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僕らの革命 【改訂版】  作者: 片山 碧
35/45

都内 3

赤羽橋を通過する。


左手に東京タワーが見える。




小学生の時に親に連れて行ってもらった事を思い出した。


あの時は楽しかった。


蝋人形館に行ったり一階のレストランでご飯食べたり…


展望室から見た街並みは、今でもしっかり覚えてる。


見えるのはどれもおもちゃみたいだった。人なんかアリより小さくてさ。

高速道路も手を伸ばせば届きそうだった。


…子供の頃見た、その高速道路を自分が警察に命令して封鎖させ、移動してると思うと何だか変な感じがしたよ。



ウルトラマンか怪獣になった気分がした。



…今、ウルトラマンの様な正義感を振り回し、怪獣の様に社会秩序を壊してるんだ。


芝公園を通過する所でクーに電話を入れてパトカーを止めさせた。



僕は、後部のドアを開け、事態が飲み込めず怖がる、田頭と伊東のタイラップを切って車外に引きずり出した。


目隠しも外す。


急に目隠しを外したので眩しくて周りが見えないのだろう。

二人ともしゃがんだまま顔をしかめている。


「放してやる。

…だけどいつでも君たちの前に現れる事ができる事を忘れるな

…警察に伝えろ。


飛行機の離陸の邪魔をしたら残りの人質を殺す。

…そして舞い戻って来て、お前らの首を切って殺す。


…ほら、あそこが出口だ。走れっ!」



黄色の道路公団の車が停めてあるのが見える芝公園高速入口のゲートを指した。


冷静に聞けば、嘘だとすぐ解るんだろうけど、伊東と田頭にはそうは聞こえなかったようだ。

二人はガクガクと頭を縦に振り、ふらつきながらゲートに向かって行った。


後ろの虹川の運転するバスを僕の乗ってきた車の横を通過させてパトカーの後ろに行かせる。


車に乗り込んで、車を道路の真ん中に斜めに停める。

少し離れて、開けた運転席の窓の中に火炎瓶を投げ入れた。


ガチャンと割れる音と共にボッと音がして車内はあっと言う間に炎に包まれた。

開けた窓ガラスからも黒い煙を従えてオレンジ色の火柱が上がった。


ここから次の分岐まで上下線でUターンが出来る所も高速出入口もない。


警察は必ずここからも入ってくる。

時間を稼ぐ為にバリケードが必要だったんだ。



濃いオレンジ色の炎を見ながら何だか綺麗だなと普通に見てる自分がなんだか変な気分だった。



遮音壁が高いからヘリからは見えていないはずだ。


音は聞こえるけど上を見てもヘリ自体は見えないが、旋回して来たら丸見えだ。早く移動を開始しなくては。


焦る気持ちはあったけど、遮音壁の隙間から下の一般道を覗く。


僕らが停まると思っていなかったのか、一般の車も走っていた。中にはパトカーも確かにいるけど見る限り数台だ。一台は道端に停まっている。


歩道を走ってこっちに向かってる警官の姿が見えた。


燃える車の煙で集まって来てるのかもしれない。

すぐに消防も来るだろう。


燃える車を消火してワイヤーをフックに掛けて燃えた車を移動させてから車両が通過…


時間が掛かるはずだ。



…この調子ならいけるかも


パトカーに行き、ヨシとクーにこれからの事を簡単に説明する。


クーをバスに移動させ、僕もバスに乗る。まーくにも小声で簡単に話をした。


ここから先は簡単に言うとT字になってるんだ。突き当たりは東京湾、右に行けば羽田方面、左に行くと都心方面。


ここで警察は右にカーブすると思っているはずだ。


羽田にジェット機とドル紙幣まで待たせてるのに向かわないとは思わないだろう。


でも羽田側に曲がればその先で必ず警察に止められる。


警察の張った罠にわざわざ飛び込みに行くようなものだ。


つまり行けば無駄死に。

無駄死にはしたくない。




僕は学校内でみんなで相談した時の事を思い出した。



どこにゴールを設定するか考えたんだよ。


「やっぱりさ、責任は役人にもあるんじゃないか?」

ヨシ


「あるな。教員とかにも絶対な。」


「じゃあ、教職員を牛耳ってる文部科学省に乗り込むってどうだい?」

まーくが言った。


「え?文部科学省にこの中の仲間の誰かが着いたら『9月革命』の勝ちって事か?」

ヨシ


「いいけど…なんか地味ね」クーが笑いながら言った


「じゃあ、首相官邸に立てこもって総理大臣に直談判とかどうだよ?」

ヨシ


「ナンセンス」

クーにあっさりと斬られた


「なんだよそれ」

ヨシがムッとした様に言った



僕は思ってた事がつい口から出た。


「あのさ…もし、僕らがこういう事で集まったんじゃなくて、元から友達だったとしたら…何がしたい?」


クーが一番に応えた

「ディズニーシー!あたしまだ行ったことないのよ。」

ちょっと遠い目をして言った


「…東京国立美術館かな。京都や奈良とかもいいな…僕、中学の修学旅行に行けなかったから」


「やっぱハワイか沖縄だろ。水着のお姉ちゃんと美味いものに囲まれてさ…」

「ヨシくんおっさんみたいじゃん。


…そういうガモくんはどこ行きたいの?」


「…みんなの行きたい所全部行きたい…でも…まずは公園…かな。」


「公園?じいさんかよ」ヨシは笑った


僕もちょっと笑って続けた


「…芝生に座ってさ、今みたいに夢の話をしたいな。

…今まで夢や将来なんて考えられなかったから。

みんなとゆっくり夢を話したいよ。

そしてこの仲間でその夢を実現させたい」



三人とも黙ってしまった。


多分みんなも同じ様な考えだったんだと思う。


僕らの置かれた立場や状況で考えたらそれ位が手一杯な気がしたし、それで充分な気もしたんだ。



「じゃあ、御苑行に行こうか?新宿御苑」まーくが言った。


「新宿は分かるけどギョエンって?チェーンの焼肉屋かなんかか?」


ヨシ


みんなで笑った。


「新宿なら解るわよ…南口だったわよね?

じゃあ、芝生で4人でお茶でもしながら話でもしよっか」

クーは何だか楽しそうだった。


「それじゃまるで、小学生の遠足じゃん……お茶するなら俺、アイスココアな。がぶ飲みってヤツ」


「なんだよそれ」


みんな笑った。



僕らは新宿御苑を目的地にしたんだよ。


例え、離れ離れになっても新宿御苑の芝生が集合場所なんだ。


ジェット機も現金も用意させた羽田とは反対側の公園の芝生。

警察も考えもしないだろ




僕がみんなに言ったこと



「そろそろ散開しよう。


今なら非常階段を使って逃げられる。


左に曲がる前にヨシとまーく。

僕とクーも後から行く。


警察に囲まれたら無抵抗で。


撃たれ…いや…死ぬな。」



みんな死なないでくれ

 


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