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第一話 剣聖

「ん……っ。よしっと」

 ブーツの紐を結び終わり、体育座りのような体勢から立ち上がる。

 テーブルに食べ終わったご飯の代金800G(ガル)を置いて、まっすぐと依頼掲示板へと向かう。

 掲示板の前は依頼を迷う者、依頼を受ける者の獲物を横取りしようと冒険者を吟味する者、様々な人がいる。掲示板前の冒険者は私に気が付き、まるで執事やメイドが主が帰還した際に両際に寄るような様子で掲示板前までの道を開けてくれる。

 あまりそのままでいさせるのも迷惑だろうと龍の絵が描かれた依頼を、ベリッと引きちぎる。


「アリスさんっこれ受けるから読んで!」


 アリス、そう呼ばれた受付嬢は思いっきり顔をしかめる。


「そんな顔すると大人になる頃には旦那さんも引くくらいのしわになっちゃうよ?」


「しわ……っ」


「綺麗な顔なんだからもっと笑顔笑顔―! ほらっ、にこ~あっちょ痛い!ありすひゃんほっぺひっぱりのやめてええぇぇぇ」


 どうやら年がら年中問題山積みなギルドでしわの話はしていけなかったようだ。猛省。

 ヒリヒリと痛む頬を抑えながら文句を言うが、アリスさんにはいっつもスルーされる。


「依頼内容は西部ダンジョン98層、闇竜(ダークドラゴン)の逆鱗を取ってくる事。尚注意事項として、討伐せずに逆鱗を剥げば怒り狂い1層まで出てきてしまうこともありえますので、必ず討伐することです」


「りょーかい!アリスさんありがと!」


「待ちなさい。今受注手続きしますから」


「はーい」


 今にも走りだして行ってしまいそうな私はアリスさんに止められてぼーっと受注書をみつめる。ぽわぽわとした淡い光が浮き上がったかと思うと、すぐにその光は収まってしまう。


「はい、確かに受注完了しました。どうぞお気をつけていってらっしゃいませ」


「うん!すぐ戻るね!」


 言うが易し、ギルドの中央広場で呪文を唱える。

――繋げ、繋げ、我が道となりし先へと紡げ――

 背後ではアリスさんがまた頭を抱えながら叫んでいるがそのまま続ける。

「開かれし先へとの道を出せ、ディリード」

 

 ポーンと言う音と同時に私の目の前に、四角い扉が出現する。中から漏れ出る殺気に周囲の冒険者は腰を抜かしているが、気にせず中へと入っていく。


 そして目の前にはお城ほどありそうな大きさの、黒色の龍。


「やっほー!私の宿代のために―――


 死んでね」


 


 殺気があふれる扉が出現してから数分も経たず、また扉が開け放たれる。


「アリスさんー!黒竜の逆鱗取ってきたよー!あと討伐証明部位のしっぽもー!」


扉から赤い血をヒタヒタと零しながら全身真っ赤な銀髪の少女、ユリの少女の手には2mほどのしっぽと。黒々と輝く黒竜の鱗があった。

 しかしカウンターで他の冒険者の相手をしていたアリスは、あの子の引きずらす黒竜の血は洗っても落ちにくいという一点だけに、こめかみを抑えながらため息をついていた。

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