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僕らの革命 【改訂版】  作者: 片山 碧
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原因


裏サイトは毎日更新された。


更新されるたびに確認してたよ。


夏休みも折り返しを過ぎた。

うちの学校には長期休みには途中で登校日がある。


母親にも心配掛ける訳にもいかないので嫌々ながらも表面的には明るく登校した。



教室は僕がはいると、ざわついてたのが急に静かになる。

みんなが白い眼や哀れむ様な眼で僕を見る。



黒板には大きく『蒲生くん追悼式』と書いてある。

僕の追悼だったようだ。


下らない。


今時こんな幼稚な事をする奴がいるというのも凄いが、実際、真面目にこういう事をされるとやはりツラい。


文字を消す為に黒板の前に立つと伊東が言ったんだ。

「お前の追悼式なんだから休めばいいのによ」

クラスのあちこちから失笑が聞こえる。


無視して黒板の文字を消して自分の机につく。


異様な臭いがする。

机の中にゴミが詰まっている。

ゴミ箱を持ってきて机の中のゴミを移す。

ティッシュの丸まったもの。腐敗したコンビニ弁当。カビだらけのパン。チラシの裏に死ねと書いてあるもの。

ビリビリに破られている僕のプリント。膨らませてあるコンドーム。虫の死骸…


「てめぇクセエんだよっ!」

という声と共に後ろから肩に強い衝撃が来て、抱えていたゴミ箱と机諸共に前に転がる。


武田に蹴られた様だ。

見上げて武田を睨むと


「てめぇその眼はなんだよっ?!」

と言って肩を蹴り上げられた。








コ ロ シ テ ヤ ル







僕の頭の中でそんな声がしたんだ。


「なにしてんだー 席に着け!」

先生が入って来た


「蒲生が転んでゴミ箱をひっくり返したんです」

誰かが言う


先生は嫌な物を見るかの様な目で僕をチラリと見てから

「蒲生、ゴミ拾っておけよ!」

と言って何事も無かった様にホームルームをはじめたんだ。


この状況見て ただ転んだ訳じゃない位は分かるだろうに。


僕は黙って片付けたよ。


泣きたかったけど泣かない。


絶対泣かない。





ホームルームが進行する中、散らばるゴミを集めた。


「蒲生くん!静かに片付けてよ!先生の声が聞こえないよ」

伊東が叫ぶ



「…」



「手伝ってやるよ」

武田が横にしゃがんでゴミを拾うマネをしながら小声で言う


「てめぇ消えろや!」



ホームルームの後は課題を貰って登校日は終わる。

部活のある生徒は部活に行き、そうでない生徒は解散になる。



勿論僕は解散にはならない。


誰もいない教室で武田、伊東、田頭から散々足蹴にされた。



死ね、消えろと言われながら。


いつもなら三人は適当に疲れると罵声を浴びせて帰るのだが今日は違った。


「なぁ、蒲生、暑いよな」


「…」


「汗かいてんじゃんか。水浴びしよーや」


武田の指示で僕は伊東と田頭に裸にされた。


途中までは散々暴れたけど騒げばその騒ぎを聞いて他の人が来てしまうかもしれない。

勿論助けに来てくれたりするはずはない。

見て笑われるだけだ。


下唇を噛んで堪えた



裸にされて押さえつけられて教室の後ろの花瓶に残ってた緑色にドロドロになってる水を頭から掛けられて写真に撮られた。



三人が居なくなってからもしばらく動けなかった。

暴れた時にぶつけた肘と膝が赤く腫れて血が滲んでる。


痛かったけど、それより何か心の奥で音がしたような気がしたんだ。





そばに落ちてた雑巾で拭いて服を着て洗面所に行った。


腐った水はすごい臭いを発してたからせめて流さないと帰れない。




洗面所に着くと、そこには泣きながら血を流してる友田くんがいた。

流しにポタポタと血が滴っている。

「大丈夫?」と聞くとビクッとしてこっちを見た。

鼻血が出ている。眼の周りも腫れてるみたいだ。



「うん…大丈夫。君も?」


「ああ。大丈夫。髪が臭くて肘がちょっと痛いだけだよ。」


思い切り強がってみせる。


隣り合って洗面所で洗う。

排水溝に流れる緑色の苔を見ると悔しさがこみ上げる。



二人は特に申し合わせるでもなく一緒に学校を出た。


「ねぇ、君、蒲生くんだよね?良かったらご飯、一緒に行かないか?」


「…ああいいよ」


正直面倒だとも思ったけど、何だか友田くんを見てホッとした気持ちがしたのも事実。


ああ、僕一人じゃなかったんだなと思ったんだ。


二人で学校から離れたハンバーガーショップに寄る

夏休みだからか沢山の客がいたが奥の狭いテーブルが都合よく空いた。


チーズバーガーを食べながら話したんだ。

味はよく解らなかった。


サイトで知ってる情報だと、相手は違うが友田くんも僕と同様に特定の人物からイジメに遭っているらしい。


サイトで見た様に友田くんの場合は肉体的なイジメも酷くて、階段から突き飛ばされたり、椅子で殴られたりもあったらしく、恐怖から学校へ行けなくなった。


ナゲットを食べながら友田くんは話し始めた。


今日も休むつもりだったけど出席日数の問題と課題を貰わないと留年になる可能性があると学校から言われた。

渋々学校に行ったものの、即攻撃されたと。

休んでたから攻撃が更に酷かったんだろうとも言った。


僕が「親御さんは知らないの?」と聞くと、

「知ってるけど、何もしてくれやしないよ。

俺は母親の連れ子だから父親と称する奴に散々殴られて終わりさ。」


「…」


「最近さ、俺は居ない方がいいんじゃないかなって思うんだよね。」


「え?」


「消えちゃおうかなってさ。

蒲生くんも酷く遣られてるみたいだけど、学校出たら終わるだろ?

俺は家でも学校でも…例え卒業しても逃げられないんだよな」


「…」


「…こんな人生要らないかなって思ってさ。

消えたってみんな何とも思わないだろうし。寧ろ目障りなのが消えて喜ぶんじゃないかなってね。」


「…ダメだよ。生きてなきゃ…」


つい そう言ってはみたけど…


僕も心のずっと奥で考えてた事はそれと同じかもしれない。


いじめに負けて死にたいとかじゃなくて、生きてる事から逃げるんだ。


…いや、消えるんだ。


消えてしまえば僕の周りの人達は幸せになれるかな…


毎晩の様に僕の事で喧嘩してる両親の顔が浮かぶ。

多分、僕が居なくなったら、少しの間は悲しんで苦しむかもしれない


でもすぐ忘れるんじゃないかな?


喧嘩もしなくなるだろうな。

以前みたいに仲のいい夫婦に戻るだろうな。



勿論学校も平和になるだろう…



そう考えた時…




僕の頭の中で武田がニヤリと笑ったんだ。




急に吐き気が込み上げる。

心臓がバクバクいって顔が熱くなり手のひらは冷たくなった。変な汗が滲んできたのが解った。


気付いたら拳を強く握っていたんだ。



僕の様子が急に変わって驚いてオロオロしてる友田くんに言ったんだ。



「…僕も一緒に消えるよ。でもその前にさ一緒に大きな事をしないか?」



「大きなこと?何を?」









「【復讐】さ。」






 

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