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客観
「アイツは殺さなければならない」
そう思った僕はアイツを殺そうとした。しかし、今日は大切なものを失ってまでアイツを殺すつもりはない。僕はアイツの殺しかたを考えるのをやめて、何だか白濁した霧のような眠りに落ちていった。
翌日の朝、目を覚ましたのは僕では無かった。気が付くと僕は高校の古びたトイレに立っていて、目の前には頭から赤黒い血を噴水のように流した同級生が倒れていた。僕は気違いのように叫びたくなるのを押さえて、必死に事態を把握しようとした。
トイレのタイル張りの床には湖のように血が流れている。
「僕は殺したのだろうか?」そんな疑問が頭をよぎる、そんなはずはない、僕はこいつを殺した記憶は無い。ただ、人間の記憶なんてものを僕は信じることが出来ない。そう、記憶なんて当てになら無い、特に僕の場合は…
僕は1ヶ月程前から、記憶を失う事が多くなった。全てアイツのせいだ。そして、記憶を失っている間に大抵アイツは問題を起こしていた。