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僕らの革命 【改訂版】  作者: 片山 碧
7/45

集合

武器を手にいれた日から僕は本格的に計画をたてはじめた。


猟銃が二丁あればメインの武器には充分だ。

あとはナイフでも包丁でも花火でも何でもサブとして使える。


…正確に何がいつどこに必要なのか

誰が何をしたらいいのか

展開は?

必ず起こるイレギュラーはどうするか?

人質は何人?

何を要求する?



…そして…幕引きは?




計画をたてればたてる程、人の動きの予測なんかできない事が解った。


以前からよく知ってる相手なら何となく解るかも知れないけど

…いや、もし知っていたとしても、例えば、首を少し傾けたとか、無意識に次にどちらの足を踏み出したかというちょっとしたきっかけで、その後の行動が大きく変わったりする訳だから…そもそも当人だって解らない未来を、周りの人間に解れと云う方が土台無理なんだ。


だから、ある程度フレキシブルに動ける様にしなきゃならない。


タイムテーブルは作らず、順を追ってやらなければならないポイントだけを抑えていく様に計画を立ててみた。


あとはその場の状況をみながら行動するしかない。



ある程度計画がまとまった時、夏休みはあと数日となっていた。

僕は仲間に集合をかける事にしたんだ。


計画の説明と、最終的な決断と決意の確認だ。


場所は隣町のカラオケボックス。




物置から父親が昔やってた釣りの竿バックを引っ張り出して来て、中の竿やリールはタンスの影に隠して、散弾銃一丁と実弾数発を入れた。


これを見て怖じ気づく位なら、そいつはメンバーにはできないだろう。


家を出る前にサイトで自分の情けない画像を見て怒りのテンションを自ら高めた。





ゼッタイ ユルサナイ








肩からバックを下げて自転車を漕ぐ。


散弾銃って重いんだ…


おじいさんの家から運び出した時には興奮してたからかそんなに重さは感じなかったのに。



散弾がバックの中で当たってカチカチと乾いた音を立てた。


途中でパトロール中のパトカーとすれ違った時は怖かった。変な汗かいたよ。



電車の中でも何だかみんなが自分を見てるみたいでドキドキした。

でもさ、武器を手にいれた時から僕は何だか気持ちに余裕ができたみたいなんだ。


電車が揺れる度にカチカチ鳴る薬莢の音を聞くと何だか安心する。大丈夫だよって言ってくれてるみたいなんだ。



…今、このバックを開けたらこの電車パニックになるだろうな…



電車は5分程で目的の駅についた。


駅前の銀行ATMに寄って貯金を全て引き出した。


23万円


小学生の時からコツコツと貯めたんだ。

…まさかこんな事に使うとは思ってなかったけどね。


人目を避ける様に銀行を出た。



店の前には既に友田は来てた。


友田は大きいから遠くからでもすぐ解る。


僕を見付けると大きく手を振った。

近くを歩いてる人が友田を見てる。


恥ずかしいな。



カラオケボックスのカウンターに行って偽名で部屋を借りる。人数欄は5人。


本当にみんな来るのか?


部屋の番号を後の三人にメールして部屋で待つ。


「蒲生くん、それなに?」

友田は釣りバックに興味を示した。


「後で見せるよ」

と言うとちょっと残念そうだった。


リーダーは他のメンバー達に平等にしなくちゃならない。


友田だけ先に見せると自分に特権があると思うかもしれない。

そうなると計画を実行するのに不具合だ。





最初に来たのはクーだった。



「ガモウってあんた?」

部屋に入るなりいきなり僕を見てそう言った。


同じ歳のはずなのに年上に見える。


「クーか?」


コクンと頷く。

小柄で金髪。 派手な服。大きなサングラス。


暑いのに長袖だ。


…日焼け対策が理由で無いことは知っている。手首を見せたくないんだ。


見た目はテレビや街中で見るギャルそのままといった感じだ。

サングラスを外した。

つけまつげの奥の眼は悲しそうに見えたのは僕の見間違いだっただろうか。


ソファーに座ってタバコを取り出す。


「てかさー、何人くんの?マジやるんだろうね?やんないなら帰るよっ」

射る様な視線で僕を見る。



「やるよ」


視線を外さず応えた。


「マジだよね?マジやんなかったら、あたしあんた殺すよ」



「裏切らないよ…僕が誘ったんだ。

逆に今からやらないと云われると僕が困る」


クーは満足そうにタバコの煙を糸みたいに細く吹いた。



次に着いたのはヨシだった。


ちょっと悪そうな感じ。背が高くてがっしりしてる。

ヨシも大人っぽく見える。


着てるものもお洒落だしスマートなタイプだ。


「ヨシだ。よろしく」


三人も挨拶する。

クーは一瞥してタバコの煙を撒き散らしただけだけど。


「ヨシさんは銃や武器には詳しいんですよね?」


「それなりだけどね」

そう言ってニコリと笑った。




まーくもすぐ来た。


おずおずと部屋に入って来た姿は…二枚目だけど…女の子かと思った。


小柄で栗色の長い髪の毛で色白。指も細くて長い。




「まーくだよ。よろしく。…僕で最後みたいだね」



「うん。これで5人揃ったよ」友田は嬉しそうだ。


「じゃあ始めよう。」


僕は上着をハンガーに吊して扉の窓を塞ぐように掛ける。 カラオケ屋の店員が見たら驚くだろうからな。


中央のガラステーブルの上にバックを載せてチャックを開く。



中から黒光りした散弾銃が出て来た。


誰も何も云わず見ている。


「…これを違法な手段で手にいれたんだ。これが僕が本気な証拠だよ」


ヒュ~♪ クーが口笛を吹く


「ガモくんヤるじゃん!」


ヨシが口を開く

「レミントンのダブルアクション…。古い型だけど綺麗に手入れされてるね」


薬莢を眺めて


「…鳥撃ち用だね。」

そう言った。


「これを使うんだ。弾はある。見せ掛けじゃない。人は撃たないけど脅す為にも躊躇わず撃つよ」



「…で何をするつもりだい?」まーくが落ち着いた声で云う。


「デカい事するよ。

降りるなら今の内。

今なら何も知らないで済ますことができるから。

降りる人はこれから先の話は聴かせられないんだ。

…降りたい人は言ってくれ。

ハイリスクだから辞めても責めたりしないと約束するよ」


「誰か降りる?あたしはガモくんと二人だけでもやるよ」

クーは言った。


「お、俺もやるさっ!」

友田はそう言うと自分のバックからサバイバルナイフを五本取り出した。


「両刃になってる本物は違法だけど似てる方刃のなら手に入るんだ。

それを加工して両刃に作り替えたんた。

あと、これ」


催涙ガスのスプレーと金属の折り畳める警棒を五つづつ取り出した。


「…本番までにはまだ用意しとく物がいくつかあるけど、今はこれだけ」


クーはサバイバルナイフを手に取った


「あんたやらないんじゃないかと思ってたよ」

笑いながらそう言った。


友田はムッとした表情をした。



ヨシは散弾銃を手に取って


「これはまだスポーツの道具なんだよ。これを武器に改造してやるよ。

銃身と銃底を切り詰めてショットガンにさ」


まーくはカバンから沢山の瓶や袋を取り出した。


「薬だよ。色々と使い道もあるだろう。…後は相手を精神的に追い詰めるなら言ってくれ」



5人が仲間になれた。


僕は銃をしまい、ヨシに渡した。

もう信用するしかない。

僕はカバンから計画書を取り出して、模造紙に書いた極力細かい見取り図をテーブルに広げた。


「計画を説明するよ。決行日は9月4日。

場所はA高校。

人質は最初の段階は校内にいる教職員、学生全て。

最終的には5名程度。

目的は僕らが置かれている状態を世の中に広く知らしめる為。

そして今後僕らのような人を出さないような抑止力になること。」みんなは僕を見て力強く頷いた。



それから4時間、5人で僕の計画を基に話し合ったんだ。



正直に言う。


このカラオケボックスで話した時間はとても楽しかった。


うん。


そして嬉しかった。




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