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僕らの革命 【改訂版】  作者: 片山 碧
27/45

6時

「ほら、これでいいか?」

ヨシはポケットから油絵の具とテレピン油と筆をバラバラと机の上に出した。


絵の具は大きなチューブの油性。『CHERRYRED』『PAMANENTRED』『BLACK』『YELLOW』とか色々あった。


まーくがヨシに指示をして美術室に行かせたんだ。


僕はまーくに任せる事にしたんだよ。

そうしない訳にはいかなくなってしまったんだ。

僕が殺さない本当の訳を仲間に話すことができない以上、さっきの会話で僕はそれを受け入れるしか出来なかったんだ。



まーくは近くにあった白い花瓶にテレピン油を注いで赤系統の色の絵の具を絞り出して溶かした。

それに黒を少しいれてかき混ぜるとなんだか暗い赤色の液体になった。

媒体が油だからドロドロしてる。


「黄色や灰色なんかどうするんだよ?」ヨシが聞いた


「ん?入れるんだよ。溶かさないんだ」

まーくは黄色や灰色をニュルニュルとその液体に入れた。

出来上がりらしい。


「警察に人質を撃った様に思わせる必要があるんだよね?

じゃ、実際に死んだって事にしよう。

さっき言ったように、世間的に叩かれて、精神的に潰されたら死んだも同然。

精神的ダメージを与えるのは僕がする。あと警察にアピールするには視覚的にも与えた方が、より効果的だよね。」

そう言いながら花瓶をヨシに渡してニヤリと笑った。


まーくと打ち合わせして、ヨシは二階の教室に花瓶を持って行った。


僕とまーくはスタジオに入った。

伊東は気付いていたらしく僕らを見るとガタガタと震え始めた。


「じゃあ、始めようか」

まーくはすごく楽しそうだった。

まーくに言われて伊東を机の上に寝かせて頭をガムテープでぐるぐると机に固定する。

目も見えない状態だ。


「口を開けさせてよ」


まーくは割り箸とハンマーを持って言った。


口を開けさせて顎の所に更にガムテープで机に巻きつけた。

これで伊東は口を閉じられない。


まーくは割り箸を水平にして上の奥歯に当ててハンマーでコンと叩いた。

釘を歯の噛む面に打ち込む様な感じで釘の代わりに割り箸で行うんだ。釘じゃないから歯が割れる事もなければ刺さる事もない。


「ガッ!」

伊東は変な声を出した。


そんなに強く叩いてないのに。

まーくは続けてコンコンと割り箸を歯に打ちつける。


「奥歯に与えた衝撃は上顎から頭蓋骨を響かせてさ、脳全体を締め付ける様に感じさせるんだ。」


一定の間隔で叩いてる力は決して強くないのに伊東は僅かに動く体を捻るように暴れて汗を滲ませ始めた。


「グァ…ァァァァ…」

伊東は開いたままの口の端から涎を垂らしながら苦しんでる。

「まだまだ。…あ、頭動かすと割り箸が頬を突き破るか上顎を抜けて脳に刺さるよ。

…それからね、君はこれから先は物を食べる度に苦痛に悩まされるよ。…噛めないからね。噛みしめる度に脳を締め付ける様な痛みが襲うんだ。」


しばらく続けると額の汗は玉になって落ち始めた。

口の端の涎は血の混じった泡になり、呻き声は常に漏れている。

歯茎から血が出てるんだろう。



「そろそろいいかな…」

時間を見るとまだ10分位だ。


インカムを繋ぎっぱなしにする

「ヨシ、そろそろ準備して。ガモ、電話を」


僕は頷いて吉岡に電話を繋ぐ。

まーくは伊東の頭を固定していたガムテープをバリバリと剥がした。

伊東は体全体がガクガクしている。まーくがさっき叩いていた間隔と同じだ。

止めても脳を締め付ける感覚は一定に続いてるんだろう。


「吉岡さん。これからあなた達が約束を守らない事に対しての報復を行います。」

『なに?おい、一体何をする気だ?』


まーくが伊東の耳元で呟く。

「次はコレでやるから口開けて」

まーくの手にはハンマーと彫刻刀が握られている。


半眼でぼんやり見ていた伊東の眼がみるみる見開かれた

理解できた様だ。


「…っ!うわぁぁぁっ!!やっ止めてくれぇぇ!!止めろーっっっ」

伊東が叫んだ所で電話を切る。


「ヨシ!」

インカムで言うのと同時に二階からドーンと言う銃声とガラスの吹き飛ぶ音がする。


クーがスタジオに顔を覗かせて

「すごいリアル」

と言って笑った。


調整室のテレビのメインモニターにはテレビ局が薄明るい校舎にズームして二階の窓を映している。

アナウンサーがバカみたいに『銃声が聞こえました』と繰り返し叫んでいる。


教室内は明かりが点いているから影絵の様に赤く染まったブラインドと白く割れたガラスに赤い絵の具がリアルに散って垂れている。

いろんな色が混じってるからか妙に本物っぽいんだよ。


溶けきってない赤色、花瓶の破片や他の色が陰影を作ってる。


窓際に置いた花瓶を外に向けて散弾銃で撃ったんだよ。



伊東は机で暴れてる


「ガモくん少し押さえててくれないか?やかましいから黙らせるよ」


まーくは伊東の違う歯に側に落ちてたボールペンを当てて少しだけ強く叩いた。


「ウガァァァッッ…」

伊東は叫ぶとぐったりとして動かなくなった。


「ついでにだから見といて」

そう言うとスタジオの隅に座ったまま放置してある田頭のヘッドホンを外してナイロン袋をクシャクシャと耳元で鳴らした。


「うわぁぁぁっ」

田頭は椅子の上で絶叫して暴れた。


「ね。上手く定義付けできただろ?こんな感じがずっと続くんだよ。ツラいよ。

毎日誰かに苛められるのと同じ位にさ。

しかも普通に生活してても音が聞こえたらいきなりだから気が抜けないよ」


確かにこうなると厳しいものがあるだろうな…


「…僕の考えに間違いがなければガモの要求…つまり警察への牽制、相手への復讐、そして君のルール…全てクリアしてる筈だよね。」


まーくはニコニコしながら言ったよ。


本当は違うんだけどね…





僕は調整室に戻って携帯を取り出した。

吉岡に言っとかないといけない。


『お前、撃ったのか?』


「警察が約束を守らないのが原因ですからね。校内にいる警官全てに即時退去命令を出してください。

さて、あと数時間になったんですが藤堂さんはこっちに向かってるんでしょうね?」


『…ああ。多分な。連絡が付かなくてはっきりしないんだがな。』


「はっきりしない?そんな訳ないでしょう天下の警視庁が。

まぁ来なければまた撃ちますからね。」


僕は電源を切った。


これで僕は警察の中では殺人犯になった訳だ。


狙撃許可も下りるだろう。

対象は僕だけでなく仲間もだ。

僕が殺さないでいた理由の一つは狙撃をさせるのを阻止する為。


だからもし殺すならみんなに見える所で僕だけが手を下すつもりだったんだ。


対象が僕だけで済むからね。


仲間の命を危険にさらしたくなかったんだよ。




そう。

僕は最初から決めてたんだ。


本当の理由。それはね、消えるのは僕だけだって事なんだ。




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