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僕らの革命 【改訂版】  作者: 片山 碧
20/45

22時


「ガモくんっ」


人質を見に行ったクーに呼ばれた。


人質に何かあったのか!?


スタジオに飛び込むとクーがカレンダーを千切った物を僕に渡した。


「そこに落ちてた」


表には可愛い猫の絵がついてる9月のカレンダーだが裏に返すと読みにくいボールペンの文字が並んでいた。



[ みんなごめんな。

一人で考えたんだ。

これからスタジオに籠もって柴田と南をみんなの前で痛めつけるよ。

それは、みんなに嫌われたいからさ。

嫌われたら俺もここを出やすいだろ?

何でこんな事するんだって思うよな。

それは、2つ理由があるんだ。

一つは俺にはあの二人は絶対許せないから。単に道具として使うだけで解放したら僕の気持ちは収まらない。

もう一つはみんなの為に何かしたい。

俺はみんなの為に何も出来なかった。

最後位は何か仲間の為に何かしたいんだ。

だから2つの事を一度にできる事を考えた。


俺の関係してる人質二人を連れて学校出る。

そして敢えて無茶を言ってみるよ。

その姿をテレビで観て今後の策に使ってくれ。


ここまで書いて気付いたんだ。

消えるなら派手に。

消えないなら何が何でも生きてくれ。

俺みたいなどうしようもないゴミはともかく、君たちが消えるのは勿体無いよ。


革命が成功する事を祈ってる。

もし生きてたらまたみんなと会いたいな。]



「バカだわ!」

クーが怒った様な声で言った。顔は泣きそうだった。


「…つまりはどうしても自分で復讐したいって事だろ?自分はそれでいいかも知れないけどさ、俺たちの事は何も考えてないじゃんか」

読んだヨシが言った。


「…」

まーくは何も言わず考えている。


テレビでは友田達がパトカーに乗り込む姿が映っていた。



この現状から立て直さなくてはならない。


僕はまーくとヨシに警戒する様に言って、クーにはテレビを全てモニターして録画するように指示した。

テレビ画面ではまだ正面玄関前のパトカーは動いていない。




友田が書いていた中で、警察の出方が解るかもしれないと言うのは確かにそうだ。



少なくとも明日9時に藤堂が来るまでは死守しなくちゃならない。

その為にも警察の動きは知っておきたい。


僕は深呼吸してから携帯を取り出した。




『あいつが主犯なんだってな』

吉岡は電話が繋がると同時にそう言った。

友田は自分が主犯と言ったんだな…



「明日の藤堂氏の件はどうなってますか?」

僕は全く無視して要件を言った。


『主犯がいないならもう解放したらどうだ?従犯なら罪は軽いぞ』


「藤堂氏が来ないなら六人の死体が出るだけです。」


『投降しろよ。何て名前か聞かなかったが…リーダーは全部自分の指示でやらせたって言ってたらしいぞ。』



警察が友田の名前を把握してないはずがないじゃないか。

嘘つきめ!

僕は黙って電話を切った。



「ガモくん、動き始めたよっ」


パトカーがゆっくりと正門を出て来る画面だった。


警察の車両が映画のモーゼの十戒の海が割れるシーンの様に左右に分かれてその中をパトカーが進んで行く。


報道陣もかなり規制されてる様だ。画面は望遠でピントがずれてる。


パトカーが出たのを確認して、まーくが正門を閉めた。


「どうする気なんだろう…」クーが画面を見ながらそう言った。


僕はヨシと僕らが持ちこんだ食料と水を持って倉庫に行った。

建て前は様子を見る為とあまり人質を弱らせない為。本当は違う事をして少しだけ現実逃避したかったのかもしれない。



電気を点けると人質があちこちにいた。数を確認して順番に拘束を外していった。

扉の開いた倉庫はスタジオがはっきり見える位置だ。

さっきの場面は見えていただろう。

刃向かえば、柴田や南と同じ運命だと思えば従う。


そう判断したんだ。


意識がない武田だけは拘束を解かなかった。汗をかき浅く早い呼吸を繰り返していた。



人質の真ん中に食料を置く。


「食べてくれ。」

そう言うとBクラスの女が這うように寄ってきてペットボトルのお茶をガブガブと飲んだ。


さっきの友田に連れて出された女以外の人質は、それを見てそれぞれに食べたり飲んだりし始めた。


さっき連れ出された女には僕がペットボトルの水を渡してやった。

余程怖かったんだろう。


僕は人質達に言った


「今後拘束はしない。無駄な暴力もしないと約束する。

…ただし刃向かえばさっきの者と同じだ。」


伊東と田頭はこっちをチラッと見ただけだったが、最初にお茶を飲んだ女は僕をじっと見て大きく何度も頷いた。


「武田の拘束は外すな」とだけ言って倉庫の鍵を外から掛ける。


「なぁガモ、拘束解いちゃっていいのかよ?」

「大丈夫だと思う。太鼓持ちの伊東と田頭は武田が動かなければ何もできないよ。武田を自由にしたら自分達に被害が及ぶ。

女達は僕らが友田の奇行から守った形になってるのを見てるから恐らく…」



スタジオと調整室の間の扉も開け放つ様にした。

これで倉庫で何かあってもすぐ解る。


テレビモニターには友田のパトカーの事がVTRとLIVE映像で流れていた。

LIVE映像ではパトカーは高速道路を走っている様だ。

ヘリの空撮も流れている。


「あのね、さっき楠戸リポーターがテレビで警察の失態で事態は悪化したと言ってたわ。替え玉使われたのが余程頭にきたのね」クーはそう言った。少しでも明るい話題に振りたいみたいだ。

まーくも気付いたらしく、

「あんなブスじゃないって言ってなかったかい?」と続けた。


ヨシは普通に笑ってた。



みんな必死に今を乗り越えようと努力してるんだなと思った。




「友田どこに行くのかな…」

ヨシが呟いた。


「中央高速だから長野とか山梨?名古屋だったりして」

まーく


パトカーは山間部に入り、トンネルに入って行った。


ヘリは先回りして出口で待つ。


しばらくすると赤いランプを点けたパトカーがトンネルから出て来る。





僕は画面を見ながらふと何か感じた。


…何なのか解らないけど。


友田が何か伝えているような気がしたんだ。



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