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僕らの革命 【改訂版】  作者: 片山 碧
28/45

7時


夜はすっかり明けた。

いつもなら部活の朝練の生徒達が登校始める時間だ。


職員室の窓から外を覗くと朝の澄んだ空気の中に無粋な赤いランプが点滅しているのが見える。


あと2時間もすれば藤堂が来るはずだ。

やるべき事をしたら後はみんなを逃がして、僕が消えるだけだ。

その計画もできている。


あと少し。



まーくの提案でやったさっきのパフォーマンスで警察に仲間を撃たせる口実を作ってしまったのは痛い。


…それに、そんな連中の中にジャーナリストとは言え、校内に入って来れるのか?

有名になれるなら死んでもいいって奴か、余程のバカでなければ来ないだろう。


普通に考えれば、血気盛んで少年法に守られてる事を知っている犯人の元へ、みすみす人質になりに来て自分の命を曝すやつはいない。


もし正義感と義務感に燃えていたとしても、僕らが中東の有名なテロリストならともかく、いじめに関して命掛けで手掛けてくれるジャーナリストがいるだろうか?


でも僕はその万が一に掛けるしかなかった。


…後は藤堂の出方一つだ。



テレビは暫く割れたガラスと血痕(っぽい絵の具)の飛び散った窓周辺を映していたが、各局とも他の画像に切り替えはじめた。


倫理的か精神的か解らないけど、その画像は相応しくないと、被害者とも犯人とも全く関係ないジジイ達の何とか委員会とかが、自分たちの存在をアピールするために決めたか、警察が要請したんだろう。



恐らく9時までは動きはないだろう。

しばしの休戦だ。

大分疲れて来たのは事実。

なんだかもうどうでも良いような気がした。

このまま銃を乱射しながら校庭に走り出せば、狙撃手にあっさりあの世に送って貰えるだろう。


ふと周りを見る

クーが部屋の隅に膝を立てて座り込んでる。

それでも僕と目が合うとニコリと笑った。


…ダメだダメだ!僕がしっかりしなきゃ



まーくに頼んでまた肩に局所麻酔をしてもらった。

痛みが増してきていたんだ。


薬指と小指が動かないのに気付いた。

神経をヤられたのかもしれない。感覚がないんだ。


困ったな…せめてあと半日動いて欲しいんだけどな…


僕はクーの隣で壁にもたれて座り込んだ。なんだか頭がクラクラする。


ヨシが少し休めと言ってくれた。何かあったらすぐ起こすからって。

クーが僕の額に手をやって「熱があるよ」と言った。

やっぱりな。なんだか寒いと思ったんだ。


「疲れのピークか骨折熱か、その両方か、だね。」まーくがそう言って解熱剤と水をくれた。


骨折熱って何だよ?と聞こうと思ったけど面倒だった。

聞いてもどうせ解らないし、痛いのは痛いんだし、熱があるなら熱があるんだから、その事実をそのまま受け止めるだけで充分。原因や結果はどうでもいい。


あと半日持てばいいんだから。


少し眠る事にした。


眠れる訳がないと思ったけど眠ってしまった様だ。



夢を見た。



街を歩いている。すると人が集まってきて街中の人が僕を非難するんだ。

中に知っている顔がある。

父さんや母さん、親戚の人たち、ヨシやまーくや友田もいる。…振り返るとクーが鉄パイプを振りかぶっている!

『…!』

叫ぶのだが声が出ない。

鉄パイプがゆっくり、でも着実に落ちて来る。

頭を傾けて避けるのだが間に合わない。鉄パイプは僕の額に当たって左目を潰しながら頬骨を打ち砕いて行く。上顎を上から叩き潰される…

飛び散る真っ黒な血と白い歯…

何だか綺麗だ…




「…ん…もくんっ…ガモくんってばっ!」

揺すられて左肩の痛みで意識が戻る。

びっしょりと汗をかいている。


「大丈夫?すごい魘されてたよ…」

クーがそう言った。

藤井も氷の入ったナイロン袋を持って心配そうな表情でクーの側に立っている。


「顔色も大分マシになったね。汗をかいて熱が下がったんだろう」まーくが言う。


「…ああ大分ラクだよ…」

時計を見ると8時半になろうとしていた。

一時間以上眠っていたんだ…

頭は幾分かすっきりしている。




借りたタオルで顔を拭きながら僕はこれからの事を考えていた。




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