山口奈津美
奈津美は朝7時13分の電車に乗り、8時20分とギリギリに学校に着く。
奈津美の学校は私立で一人一人に鍵付きのロッカーが与えられる。
鍵は各個人で管理し、忘れたときは担任に予備の鍵を借りるのだ。
はじめのうちは皆鍵でしっかり施錠していたものの、そのうち面倒になって鍵をかけなくなる。
山口奈津美をイジメていた中心人物、安藤慶子もその一人だった。
この日奈津美はいつもより早く登校し、周りに誰もいないのを確認すると、慶子のロッカーを開け、教科書を全てゴミ箱にブチ込めた。
その日一日慶子は教科書がないことを友達に嘆いていたが奈津美はそちらを見ないよう意識した。
次の日も早く登校し、慶子のロッカーを開け持ってきたライターで慶子のジャージや上履きに火をつけた。
とうとうクラス内で話し合いとなった。
「こんなことをする人がいるなんて先生は悲しい」
などと言う担任を見て、私がイジメられてるときろくに話も聞いてくれなかったくせによく言う、と思った。
次の日から慶子はロッカーに鍵をかけるようになった。
ある日、部活を終えた奈津美は職員室に向かった。
もう7時近かったので、ほとんどの先生がいなかった。
「失礼します。鍵を忘れたので予備の鍵を借りに来ました」
そう言って担任の机の引きだしから慶子のロッカーの鍵を抜き取ると、さっさと職員室を出た。
慶子のロッカーを開け、カバンから炭素とフッ素を混合させたものを閉じ込めたビンを中に入れ、蓋を開けてすばやく閉め鍵を閉めた。
明日の朝が楽しみだ。
このロッカーを開けた慶子は物言わぬ焼け焦げた死体となるだろう。
この密封されたロッカーの中に混合物が広がり、酸素が入りこんだ瞬間に爆発する。
奈津美は鍵を元通りに戻しておいた。