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僕らの革命 【改訂版】  作者: 片山 碧
42/45

新宿


そのデパートでジーンズとポロシャツと靴を買ったんだ。

クーに選んで貰ってね。


親以外の相手とデパートで服を買うなんて今まで無かったからちょっと大人になった気がしたよ。


やっぱり同世代の女の子が選ぶ服は違うと試着して思った。


「なかなか似合うじゃない」

とクーに言われてなんだか恥ずかしい気がした。


クーも服を買った。

僕の意見は聞かれなかったから少し安心した。

女の子がどんな服が好みなのか知らないからね。


クーはあれこれ見てたけど、案外早く白っぽいワンピースに明るい感じの上着と大人っぽいハイヒールを買った。


クーは試着もしないからどんな感じになるか解らなかったんだ。


僕は店員に頼んで試着室で着替えさせて貰った。

着てた服はデパートの紙袋に入れてもらった。


クーはその足で一階の化粧品売り場で簡単な化粧品のお試しセットを買ってトイレで…いや、化粧室で化粧して着替えて来た。



化粧室の前のベンチに座って待ってたんだ。

そしたら目の前にヒールのお姉さんが立った。




「どう?」


顔を上げたらクーだったんだ。

驚いたよ。


クーが別人に見えた。

正直言うと、クーはワイルドタッチなイメージしかなかったから清楚なタッチは想像がつかなかったんだ。


綺麗だった。


びっくりするくらいね。


そう感想を言うとクーは耳まで赤くなったよ




クーと、御苑に向かうのは夕方にしようって決めてたんだ。

まだ明るい時間に警官の多い街中を彷徨くより、人が多いここで時間を潰した方が安全だから。


二人で上階の食堂でごはん食べて(久しぶりの食事だった)、屋上で空を見ながらアイス食べて、CDショップで新曲を試聴して、ペットショップで犬を見た。

楽器屋でクーは展示してるピアノを弾いてくれた。

何て名前か知らないけど何だか寂しい様な透明な感じの曲だったんだ。


二人で馬鹿話して大笑いしたりもした。


凄く楽しかった。


限られた時間と空間の簡単なデートだったけど、今までこんなに楽しかった事はなかったよ。


月並みな言い方だけど時間が止まったらいいのにと思った。




夕方になった。


マークたちはどうしてるのか凄く心配になったんだ。


僕たちは電化製品の売り場に行ったよ。


本当は自分たちの事を客観的に見たり聞いたりするのはすごく怖い気がしたんだ…

だけど知っておかなきゃならないとも思ったんだ。






テレビの前には何人もの人が集まってテレビを見ていた。


いろんな放送局の番組が流れてたけど全部僕たちの報道だった。


羽田は午後3時にクローズが解かれ、首都高はガード下で火災があったので安全確認の為に復旧は明日の朝以降だと伝えていた。


逮捕された少年(友田だ)は警察病院にいるらしい。

他の被害者も近くの病院に。

地下鉄の被害者は少なかったみたいだけど聖路加病院と近くの都立ERに運ばれていると伝えていた。


学校は完全に閉鎖されて警察の特殊班がトラップの除去をしてるらしい。


一際大きいテレビがMHKの報道特別番組をしていた。



『9月革命と名乗る犯人グループの消息は未だ把握できていません。


しかし波紋は大きく広がっています。


今開かれている国会内でも野党側から与党側に教育行政改革についての質問と責任の行き先についての質疑相次ぎ、国会は紛糾しました。


また、宮城県仙台市、福岡県太宰府市、神奈川県鎌倉市などMHKが把握しているだけで五カ所で中高生による同様の立てこもり事件やハイジャック未遂事件があり、未だ解決に至っていない物もあり、怪我人も出ている模様です。


海外でも大きく報道されており、アメリカCNN、ABCなどの大手ネットワークでも夕方のトップニュースに『若い革命者達が立ち上がった』として伝えています。

また、韓国では衛星中継を含め、事件の内容を詳しく報道しています。

中国の新華社通信の電子版も今朝の配信でこの事件を大きく取り上げていました…』



「ガモくん…すごくない?」



「ああ…。でもヨシもまーくもまだ逃げ切れてる。それが一番良かったよ。」


隣のテレビでは僕らが新宿方面で行方を眩ませたという報道をしていた。

警察はまだ羽田方面、都心部でのテロ行為を警戒していると伝えていた。



僕らは地下に降りてジュースを買った。

二人ともコーラだ。


ヨシやまーくも買えたかな…




デパート前からタクシーに乗る。


新宿御苑まではすぐなはずだ。

本当なら警戒して徒歩か何かで行かなきゃならなかったのかもしれないけど、クーのヒールの件もあったし、さっきの報道を見て何だかぐったりしてたんだ。


…何でなんだろうね






タクシーは渋滞に引っかかったけど15分位で御苑に着いた。


空はもう暗くなりつつあったよ。


一日がすごく長く感じた。


御苑は4時半に閉まるらしくてもう入り口は封鎖してた。

ヨシやまーくは中に居るはずだ。



タクシーを降りた新宿門から大木戸門に向かって御苑の周りをクーと手を繋いで歩く。


風が頬を撫でて行くのが気持ちいい。


幸せってこういう事を言うのかなと思った。


周りは高い塀で囲まれてる。


どうやって中に入ろうか…



壁際を歩く。

案外人が多いんだ。



少し歩き ドキッとした。

前に赤い点滅が見えたんだ。


それは歩道の工事だった。


サーチライトって言うのかな?明るい電気で歩道を照らしてそこに何人かの作業員が歩道のアスファルトを剥がして穴を掘っていた。



警備員がダルそうに現場を少しだけ車道の方に迂回するように誘導してる。


ライトの先には工事用のトラックが壁際ギリギリに二台縦列に駐車してあった。


通り過ぎて歩道に戻って振り返ってピンときた。

こっち側からだとトラックの向こうにライトがある状態だから逆光になるんだ。

トラックが黒い塊に見える。


僕たちは壁にもたれて人通りが途切れるまで少し待った。


途切れるのを見計らって戻って二台のトラックの間に滑り込んだ。

トラックのバンパーと荷台に足を掛けてトラックの荷台の上に乗った。クーを引き上げる。そこから壁に手を掛けて塀を乗り越えた。

塀の内側は植え込みになってた。僕が先に下りてから後から下りたクーを抱き止めた。


これで誰にも気付かれず御苑内に入り込めたんだ。




僕たちの最終目的地だよ。


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