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僕らの革命 【改訂版】  作者: 片山 碧
16/45

17時

柴田の怪我は右足の太ももの後ろと脹ら脛に散弾が6つ入ってるみたいだ。

血は少しずつ出続けて、しばらくすると赤みが増して腫れてきた。膝の少し上を電気のコードで縛ってやった。

その間も柴田は痛いと騒ぎ通した。


iPodを外しても武田はぐったりしてた。


武田と柴田を拘束し、南に銃を突き付けて手伝わせて放送室の倉庫に運びこんだ。


南は機材の取っ手にタイラップと倉庫にあった放送用のコードで括りつけた。


倉庫は外から鍵を掛けた。









僕は決めた。


人質の数を絞る。


警察は夜間に何かしらの動きをして来るはずだ。


もし強行突入されたら人質にも被害が出るかもしれない。

そのリスクは減らしたい。


…本当は、人質が多いと面倒が増えると言うのが本音だ。


必要ないリスクは早く切り捨てよう。


みんなにその話をした。まーくも反対しなかった。

ヨシは助かると言って賛成し、クーは任せるって言ってくれた。

…けど…


友田だけは強く反対したんだ。


「人質が沢山いるから警察も手出しできないんだろっ?

沢山いるんだから何人か痛めつけて見せしめにしよう!」

真っ赤になって話す友田は何だか必死で怖かった。


「友田…でもさ、痛めつけて喜ぶんならあいつ等と一緒だぜ」とヨシが言うと


「なにぃっ?!」


と立ち上がってヨシを睨んだ。


まあまあ、落ち着けよとまーくが言ってその場は納めたけど不穏な空気が流れ始めたんだ。


結局は友田もしぶしぶ折れた。


「疲れと寝不足で苛々してるんだよ。」


まーくはそう言って小さな白い錠剤を2錠友田に渡した。


「安定剤ね。あたしもそれ、よく飲んでたわ」

クーがそう言うと友田はつまらなそうにガリガリかじって飲んだ。


ヨシを二階の見張りを頼んで友田を放送室の奥で眠らせる事にした。



あんな言動を続ける様だと仲間割れに繋がる可能性もある。

友田が奥に入った後、まーくが小声で言った。

「友田壊れかかってるね」


「ああ。大丈夫かな」


「全能になった気持ちなのさ。今までの抑圧を発散したい、しかもそれが今は可能なんだ。圧倒的に有利で、更に相手は弱ってる。」


「…あたしも同じ状態なら撃ちたいと思うわ…きっと。」


「単純な復讐ならそれでいいと思うんだよ。でもそれは僕は許さない。」


僕はそう言った。

自分は武田を殺したいと思った…いや思ってる。


だけど仲間がそれをするのは許さない。


自分でも解ってるんだ矛盾してるって事は。



そう


一見したら矛盾してるんだ。




僕は警察と連絡を再開する事にした。


「吉岡さん。先ほどの件で一人犠牲が出ました。全て警察に責任があります。」


『…撃ったのか?』


「どうせ音声をモニターしてるから解るでしょう?窓ガラスの割れた音と銃声。」


『誰が撃たれたっ?怪我の具合はどうなんだ?』


僕はそれには応えず言った

「要求します。明日の朝9時にジャーナリストの藤堂さんをこっちに寄越してください。」


藤堂は有名なジャーナリストだ。最近まで報道番組のMCもしてた。



まーくの提案なんだよ。

「藤堂は団塊だからいいかも」


「団塊の世代って、ややこしいオヤジが多いんじゃなかったっけ?」

クーが言う


「そう言う人もいるみたいだね。でもね、官憲に対する嫌悪感を強く持ってる人が多い世代でもあるんだよ。

そこを利用したらどうかな?」


「…共通の敵を持つもの同士って事か。」


「そう。藤堂は政治家の不正暴いたり、警察の失態を叩いたりしてるし。」


…そういう訳で藤堂を呼ぶ事になったんだ。






「…約束できますか?今度変な事したらリスト通り撃ちます。あと、毛布を32人分差し入れてください。」


毛布の数もリストも眼眩ましの為のいい加減な出任せだ。



『解った。藤堂氏と交渉する。差し入れはすぐに用意する。見返りは期待していいんだろうな?せめて怪我人だけでも…』


僕は何も言わずに電源を落とした。

唯一、吉岡に言いたかったのは、『調子に乗るな』って言葉だったんだ。言わなかったけど。


外は薄暗くなってきた。





「ガモくん、どの局も空撮が無くなったよ!」


四台のテレビを使って各局を観たがLIVEの空撮が無くなった。

耳を澄ませてもヘリの音は聞こえない。


「有視界飛行終了時間には少し早いから、警察から要請が入ったんだろうね。

中継されたら僕らに筒抜けだもんな。」


「動くって事だね。」


「多分ね」


「その前に腹ごしらえするか。」

僕はヨシにインカムで話を聞いた。


「今なら何便だい?」


『…めしか?4便が着く頃だよ。駅前のライブ映像確認してみなよ。』


まーくに言って地元新聞社のサイトから『地元中継』という画面を出してもらう。『○○駅前』をクリックすると駅前の画像が映る。

画面の右端にコンビニが映る。

まだ来てない様だ。


インカムで話をする


「ヨシ、これから呼ぶから。警察が仕掛けて来るかもしれない。注意してくれ」


『了解』


僕は携帯の電源を入れて吉岡に言った。


「藤堂さんはどうですか?明日の朝9時に間に合いますか?」

『今交渉してる。沖縄の島に行ってるんだ。来れるかどうか…』


「来なければ人質が減るだけですから」


『毛布は用意出来てる。どうしたらいい?…食事はどうする?』


パソコンの画面のコンビニにトラックがバックしているのが確認できた。

まーくが画像を拡大してナンバーをメモして僕に渡す。



「…ではこれから言う指示に従ってください。


○○駅前の△△マートのコンビニに入ったトラック、ナンバー7762を三分以内に運転手の交代をせずに正門前に来させて下さい。三分ですよ。」


『何?!』


僕は電源を切った。


そう。コンビニに商品を運ぶトラックをそのまま来させるんだよ。警察が手出しできないだろ。


少ししてパソコン画面のコンビニにパトカーが見えた。

商品を降ろしてるおじさんと店員も出てきて話をしてるのが解る。

運転手が慌てたように首を振っているのが見えた。


制服警官と私服警官とが必死に説得してるのが画面を通しても解る。



「来るかな…」

クーが画面を見ながら言う。

暫くしてトラックはパトカーの先導で動き始めた。




「吉岡さん、トラックが着きましたね。バックで正門に着けて後ろの扉を開けてください。中に警官でも入られると困るので」


『…』


職員室のカーテンの隙間からまーくが確認する。


「早くして下さい。荷台に毛布も積んで下さい。そのままバックで玄関前まで着けて下さい。…トラックの前に突入班が隠れたりしても解りますからね。変な事をしたら人質を撃ちます」


『解ったよ』


「トラックを玄関ぎりぎりで停めたら運転手は車から降りて正門までダッシュして下さい。」


『…解った』


「…ああ、それから今の様に気を逸らせてる間に他から侵入とかしないでください。

仲間が見てます。


あと、電気を切る予定があるんでしょうが、止めた方がいいですよ。

非常電源に人質を繋いであります。

電気落としたら非常用電源が入って人質は感電死しますよ。」


電話の向こうで息を呑むのが解った。


やっぱり電気切ろうとしてたんだな。


僕は携帯の電源を落とした。


さぁ どうする? 吉岡さん






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