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僕らの革命 【改訂版】  作者: 片山 碧
8/45

前日

前日までは忙しかった。

みんなも忙しかっただろう。


メールや電話で計画の進捗は聞いていたけど、みんな自分の身の回りの整理もあるし、作戦の準備もあるし、で大変だったと思う。


くれぐれも周りの人達に気付かれない様にしてくれと注意を繰り返した。


僕も大変だったんだ。



深夜親が寝静まったのを確認してからそっと外に出る。

手には鍵。

夕方、玄関にあるキーボックスから車の予備の鍵を抜いておいたんだ。


父親は通勤には電車を使っていたし、母親も免許は持っていたが殆ど運転する事はない。


車は月に一度動かすかどうかといった具合だ。


多少動かしてもぶつけても解らないだろうし、計画の後なら気付かれても構わない。


どうしても僕が車を動かせなきゃいけないんだ。


歩いて数分の所にある貸駐車場に行く。

車は家には置いていない。

カーポートはあるけど狭くて自転車と一緒には置けないんだ。



水銀灯に照らされた銀色のステーションワゴン車。

うちの車だ。


乗り込んでキーを捻ると簡単にエンジンが掛かった。


メーターパネルに緑やオレンジの光が浮かび上がる。


ネットで調べて運転の操作の仕方は覚えてきた。

シートの位置は母親のと殆ど同じらしくて変えなくて良さそうだ。


ブレーキを踏んでオートマチックセレクター(と言うらしい)を『D』に動かす。

微かに車に振動がくる。

左のブレーキレバーをゆっくり下ろすとじわりと車が動く。


ブレーキを踏むとゆっくりしか動いてないのにつんのめる様に停まった。


そんなに強く踏まなくてもいいんだ…

ハンドルも目一杯回さなくても大丈夫なんだ。


僕は駐車場の中をぐるぐると走り回った。

しばらく乗ってたら段々要領が解ってきた。

難しいと思ってたけどやってみたら結構簡単なんだ…。


それから3日間毎晩練習して駅まで運転できる様になった。


今思えば警察に見つからなくて良かったと思う。





9月1日

学校が始まった。



イジメも再開した。

クラス中からの無視に始まって、休み時間には殴られて押さえつけられ、チリトリの綿埃や砂埃を顔からばらまかれた。僕の制服が綺麗なのが気にくわないらしい


休みがあった分だけ露骨に酷くヤられたよ。


羽交い締めにされた時に口の中を切ったらしくて血が止まらなくて困った。


顔を腫らして帰ったり、制服に血がつくと母親が心配する…。

親が苦情を言って、もし学校側が何か手だてをすると計画に支障が出る。


そればかりが気になった。



夕方のホームルームで腫れた顔を見て先生は「蒲生、少し太ったか?」と言った。クラス中が爆笑した。


放課後は罰ゲームと称して武田のローキックの標的にされた。

蹴られた脚の付け根は赤黒く変色した。痛みは途中からさほど感じなくなった。



…あと数日で…


そう思って堪えたんだ。


そう思えば痛みも辛さも軽減される様に思った。


これから形勢が逆転するのが解っていたのもあるし、何より僕には仲間がいると云うのが大きかったんだと思う。


僕は今は一人じゃないから、そう思えたんだ。



決行前日の夕方。


ヨシと待ち合わせて近くの公園で会った。


荷物を学校に持ち込む為に車が必要だったんだ。


仲間がそれぞれで武器を肩から下げて学校に入る訳にはいかない。

車を使えばみんなが荷物と一緒に校内に一度に入れるから。



車関係はヨシが任せろというので頼む事にしたんだ。


自転車で近くの公園に行く。

広い公園の駐車場に何台も車が置いてあった。


僕が自転車で駐車場に入ると奥に停まった車がチカチカとパッシングした。

ヨシだ。


綺麗な白いセダンだ。

近づくとヨシが運転席でニコニコと笑って手を上げた。


ヨシは乗りなよと言って助手席のドアを開けてくれた。「よくこんな車があったね」

「ああ。今朝早くから空港まで行ってきたんだ。」


「空港?」


「青いシャツ着て帽子被って、、これを首からかけて空港駐車場のそばにいるんだよ。」


ヨシはネックタグを見せてくれた。『○○空港駐車場サービス 係員 山田』顔写真はヨシだ。


「何だいこれ?」



「ほら、日本人は制服に弱いって言うだろ。

だから紛らわしい服着てさ『お客様のお車で車寄せまでご案内して車は隣の駐車場でお預かり致します。


ご旅行からお帰りになられたらここにお電話くだされば五分で車寄せまで車をお届けいたします。料金は1日千円です。』って言ってさ、このチラシを渡すんだよ。」


チラシには如何にもそれらしく印刷されている。


「これな、関西にあるホテルの駐車場サービスのチラシをちょっと加工して三枚だけ作ったんだよ。

老夫婦が前払いで六千円くれたから6日は引き取りに来ない。つまり6日間は盗難届けは出ないのさ。


元は駅前のスーパーで鍵付きの車を盗んで下半分だけ色を塗り替えて、これ付けるつもりだったんだけどな」


そう言ってグローブボックスからナンバープレートを取り出した。


「これ作ったんだよ。学校の担任のナンバーにしてやったんだ。この車なら必要なかったけどな」


そう言って楽しそうに笑った。偽造プレートだ。厚紙を何枚も張り合わせて、色を塗ってから上に透明な樹脂を塗ったらしい。


本物にしか見えない。



「こんな車でいいのか?」


「うん。充分だよ。」


「じゃあ明日、朝6時にガモウの家に行ってピックして順番にみんな拾ってから9時にA高校だな。

 …あのさ、この前の計画だと荷物運ぶだけだから車は何でもいいって言ってたじゃん。

半日だけ位ならさっき言ったみたいに駅前で盗んでも大丈夫だと思うんだけど、なんで急にナンバー付きですぐに足が付かない車に?」


「…ああ、保険だよ。もし、移動中にナンバー照会で捕まったら元も子もないだろ。」


「…PCの123照会(パトカーからのナンバープレート照会)か?…確かに最近じゃすぐ検索するらしいからな。


…じゃ、明日の朝迎えに行くよ。いよいよだな」


「ああ。」


ヨシは手を振って車で帰って行った。



…ヨシごめんな。僕、今嘘ついたよ。




家に帰って最終的な準備をしてからメンバーにメールで確認をする。


みんなからすぐ返信があった。


一名の脱落も無いようだ。




夕食の前に一度サイトに接続して自分の醜い姿を見て怒りを増長させ、武田のニヤリと笑う顔を思い浮かべる。

そうしないと両親の顔を見たら泣いてしまう気がしたから。



僕はやり遂げる。


僕の夢を奪った奴らに制裁を加えてやるんだ。

全国の沢山の苦しんでるみんなの先頭に立つんだ。


気付くと握り拳を握ってた。



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