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僕らの革命 【改訂版】  作者: 片山 碧
33/45

都内 1



準備が出来た所でまーくが釣り糸を手繰って思い切り引っ張った。


遠くでボンという音が聞こえるとすぐに天井を舐める様に黒い煙が流れてきた。

遅れて小さな破裂音が時折混じる。


一階の渡り廊下には学校を鎮圧した最初から灯油が撒いてあったんだ。

それにまーくが釣り糸を結んだ火炎瓶を引いて割って火を点けた。

パソコンや事前に用意した書類やもう作戦で使わない道具を始末するのと火災を起こすことで警察の動きを撹乱する為だ。



僕はが先頭のパトカーの警官に羽田までの経路を書いた紙を見せた。

警官はちらりと見ただけで頷いた。

顎でスタートするように合図すると警官は冷たい目をしてシートベルトを装着した。


車内のデジタル時計の緑色の光が正午を過ぎたと示していた。

1時に羽田と言ってる以上、出ないといけない。


黒い箱をダッシュボードの上に置く。


パトカーの後ろに付いて車をゆっくりと動かしはじめる。


バックミラーで見ると伊東と田頭が座っている。

二人共、両手をドアの上にある手すりにタイラップで止めてある。


もう何も話す気力もない様だ。

僕からも話す事はない。



校門を通過する。


沿道には多くの野次馬を規制するためびっしりと機動隊員が配置されていた。

銀の大盾がずらりと並ぶ中をゆっくりとしたスピードで進む。

見慣れたはずの景色が全く違う世界に見えた。


僕は携帯電話を取り出してクーに電話を入れる。


パトカーの運転をしている警官には携帯電話でクーから指示を伝える事になっている。


但し、個人的な事は一切言わない約束だ。


あくまでも見かけ上は犯人と人質だからだ。


「赤色灯を点けて60キロまで上げろ。信号は無視しろ」


電話を切るとパトカーが回転灯を点けて加速した。


ヨシから電話が入る


『ヘリ2。追尾黒セダン1、バス1。バイク1。ヘリの内1は民間中継。

…だけど2機共警察の借り上げかもよ。

規制してるのかワンセグでも空からの中継ないし。


バスの後ろに黒セダンが見えた。

しかもバスが観光バスだぜ。笑えるよ。』


警察の追尾なんだろう。

バカにされたもんだ。こんな時に一般の観光バスが入り込むはずないじゃないか。


まぁ警察の言うことなんて最初から信用してないけどね。



いつもなら渋滞してる区役所の交差点を左折する。

ビルから沢山の人が見ているのが解る。



三軒茶屋が近づくに連れて道端の警官にも普通の制服警官が増えてきた。


機動隊の数にも限度があるだろうし、通過させるだけなら問題ないという事だろう。


ふと、ここで車停めて街中に走り出したら警察も驚くだろうなと思った。


見慣れた三軒茶屋の街を越えて246号線に合流する。

すぐに右側に移って緑色のゲートを潜る。首都高渋谷線だ。



ここからは高架になる。


高い防音壁の上からは人混みや街並みは見えず、ビルのガラスや看板ばかりだ。



渋谷出口を通過する。


携帯を取り出す

「吉岡さん。ヘリをどけて下さい。民間機なら尚更です。」


『…しかし、無線通信はしたらいけないんだろう?』


見たことのない吉岡がニヤリと笑った顔が頭に浮かんだ。


『してやったり!ざまぁみろ!無線は使うな…なら飛んじゃったモノは仕方ないよな?ばっちり上から眺めさせてもらうよ』


…といったところだろ?吉岡さん


甘いよ…

と言うか、計算通りというところか


「この先で一旦車を停めます。その間にヘリを即、移動させて下さい。

猶予は10分です。その間は航空無線を使っても大丈夫ですから。」



『…無線を使ってもいいって言ったって爆発したら…』



「今に解りますよ。

移動させなかったり、警察車両が見えたらみんなで爆死ですよ」


そう言って電話を切り、すぐにクーに電話を繋ぐ。


「この先のガード下に入ったら、少し進んで中央部で停まれ。」


先にガードが見えてきた。


地図でここがあることは解ってたんだよ。

このルートでガードに潜るのはここだけなんだ。

大学の上にあるガード。


無線で起爆がもし本当なら怖くてそんな事はさせられないよ。


目的は最初から別にあったんだ。

追尾してくる車両をここで食い止める。

ついでに警官の運転交代だ。


前を走るパトカーはガード下に入るとこの車種独特のキラキラした、それでいて下品なブレーキランプを光らせて、少し進んで静かに止まった。


ガード側面にあるスプレーの落書きが赤い回転灯の光でチラチラと目障りだ。


…すぐ綺麗に消される事になるよ…。



クーに再び携帯を繋ぐ


「上のヘリが移動するまで待機しろ。

後ろのバスの警官がそこのパトカーの運転手にどうしても伝えなきゃならない事があるらしい。

降りてバスへ行けと伝えろ。」


電話を切ってヨシに繋ぐ


「ヨシ、準備を!」



パトカーから警官が降りようとした瞬間、前屈みになって剥き出しになった後頭部の生え際に、クーがスタンガンを押し当てるのが見えた。

不意をつかれた警官は仰け反る様に車外に転げ出た。


そう。僕の目の前にね。


ガード下に止まると同時にまーくがバスの運転手の警官にも同じ事をしてるはずだ。


…いや、もっと酷い事してるかもしれないけど…


後ろのバスの点けっぱなしのヘッドライトの中に妙に生々しく転がってる警官が浮かび上がってた。



物音に後ろを振り返るともう一人の警官がバスから転げ落ちる様に出てきた。

すぐ後ろからまーくも降りてくる。

手にはスタンガンが握られている。



うん。計画通りだ。



僕らはゴールを決めたんだ。

学校を占拠して自分たちの思いをメディアを使ってアピールした。確かに目的は達した。


元の計画なら既に、みんなで薬を飲んで終わりになってるはずだった。


…でも、これからも生きると決めた以上、何か次の目標を決めないといけないと思ったんだ。

ただ捕まって終わりじゃつまらない。


何か自分たちの行動で示したかったんだ。



 

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