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僕らの革命 【改訂版】  作者: 片山 碧
41/45

都内 9

前の救急車越しに検問が見えた


パトカーや白バイもいる



ヤバい


どっちの検問だろう…


一つは学校を占拠した事での検問。

もう一つは救急車を奪った件での検問。


どちらにしても僕の立場は悪い。


警官が持ってる、『停まって下さい』 と書いてある逆三角形の赤い旗も見える。



ところが、前の救急車が接近すると警官が赤いコーンを動かして、横の隙間から救急車を通過させた。

僕も後に続く。


あっさりと検問を突破できた。

バックミラーに小さくなる検問を見て冷や汗が滝の様に流れ落ちた。




少し走ってから徐々にスピードを落としてサイレンと赤色灯を消した。



前の救急車と少し間を取りたかったんだ。

このまま前の救急車と一緒に病院に入る訳にはいかないから



クーが後ろからごそごそと助手席に移動してきた。


助手席の前にある画面をいじり始めた。


「ナビが付いてるんだからこのまま新宿に行けばいいんじゃない?

…ああ、慶応大学病院でどうかな?あそこなら新宿だし。この救急車が行った履歴もあるから変には見えないでしょ?」


ナビが付いてるならその方が助かる。

僕はアクセルを踏み込んだ。




知らなかったんだよ。

救急車にはナビ以外にもGPSが付いてるなんてさ。

救急車の位置は消防本部でリアルタイムに確認できるらしいんだ。








「ガモくん!」


クーが言おうとしていた事はすぐに解った。

バックミラーにも赤い光が見えたんだ。


白バイが接近して来てたんだ。


道は狭くいつ何が飛び出してくるか解らない、先の信号が赤になってたら停めなきゃならない。

僕は回転灯とサイレンのスイッチを入れてアクセルを更に踏み込んだ。


「クー、行くよ」


「うん」


白バイはみるみる近づいて来た。


止まるようにとスピーカーから話し掛けられてるけど救急車のサイレンでよく聞こえない。


目の前にのろのろと走る軽四がいた。

軽四は止まるでもなく避ける訳でもない。



救急車や白バイのサイレンが聞こえないのか?


聞こえてるとしたらどんな神経してるんだっ?!



片側一車線の狭い道路な上に対向車もあるから、抜きたくてもなかなか抜けない。


既にすぐ後ろに白バイがいる。


仕方ないっ


アクセルを思い切り踏み込んで右から抜く


対向車が驚いて急ブレーキをかける

対向車ギリギリで左車線に戻る


ガッ と嫌な音がした。


救急車の左後ろで軽四の右前を当てたみたいだ。


バックミラーには軽四が真横を向いているのと飛び上がる白バイが見えた。


救急車に接触して軽四はガードレールにぶつかり、弾かれて反対側に向いて横になったみたい。

白バイは軽四に進路を塞がれて避けきれず当たったんだ。




次の交差点を左に曲がった所で今度は対向からパトカーが二台やってきた。


間違いなく目当ては僕らだ。


パトカーはUターンするとすぐ後ろに付いた。


「先回りもしてるかも」

クーはぽつりと言った。

ピンポイントでパトカーが現れるのは僕らの位置が解ってるからだ。僕も気付いた。


「多分この先で道路封鎖してるな…どうするかな…」



救急車は新宿区に入った。


メインの道路は広いけど左右には狭い路地が見える。


気のせいか道路を走る車が少ない。




封鎖が近いのか…


後ろのパトカーも追い込むようにつかず離れずについて来ている。


「路地にはいっちゃったら?…巻けないかな…狭すぎて詰まっちゃうかな?」


「これは車体が大きいからな。これが入れるならパトカーも…いや…待てよ」


思いついたんだ パトカーから逃げる方法をさ


「クー、御苑まであとどの位だ?」


「あと数キロって所じゃないかな?」


「これから街の中を走るけど大丈夫?」


「うん。ガモくんと一緒ならね」

そう言って笑うクーを見て僕は少し勇気を貰った。


「じゃあ、これからするのは…」


僕は説明した





狭そうな路地をさがす。


路地と言ってもビルとビルの隙間みたいな所だ。 歩道が付いてたりしちゃいけないんだ。


あった! 通り過ぎる時ポリバケツや自転車が置いてあるのが見えた。

古いビルと綺麗なビルの隙間だ。


通り過ぎた所で急ブレーキを掛ける。

パトカーも少し離れて停まった。


シフトレバーをRに入れる。

バックさせるんだ。


「クー!ハッチ開けて!」


クーは素早く後ろのドアを車内から開けた。


パトカーから警官が降りようとしていた。


クーが助手席に戻るのを確認してアクセルを床までいっぱいに踏み込みながらハンドルを切る。



救急車は甲高いエンジン音を立てながら高速で後ろ向きで路地に入る。

入ると言うか路地に救急車をバックでねじ込む感じだ。


パトカーも慌てて救急車を追うように前から路地に入って来た


車体を左右のビルの壁に擦り付け、バキバキと音をたてながら奥へと入り込む。


バックミラーは無くなり、後ろの左右のガラスが細かく砕けて車内に散った。プラスチックが裂ける様な音と金属をコンクリートにこすりつける音、エンジン音、焦げる様な臭いと排気ガスの煙…そういった物が渾然一体となって開け放ったハッチから流れ込んできた。


救急車は10メートル位路地に入り込んで停まった。


「クー!降りるぞっ」

僕はヘルメットと白衣を投げ捨ててクーの手を取って後ろドアから路地に降り立った。


振り返えると救急車のフロントガラス越しにパトカーから警官が降りようとしてるのが見えた。


でも路地が狭いからパトカーのドアは人が降りれる程は開かないんだ。

降りるならバックで車を大通りまで戻さないとね。

もし降りれたとしても大きな救急車の壁があるからそう簡単には乗り越えられないだろう



僕らは走った。


路地の途中に金属の扉が半分開いてる所があった。


僕たちは迷わず飛び込んだ。


中は下に続く階段があった。地下に下りる。

地下は駐車場に繋がっていた。

駐車場を突っ切って反対側の階段に行き上に上がる。



ホテルのロビーの様な所に出た。

パネルにいろんな部屋の写真が光ってた。


「ラブホテルよ」

走りながらクーがこともなげに言った。


ロビーを抜けて外に出る。


入ろうとしていたカップルにぶつかりそうになった。


そのまま道を横切って反対側のテナントビルの中に飛び込む。


小さな何をやってるか解らない様な事務所の扉を幾つも見ながらまた建物の反対側へ出る。


少し幅の広い通りに出た。


「あそこにデパート!」

クーに言われて斜め先のデパートに入り込む。


化粧品の店舗の奥のエレベーターに乗る。


エレベーターに乗ってやっと落ち着いた。




エレベーターの壁に二人もたれた。

目が合うと何だか可笑しくなって笑った。


肩で息しながら笑う二人を他の客は気味悪そうに見てたよ。


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