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僕らの革命 【改訂版】  作者: 片山 碧
29/45

9時


「吉岡さん。予定の時間です。藤堂さんを電話口に出してください。」


『…その前に、人質を解放してもらおうか。』


「いいえ。電話に出さないなら一人、来てないなら二人射殺します。こちらも人質が減りましたけど約束ですからね。」


『…じゃあ先に約束してもらおう。

藤堂さん個人の意志で、もし、校内に入る事になったら君たちはその見返りに何をしてくれるのか今教えてくれ。

…内容によっては警察としては拒否するしかない。

藤堂さんを危険な目に合わせる訳にはいかないからな

…解るだろ?君たちは既に人質を撃っているんだ。』



「…解ってないんですね吉岡さん。

カードは僕らが握ってるんですよ。

ルールは僕らが決めます。

警察がそのルールを守らないなら警察側の反則という事で人質を射殺します。

…いいんですね?」


『…』


「いいんですね?なんなら今一人撃ちましょうか?」


『…上に話をする。このまま少し待て』

そう言うと間の抜けた電子音が聞こえてきた。


…吉岡も中間管理職なんだな。上に指示を仰がないと決断できないんだ…


僕は相手に気づかれない様に大きくため息をついた。

みんなを見渡すとみんなもこっちを見て心配そうな表情をしている。


『やぁ、藤堂だ。沖縄発の羽田行きの最終便に間に合わなくてな、わざわざソウルでトランジットして朝一番でたどり着いたぞ。俺を指名したんだって?』

いきなり妙にテンションの高い、テレビで聞き覚えのある声がいきなり聞こえてきた。


「…藤堂さんですか?本物である証拠がありますか?」


『あ?ああ…そこにテレビあるか?MHKに出てるだろ?

…山羊みたいなレポーターの…右側の奥のバスだ。

ピントは合ってないだろうが帽子に白いジャケット。

手を軽く振るぞ。

…見えたか?

よく見ろよ手の先にパイプが見えるか?俺のトレードマークだ。周りの人相の悪いのは警官だがな。』


クーに言ってMHKの画像をメインモニターに出させる。

中央には確かに山羊みたいなレポーターが淡々と話している。その右側の奥に映っているバスの窓に白いジャケットの男がパイプを持って手を振っているのが解る。


『…解ったか?で、どうしたらいい?入って行ったらいいのか?

その前に、そもそも俺に何をさせたいんだ?』


「僕らの話を聞いて貰いたいんです。そしてそれを世間に伝えて欲しいんです。」


『…番組のMCみたいにすりゃいいのか?俺が質問して君が答える…そんな感じで?』


「…そういう事です。できますか?」


『俺は構わないよ。ただ、警察がどういうかな…』


「警察には僕の方から言います。

あと、今は僕は藤堂さんを信用しますが、警察は昨日、替え玉を使って騙そうとしました。今回も信用できません。

ですから一応言っておきます。もし、騙したら人質を撃ちます。」


『物騒な事言うなよ。解ってるよ。カメラは入れてもいいのか?』


「ダメです。」


『警官なんか使わないよ。俺の会社…藤堂企画って云うんだが、そこのカメラマンだ。一緒に沖縄からこっちまで来たんだ。

ほら、俺の横、見えるか?このパツパツのアロハ着たデブだ。

警官にこんなのは居ないだろ?こんなピチピチのアロハじゃピンマイクだって一目瞭然だろ?


勿論、途中は撮らない。

君が許可した物だけ撮る。

約束するよ。

勿論隠しマイクや陽動作戦もしない様に俺からも警察に言う。

騙したら俺を人質にしてもいい…その場で撃ってもいい。』


よし。決行だ。


「解りました。ではこれから言う指示に従ってください。まず吉岡さんに変わってください…」


すぐに怒りを抑えた様な声が聞こえてきた。

『…吉岡だ。何だ?』


「聞かれた通りです。

録音してるでしょ?

一度しか言いません。

マイクロバスを一台、パトカー一台を30分以内に準備してください。満タンで。


次に燃料満タンの航続距離3000キロ以上の性能のジェット機…できたらボーイング747LRか777で。

正規のパイロット二名を正午までに羽田空港に準備してください。

パイロットは自衛官でも警官でも民間人でも構いません。

…正午から僕らが離陸するまではB滑走路は閉鎖してください。僕たちが使いますから。京浜急行羽田駅周辺の入り口か貨物ターミナル搬入口から入りますのでB滑走路へのタキシングし易い位置に機体とタラップ車を用意してください。


…解ってると思いますが、正午を過ぎるとテレビカメラの前で人質を撃ちます。


これから速やかに報道陣に今の僕らの要求を連絡の上、羽田空港の状況を中継させてください。

準備状況は知る必要がありますので。」


『…お お前っ!…黙って聞いていればっ…』

呟く様だが怒りに満ちた声だ

僕は構わず続けた。


「…パトカーとマイクロバスの準備ができたら運転手を一人づつ乗せてください。

運転手は警官で構いませんが、拳銃、その他の武器の携帯は禁止します。マイクロバスに藤堂さんとアロハを着たカメラマン二名を載せて正門から入り、正面玄関前に着けてください。」


『…』


「学校内で藤堂さんと話が終わったら移動を開始します。

こちらの要求が全て通った時点で人質全員を解放します。」



仲間達は僕の会話の途中から驚いた様な顔をしてこっちを見てた。


そう。ここからは、まだ仲間も知らない新しい計画を僕は話始めてたんだ。



電話を切る


「おい、どういう事だ?」

ヨシが聞く


「藤堂と話をする。終わったら藤堂も人質にしてここを出る。」


「学校を出るのか?」


「ああ。ここで粘ってもいずれは突入されて終わる。警察に撃たれて殺されたくはないだろ?

自由な環境で自ら消えるのが当初からの計画だったよね?」


「まぁな」

ヨシは少し不満そうだ。


「まぁ、その方がいいかもね。…あたしはガモについて行くよ」

クーはくわえタバコで言った。


「…」

まーくは何も言わず何かを考えているようだった。


ヨシは少し興奮気味だった。

「じゃあ、藤堂は警察のマイクロバスで玄関前に着くんだな?そして藤堂を中に入れて話をする…終わったらマイクロバスにみんなで乗って羽田に行く。…用意させた飛行機で…で…どこに行くんだよ?」


「…それは決めてない。」


「僕は反対だな。」

まーくが急に言った。

「ガモ、何だかおかしいよ。」

みんながまーくを見る。


「おかしい?」

ヨシが不思議そうに言う。


「ああ。下準備も計画もなく外に出てそんなに上手くはいくはずがないだろっ?

飛行機をジャックするのは警察は血眼で阻止するぞ。

外に出たら警察の強硬策で終わりだ。

それなら当初の計画通りにここで終わりにするべきだよ。

それが解らないガモじゃないだろ?

大体、飛行機使って移動するならもっと沢山人質が必要じゃないかっ…」

色白の顔を紅潮させてまーくが言ったんだ。



僕は少し笑って言った


「…まーく、解ってるよ。…裏をかくんだよ。」

みんなが僕をじっと見た。

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