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僕らの革命 【改訂版】  作者: 片山 碧
34/45

都内 2

「似合ってるか?」


警官の制服を着たヨシが笑って言った。

若い方の警官から奪った制服はヨシにぴったりだった。

チョッキも着ると完全に警察官にしか見えない。


「ヨシ、急ごう。時間がないんだ」

僕が言うと頷いて乗りこみ、ガード下でトラックを器用に真横に向けた。


道を塞ぐ感じだ。


トラックの後ろの扉を開けて藤堂と虹川を下ろした。


「荷台ってのは腰に響くんだよ」と藤堂は苦笑いして腰に手をやり、虹川は荷台にあったポテトチップを食べてた。

二人とも人質の自覚はない様だ。


まーくは火炎瓶と紐を持ってトラックに向った。


このトラックをバリケードにして道を塞いだんだ。


虹川にもう一着の警官の服を着せる。

アロハもキツそうだったけど、制服はもっとキツくてズボンは最初から履くのを諦めた。

バスの運転席にすわればズボンは見えない。

でも、ワイシャツも上着も無理だ。防弾チョッキは大丈夫なんだけど。


アロハに防弾チョッキと言うわけにはいかない。

ヨシが、裸に防弾チョッキと提案してクーに「変態」と速攻でNGを喰らった。


「困ったな…」


「任せてよ」

クーがサバイバルナイフをクルクルと回しながら近づいた。


「…おい、どうするんだっ?」


「時間ないでしょ?早く向こう向いて。すぐ済ませるから」


クーは虹川の制服の背中にナイフの先を入れると縦に裂いた。


「ひぃぃ…」

虹川は情けない声を出した。

次いで背中側の肩から袖に切れめを入れる。


「前から見たら解らないでしょ?どうせ上からチョッキ着るんだし」

クーはニコニコと笑ってた。


後ろに回ったヨシが吹き出す。

制服とワイシャツが左右に引き延ばされて裂けた真ん中から毛の生えた背中がほとんど剥き出しになってる。


確かに前から見たら解らないんだけどね。


「虹川さんあと少しなのでこれで我慢して下さい。」

僕は言ってチョッキを着せてバスに載せた。

運転して貰わないといけない。


「ガモ、

残り3分切ったよっ!こっちは準備できた。」

まーくが言った。


片側二車線に、後ろの扉を開けたトラック横向きに停めてあるから左右の幅は、バイクがすり抜けられる隙間はない。扉の取っ手には紐が結んであり、紐の先には火炎瓶が括ってあった。

トラックの軽油のタンクキャップが外してあり、トラックのサイドドアの取っ手に不安定に置いてある火炎瓶は落ちるとタンクの真下で破裂する。



藤堂をバスに乗せる。

僕も乗って警官の確認をする。座席の間の通路に縛った警官二人が転がっていた。

ヘッドホンを付けられてガムテープで巻いてある。

聞こえてないのは解ったけど一応話す


「窮屈ですみません。すぐ済むのでしばらくじっとしてて下さい。」


若い方の警官は近寄った僕に気付くと睨んで暴れた。

タイラップはそう簡単には切れない。


押さえて警官の眼の上からガムテープを貼る。

見られても面倒だ。


見聞きされると人質の一部が僕らの味方だと解ってしまうかもしれないから我慢してもらうしかない。



「虹川さん運転お願いします。後に付いて来て下さい」

そう言ってから座席に掛けてあった虹川のアロハをもらった。


まーくと話しをする。

「どうする?ヘリは追い払ったけど。いずれ追尾も来るだろう。」


「…まとまって逃げるのは少し厳しいかな…。

分散した方がいいかもな。高速道路には一般道に下りる非常出口があるんだ。それを使って一般道に逃げる」まーくはそう言った


確かにそういう逃げ方もあるけど…一般道はどうなっているのか解らないし、あまり早く散開すると再び合流できるかどうか…


「…いや、一緒に居なきゃいけない。行動はギリギリまで一緒だ。できたら最後まで4人でいたい」そう言うとまーくは仕方ないといった感じで頷いた。


自分の車に戻る。


パトカーの運転はヨシだ。


ヨシは僕が車に乗ったのを確認するとパトカーに乗り込んだ。


携帯をつなぐ

「吉岡さん、ヘリは退避しましたか?」


『1キロ離れさせた。それでいいか?』


そう聞いて来たが無視した。


「これからガードを出ますが、後方から来てる観光バスはまさか警察じゃないでしょうね?追尾したら爆破しますよ。」


そう言って携帯を切った。

ライトをパッシングしてヨシのパトカーにスタートを促した。


この先に最初の分岐がある。

谷町ジャンクションだ。

僕らは羽田方面だから右に折れて首都環状線に入るのだけれど、問題は警察の動きと直進のルートをどう塞いでるかだ。


警察もバカじゃないだろうから直進させる事はしないだろう。

直進すれば国家の中枢の集まる千代田区、中央区だし皇居も近い。



直進ルートはトラックや警察車両で塞がれてる可能性が高いと予測はしていた。


実はここの分岐は今は僕らにはあまり関係がないんだ。

ここで仕掛けても絶対叩かれる。わざわざ困難な場所を選ぶ必要はないから最初から除外してある。


更に進んだ次の分岐が問題なんだ。

ただ、ここでの警察の対応は今後を予測するためにも重要なんだ。


分岐の看板が見えた。その先に黄色と赤白の物が見えた。

人の姿は見えないが道路公団の黄色いパトカーが横向きに停められていて、赤白のプラスチックで出来たバリケードが置いてあった。

電話を入れる


「ヨシ、気をつけて進んでくれ。減速するとき撮影されるか狙撃されるかもしれない」


『解った。…警察のガイドに乗って右折でいいんだよな?』


「ああ。そうしてくれ。…いや、ヨシ待ってくれ…」


僕はちょっと考えた事があったんだ。

ヨシと簡単に話をした後で藤井に変わってもらった。


藤井を解放する事にしたんだ。



「藤井さん、解放するよ。本当に悪かったね。」


『…あのさ…私、残っちゃダメかな?』


「?」


『これでみんなに会えなくなるのはイヤなの。』


「…でも君は人質だから。これ以上僕らと居ると良いことにならないよ。

…ただ、良かったら手伝ってくれないか?」


『うんっ!何したらいい?』


僕はこれから藤井にして欲しいことを話した。



『うん。解った。頑張るわ。…ガモウくん、また会えるかな?』


「…いつか会う日も来るかも。…元気でね。」



その会話とほぼ同じタイミングでパトカーが停まった。

最初の分岐点、谷町ジャンクションだ。


ヨシが後ろのドアを開けると藤井が降りてきた。


藤井の胸のポケットには通話状態のままのヨシの携帯が入っているんだ。

ヨシの携帯と引き換えに警察の状況を手に入れる事にしたんだ。


ガサガサとブラウスの擦れる音と共に藤井の声がする。


『聞こえてるかしら…黄色の車にも誰も乗ってないわ。…大きなプラスチックの塊は…水が入ってるみたい。少し周りに漏れてる。


…全部で10個くらい…

…これから隙間を抜けて向こう側に行ってみるね…

あ!後ろの方に煙が見えるよ。さっきのガードのかもっ!


…バリケードのかなり向こうに普通のパトカーが見えるよ!お巡りさんがいる!

…こっち見てる!何か言ってるけどよく聴こえないわ

…下を見るんだったわよね…

真下は…お巡りさんがいっぱいいるっ

ええと…真っ直ぐ行く道は少し先からは普通の車もいるよっ

…ガモウくん達の方は…普通の車もいるよ。パトカーも走ってるけど…


…はいっ!…藤井です解放されたんですっ!


…ガモウくん聞こえてるかな?

黒い服の人がこっちに向かって来てる。鉄砲向けられてるっ!

…逃げ切ってね!…』



プツンと通話が切れた。



警察は僕らが都心に近づくのを嫌って谷町ジャンクションを直進させない様にしてたんだ。


そして高速道路上を追尾をさせてるのは後方に黒い煙が立ち上ってるのが何よりの証拠だ。


…ただ、羽田方面にはまだ普通車がいる。という事は… 出口は抑えていても一般車の通行が出来てるという事。

…僕らが素直に羽田に向かうだろうという考えか。


バリケードは水の入った大きなタンクと車…。


…どうにか出来そうだな…



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