
「そ、そうですか。ユリ様のギルドカードを確認させて頂いても」
「うん、はいどーぞ」
袋から薄く染みだしている赤い液体に視線を送りつつも、ギルドカードの討伐履歴を確認する。
全員ここ最近新人狩りをしていた冒険者と分かり、呆然としてしまう。
他の受付を見れば、何人かの受付嬢は引きつった顔をこちらへ向けている。
「確かに確認しました。武器のほうもお預かりさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
ユリという存在が抑止力になって、これから新人冒険者も安心して冒険への準備ができるだろうと安堵していると、何やらユリの不満気な顔が目に入る。
「どうかなさいましたか?」
「私頑張ったよ?」
「え?」
「アリスが……言ってたから……」
まさか、と数日前ぼやいてしまっていたことに後悔する。ギルドの規約は厳しくとも、それでも違反を行う輩が存在する。それにより新人を襲い身ぐるみを剥いで奴隷へ売り飛ばしたりするという集団がいると聞かされ、どうにか出来ないかと悩んでいたのだ。
基本違反を行った者を通告するには誰かが報告するしかないのだが、証拠がなければどうしようもない。それに規約違反がいると分かっても全く動かないのが今のギルドだ、腐ってるとしか言いようがないが、私だけではどうしようもできない。と言うか私がいなくなるとギルドは回らなく、休日を取って新人狩りの者共を討とうにももし許可無く休めば、私の冒険者登録を抹消すると脅されていて心労が溜まっていた。
しかしユリは魔物と断定されたものならば殺すのは躊躇わないのだが、人といったものには手を下さない方法をなるべく取ろうとする。
人殺しというのをあまり快く思っていないのだ。
それでも私の言葉を鵜呑みにして人を殺させてしまったことに罪悪感を覚える。
「――ユリ様」
「ん……」
「後で一緒にお出かけしましょうか」
「ぁ……うんっ」
ぱぁっとユリの表情は打って変わって晴れやかになる。もっとこの子には可愛らしい物で自分を飾ることを覚えて欲しい、少しだけでもいいから血生臭い世界とは別の世界を見てみて欲しかった。
休みは取れなくとも長めに休憩くらいは構わないだろう。そう考えてユリとアリスは小指と小指で約束を契った
「約束だよ!」
「はい。またお昼に」