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僕らの革命 【改訂版】  作者: 片山 碧
17/45

18時

トラックがバックしてきた。

間の抜けた電子音が響く。



下駄箱に隠れながらトラックの赤いテールランプが近付いて来るのを見張った。。


しゃがんでトラックの下から向こうを確認する。

トラックの陰に隠れて突入班を近づかせる可能性もある。

以前テレビでハイジャックの映像を見たとき、作業車の陰に特殊隊員が隠れて飛行機に近付く映像を見た事があったのを覚えてたから。


…足は見えない。


トラックが停まり、運転席が開いて男が降りてきた。

目つきの悪い男がこっちを見ている。

こいつ警察だ!

作業着は着ているがズボンはスラックスだ

僕は銃を構えた。

こっちに来るなら撃つ気でいたんだ。

…来るな!……いや、来い!撃ち殺してやる!


ちょっとすると、男はくるりと向きを変えて校門に向かって走り出した。


偵察しに来たのだろう。


僕は冷や汗を拭った。


男が門を出た所でインカムでクーに門を閉めさせた。


トラックが建物に寄っているから向こうからこっちは陰になって見えない筈だ。

まーくと一緒に台車に灰色のプラスチックコンテナを下ろす。中にはサンドイッチや弁当がびっしりと入っている。

飲み物のコンテナもお菓子のコンテナもある。



毛布には手をつけない。

どんな小細工がしてあるか解ったもんじゃないからな。



自分たちの物を放送室に下ろして残りは各教室に置いてきた。

放送室倉庫にはペットボトルの水を何本かだけ放り込んだ。


緊張してたからご飯なんか食べれないだろうと思ったけど結構食べれた。


クーも食後の一服をしてる。


まーくは二階廊下でヨシと見張りを交代しながら食べた。


友田も起きてきて弁当をつついていた。


友田は口を利かなくなっていた。

しかも目線がどこを見てるか解らない状態なのが気になる。

薬の影響なのかな…



友田が食べ終わるのを確認してから二階に上がることにする。


友田に声を掛けたが返事もせずに壁にもたれて遠くを見てた。

動く気配もない。

クーも声を掛けたが反応がないらしくムッとしてた。

仕方ないから僕とクーだけで二階に上がったんだ。




僕らは順番にクラスに入り、残す人質だけを放送室倉庫に連れていく事にした。

田頭と伊東は抵抗もせず移動させる事ができた。

Bクラスの女三人は多少暴れたがヨシに銃を頭に突きつけられて従った。

Cクラスは全員解放だ。


これで人質は8人。


扱いやすい人数だ。


ここで問題が起きた。


怪我をしている柴田を解放しようと僕が言った時、それまで黙ってた友田がいきなり怒鳴ったんだ


「冗談じゃない!それじゃ俺は何も復讐できないじゃないか!

俺はあいつを殺したいくらい憎んでるんだっ!

今解放したらあいつは悲劇のヒーローになるだけだろっ!

この世から抹殺しなきゃダメだっ!」


「お前、柴田殺して嬉しいか?同レベルかそれ以下になるぜ」

ヨシがそう言うと友田は歯を食いしばりながら睨みつけた。


「興奮してるからさ…安定剤出すよ」

まーくが言う


「いるかっ!俺の一番の安定剤はあいつの死に顔なんだ!」

目は真剣で赤い顔をして汗をかいている。握り締めた手がブルブルと震えている。


…これじゃ友田が壊れるのは勿論、仲間割れも起きる…ヤバいな。


しばらく緊張した状態が続いた。


「じゃあ、取り敢えず柴田は後回しにして残りは解放しよう。」


僕は提案した。

正直に言えば水を持って行った時に柴田の脚が赤く腫れ上がっているのを確認していたから。

出来たら今の段階で解放しておきたかったんだ。

元々、殺させるつもりはないんだ。


人質の数は減らさない方がいいと友田は小声で言っていたが、柴田を残す事で納得したようで、それ以上何も言わなかった。


僕は吉岡に電話を入れた。

「これから一部を残して人質を解放するので待機してください。」


吉岡が話始める前に僕はそれだけ言って電話を切った。


正門前の警官達が俄かに慌ただしくなるのがカーテン越しに見てて解った。

大盾が移動する度にキラキラと反射した。

受け入れの為に準備してるんだろう。

空は大分暗くなっていたが、大型投光器を載せた照明車が何台も来ていて校庭や門周辺は昼間より明るく照らされている。


僕は二階に一旦上がり、Cクラスに行く。

Cクラスは落ち着いていた。

馬鹿2人が抜けた事で気を使う事が減ったのかもしれない。

代表のメガネの女に言う。


「君たちを解放しよう。」

クラスがザワッとする。笑ってる奴もいる。


「…但し、君が西校舎に行って二階の全クラスの電気を点けて来たらだ。」

僕はさっきの女の子に向かってそう言った。


「…」

メガネの奥から不満そうな目つきで僕を見た


「その位の事はしなよ。しないなら一人も解放しない。」


「…解ったわよっ」

半分怒った様に言った。


「5分以内に」

と付け加えた。


更に女が二階渡り廊下に走り出した後ろ姿に「警察に狙撃されないように」とまで付け加えたのはやりすぎだったかもしれない。


二階廊下のブラインドの隙間から西校舎に次々と電気が灯るのを見てた。明かりの中にメガネの女が走る姿が見える。

防火扉が閉まっているから五分で全ての教室に電気を点けるのは大変かもしれないな。


電気の点いた教室内を双眼鏡で一つづつ確認していく。

何も動く物はない。


汗をかきながら教室に帰ってきた女を確認してクーにインカムで門を半分開けるように指示した。


「Cクラスの皆さん。解放します。直ちに学校から出てください。」

みんなそれを聞くと同時に一斉に外に向かった。


メガネの女が教室を出る時に僕は呼び止めた。


「君なら僕らが何の為にやってるか理解できるだろう。」


「…」


「君たちの様に事なかれ主義の人達に対してもう少し真剣に考えて欲しかったんだよ。」



女は何も言わず僕を睨むとみんなの後に続いた。


僕の言いたかった事は、最後に言った言葉だけだったんだけど、怒りで多分理解できてないだろう。


意地悪な言い方をしたりワザと嫌な役目をさせたのは、この後警察の事情聴取をされた時に、間違いなく僕が指揮を執っていたと言わせる為なんだ。

更に彼女の自尊心を傷つけて僕に悪い印象をもたせるのが目的なんだ。


あの性格なら警察に対しても物怖じする事はないだろう。


僕の計画なんだよ。




続いてAクラスもBクラスも解放した。


生徒の最後の一人の姿が階段に消えた後、何だか背負った大きな荷物を下ろした気がしたよ。



荷物が散乱した廊下はなんだか廃墟みたいだった。



放送室に戻る。


もう二階の見張りはいらない。放送室の倉庫の鍵だけかけておけばいいのだから楽だ。


5人で放送室に集まる。

友田も少し元に戻った様だ。

目つきも普通になった。



「これからの事を相談したい。」


「明日、藤堂が来るんだろ?今回の意義を伝えて、それからどうするんだ?」ヨシ


「…そろそろ消える準備じゃない?」クー


「…藤堂の出方次第だと思ってる。何の成果もなく犬死はしたくないからな。


世間に現状を解らせる様に公正に伝えてくれたら目的は達する。

もしきちんと履行してくれなければ更に強い手段に出なくちゃならない。

ヨシが言うように一応最低ラインでの目的は達してるからこれで消えても僕は悔いはない。

だけど…まだ出来そうな気がするんだ。もっと世間のみんなが真剣に考えてくれる様なアピールがさ」


まーくとクーは小さく頷いた。ヨシは少し不満そうだ。


「いづれにしても消える時には僕の出番だ。いつでも言ってくれよ。」とまーくが言った。


「…」

友田だけは何も言わずただ膝を抱えて座ってた。



その後、武器の確認を行った。


散弾銃 二丁

散弾 約400発

ボウガン 一丁(矢99本)

火炎瓶 12

スタンガン 4(一つは壊れた)

サバイバルナイフ 5

催涙スプレー 3

鉈 一丁

ギミック弾 3(まーく製作)

睡眠薬や安定剤や麻酔薬 多量

その他包丁やアイスピックなど


武器はまだ闘える数はある。

ただヨシの銃が発砲数が多い為分解清掃をしなくちゃならなくなった。


まーくと僕が数えてクーがノートに記す。

チェックはヨシがした。

友田はじっと見てた。




…この時、気づくべきだったんだ。



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