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僕らの革命 【改訂版】  作者: 片山 碧
14/45

15時


ヨシから連絡が入る。


『中から話があると言ってきてるがどうする?』


「用件は?」


『飲み物とトイレだとさ』


「飲み物は警察に断られたと言ってくれないか」


『トイレは?』


「検討すると」


『…解った。でもあんまり時間ないぞ』


「解ってる。後片付けはごめんだろ?これから友田に言って準備してもらうよ…友田聞いてるか?」


『ああ。どうしたらいい?』


「これから技術室に行って電動ノコかチェーンソーを持ってきてくれないか。二階のトイレの扉と中の仕切りを一枚だけ残して全部剥がして捨ててくれないか?一度に二人づつ行かせる様にする」


『了解』


隣にいたまーくがインカムで続ける。


『まーくだよ。聞いてたんだけどトイレ解放するなら僕のカバンに入ってる黒い箱を一つ持って行ってトイレに目立つ様に置いといてくれないか?スイッチは横に付いてるから』


『了解だよ』


「なぁ、まーく、その黒い箱って何だ?」


「単なる箱にビニールテープ貼ってマイクみたいな網と点滅する赤いLEDと壊れたレベルメーターが付いてるだけだよ。

最初は教室に仕掛けたらいいかと思ってたんだ。

トイレでは水の音以外は禁止と伝えてよ。

話声と金属音に反応して爆発するって言うんだよ。

そしたら中の見張りがいらなくなるだろ?」


「なるほどね…心理的に厳しいね」

二階からギューンという電動ノコギリの音がする。

友田が作業を始めたみたいだ。


「ガモくん!テレビ!」

その声に弾かれる様に画面に目を遣る

クーが指す先にはレポーターの楠戸が緊張した面もちで立っている。


僕は携帯の電源を入れてこちらから電話を入れる。


『吉岡だ。連れてきたぞ。楠戸さんがそっちに行ってもいいと言っている。楠戸さんとカメラと音声の三人で…』


「解りました。でもカメラと音声は禁止します。マイクは付けても構いません。1人で裏門から入ってきて下さい。」



『いや、それは…女性一人でなんて…』


「一人じゃないと話し合いは決別したという事で人質を一人撃たなきゃなりませんが構いませんか?」


『チッ!解ったよ。上に伝えてみる。門を開けてくれ』



画面を見ながら少しだけ門を開けた。


インカムでみんなに伝える。


「これから外部からレポーターが一人入る。カメラは後から別の会社のクルーを選ぶ。

…何が起こるか解らないけど、僕の指示に従ってくれ。

ヨシと友田は人質から目を離すなよ」


『了解』

みんなから応えがある


テレビ画面では警察に囲まれる様にしながら入ってくるおばちゃんが見えた。

これ見よがしに防弾チョッキを着ている。


テレビモニターをじっと睨んでいたクーが


「ガモくん違う!あいつ楠戸じゃない!」

と叫ぶ。


すぐに外部放送のスイッチを入れる


「止まれ!お前楠戸じゃないな!戻れっ!」

おばちゃんは立ち止まりキョロキョロと見渡す。


「偽物だなっ!人質がどうなっても構わないんだなっ」



あたふたとしてる姿が見える。


職員室の壁に設置してある警報盤が警告音と共に赤い警戒ランプが点く。


学校の見取り図になっている警告盤の学校裏側のランプが点滅している。

誰かが裏から壁を乗り越えたみたいだ。

表に意識を逸らせてる間に裏からという事か。



「裏から侵入した者、出ろっ!入ったのは解ってるんだ!人質を撃たれたくなかったら30秒以内に出ろ!」


インカムでヨシに外に向けて威嚇射撃するように指示する。


二階から叫び声と銃声が響く。

おばさんが走って門の外に出たのを見て門をロックする。

パネルの学校裏の警告ランプも消えた。



裏から侵入した奴は外へ出たのか、警報の鳴らない校内に入ったのか…


僕は意外にも冷静だった。


まーくにインカムで威嚇はもういいと連絡してから徐に携帯を取り出した。


繋がると同時に話し始める


「吉岡さん。騙しましたね。警察は約束を守らないという事でいいですか?それならこちらにも考えがあります。」

『待てっ!上層部の判断だったんだっ!俺もさっき聞いて…』


「関係ありません。候補に上がってる6人を射殺します」

勿論はったりだ。

数字を入れて話をするとリアルに聞こえると何かで読んだ事があったんだ。



『待てっ!上と話するからっ早まるなっ』


吉岡の方から電話を切った。


大きく溜め息をつく。

やられたな…

落ち込んでる場合じゃない。次の手を考えなくちゃ…


でも僕にはあのおばさんは本物に見えた…。

僕だけなら入れてたな…。


「クー、良くあれが偽物だって解ったな」


「へへっ。服や髪型は似ててもさ化粧の仕方や靴が、さっきのモニターで見た楠戸と違ったんだよねー。猫背な所も違うし。」


「…見てる所が違うな。さすが女の子だな」

そう言うとクーは嬉しそうに笑った。



やはりさっきの件が気になる。警官が入り込んでるとヤられる…。


「まーく、クー、校内を見てくるよ。

さっきのどさくさに紛れて警官が入り込んだかもしれないから。

もし僕に連絡がつかなくなったら…」


「解ったよ。早く帰ってきてくれよ。…ほら」


清涼飲料水の瓶を手渡してくれた。

キャップの所に薬品の付いた紙のテープが貼ってある。

火炎瓶だ。


「落とすなよ。火だるまになるよ」

まーくは笑いながら言った。


クーが心配そうに見ている。


「クー、頼んだよ。」

「うん。あたしはモニター観てるから。何かあったらインカムで伝えるね」


僕は二人にショットガンを軽く持ち上げて放送室を出た。




二階でトイレの確認をした。


ヨシと友田にまーくの作った『ブラックボックス』の説明をしてからトイレの使用を許可してくれと伝えた。


ヨシがブラックボックスの説明を聞いて「そりゃいいや」と楽しそうに笑った。



「…但し、二人づつな。反抗したら威嚇。逃げるなら…足を狙って撃て」


ヨシは大きく頷き、友田は泣きそうな顔をした。




三階に上る。

三階の廊下の端は緑色の金属の防火扉が閉まっていた。

最初にスプリンクラーを作動させた時に全館で閉まったんだ。

一階と二階は開け放っているけど三階のはどうするかな…


こちらの姿も見えないが警官が入り込んでいてもわからない。ちょっと考えたけどそのまま置いておく事にした。


金属の防火扉は開ければ音がする。


大きな防火扉の真ん中にある小さな扉は武装警官には狭い筈だ。いざとなればこっちに有利だと思ったんだ。


僕は防火扉の小さな扉をくぐり、中腰で走って壁際にへばり付く。


隣の校舎の屋上から狙撃されちゃかなわないから。


壁に隠れる様に手を伸ばして端から廊下のブラインドを下ろしていく。


ブラインドを閉め終わった薄暗い廊下の真ん中で膝を立てて座り込む。



始まってまだ半日。


思ったより厄介だ。

僕は上手くやっているのだろうか…


仲間は僕を信じてやってくれてる。

僕も間違えてるとは思わない。

…ただ、本当にこんな事して変わるのかな…

元は復讐の為に始めたんじゃなかったのか?


対象者のみで良かったんじゃないか?

もっと簡単に僕が武田を殺したらそれで終わり。


…いじめを減らす為という大義名分まで掲げて、やってる事はテロだよな。

今からでも武田以外は解放して…仲間も罪に問われないように…


でも命掛けでやってくれている仲間の気持ちを考えたら、リーダーの僕がこんな風に考えてたらいけないよな…。


…考える時間が欲しい。



インカムが入る

『ガモくん大丈夫?』

クーだ。


「ああ大丈夫だよ。三階には誰もいない」



インカムに返事をしてから立ち上がる。


極力明るい声で返事をする。


「これから戻るよ」



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