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6話 謎の助っ人


 ラパを残して表に出ると、脇道に奈來専用と思われる黒い車が待機している。すると、車から背の高い男が降りてきた。

 確か元ヤンキーとかいう依澄(いすみ)レオンだ。見た目は金髪にピアスで怖そうだが、けっこう真面目で気の良い奴だ。

 そして俺の正体を知る人間のひとりでもある。


「ようレオン、久しぶり」

「ウッス! ご無沙汰してます。あ、ボスは?」

「いま小動物とお留守番中、お前いま暇か?」

「はい、ボス待ちだけなんで。オレに何か?」

「ちょっと付き合え、ただの見回りだ」

「了解っす! ご要望とあらばどこへでも!」


 俺はレオンに頼んで街を観て回った――


 お国柄というべきか、他の国に比べ、治安も生活も比較的おだやかだ。フード店やスーパーも問題なく営業している。特に衣食住に困っている様子は然程ない。

 ただ、生きるための善と悪が混じり合う混沌地は、異国同様、衣食住と暴力に悩まされている。


 その異国の地で「伝言」をきっかけに、俺は奈來と知り合った。確か国の要請とかで、軍警が救助活動に携わっていたときだ。

 当時レオンも生意気盛りの若僧で、奈來に元ヤンキーだと紹介された。いまだにヤンキーが何なのかよくわからないが。

 

 でもレオンを見ていれば何となく想像はつく、多分ストリートギャング的な奴らを言うんだろう。

 良くいえば個性的、悪くいえば自己中心的、まあそれなりに言い分はあるだろうが、俺は嫌いじゃない。環境次第で人はいくらでも変わるものだ。


 その元ヤンキーのレオンが何かを発見したのか、猛スピードで車を走らす。


「リュカさん、しっかり掴まって!」

「お、おう……!」


 少し走った先から、小さな子供達が必死の形相で逃げまどっていた。手には荷物を抱えている。


 レオンは急ブレーキを掛けて止まると、


「リュカさん、ちょっと待っててください」


 そう言って一目散に駆け出した。待てを喰らった俺は、仕方がないのでしばらく様子を見ることにした。んー、つまらないので実況中継しよう。


 小さなガレージで荷物を運んでいた大人達が、手にスパナやバールを持って子供たちを襲っている、大人げないねえ。

 子供を(かば)うように、少年グループが果敢にも立ち向かうが、武器は棒切れ、無茶だろ。

 うーん、確かに非常事態だな、ではこの先のストーリーを予想してみよう。


 あの子供たちや少年グループは、異国でよく見かけるギャングチルドレンではないか。

 腕に抱えた荷物はおそらく盗難品、見れば黒服の連中もチラホラと。

 そしてギャングチルドレンは盗んだ品を売って生活している。


 そこへ勇ましく加勢に出たレオンだが、子供も少年達も我先にと逃げて行く。なるほど、よくある肩透かしを喰らったパターンである。

 さて、俺はこのシナリオに通行人Aとして参加するべきか、もしくはモブAとして観客に徹するか。

 

 そうそう、モブAという言葉だが、アニメではその他とか、空気のような存在をいうらしい。特にこの国では、若者言葉や省略語が流行りみたいで、なんとも話し方や会話が独特で実に面白い。マジとか、ウザいとかだ。

 早くも俺やラパは感化されつつある。情報としてはとても有難い存在だが、慣れるまでが一苦労だ。


 おっと、余所見をしていたら、黒服の奴らがレオンに銃口を向けている。

 ではモブAとして参加することにしよう。ものは試しだ、初の想造魔法を使うチャンス。


 俺は黒服の男たちに狙いを定め想造する。ここはやはりラパを参考に――


 "『落石の断罪』"――


 想造すると、空から青い閃光と共に、無数の石飛礫(いしつぶて)が男達を目掛けて弾丸のごとく降り注ぐ。

 俺はその光景をファインダーから覗くように、逃げ惑う男達を捉えて追撃する。

 腕や脚はあらぬ方向にひしゃげて男達は地に伏せる。恐怖のあまりレオンの足にしがみ付く男、するとそこへ、どこからか一本の矢が飛んできて男の腕に命中、レオンは慌てて腕を振り解き、息を荒くして戻ってきた。


「レオン、お疲れ〜」

「ハァ、みっともない姿を見せてしまって……」

「子供は奇想天外だからね、仕方ないさ」


 そこへエアバイクに乗った男が走り去った。あれは武装した傭兵(ようへい)だろうか、額に布を巻き、黒っぽい丈の長い上着を羽織っている。

 背にはボーガン、なら奴が矢を放ったのだろう。敵か味方か、後を付けてみる価値はある。


「レオン、今度は俺が様子を見てくる」

「そりゃないでしょ、オレも行きます!」


 まあそうだろうな――


「フッ、俺から離れるなよ」

「ウッス! あの石はリュカさんが……?」

「――気にするな。ほら早よ行け」


 レオンは苦笑いで車を出す。バイクを追って着いた先は、港町に程近いテーマパークに隣接するレンガ倉庫だ。男は裏手にある古びた映画館でバイクを止めた。そして倉庫の方へ向かう。

 

 俺たちは倉庫の横から辺りの様子を(うかが)う。すると、人の賑わう声が聞こえてきた。

 近寄って見ると、倉庫内に色柄の布を頭に巻いた若者が、ダーツで無邪気にはしゃいでいる。


「なあ、お前はあいつらを知っているか?」

「あれは『ラストタバリオン』という集団ですね、あの頭に巻いたバンダナが彼らの象徴です」


 あの布はバンダナというのか――俺の時代にも似たような風貌の山賊がいたが、ここは港町だから海賊といったところか。


「ラストタバリオンとは?」

「はい、"最後の大隊"という意味らしいです」


 ほう、随分と大層な名目だ。彼らはこの港町を拠点としているのだろうか。


「なら矢を放った男は?」

「顔くらいしか。でもオレらとの接点はないです、あるのは県警のほうかと。奴らはストリートギャングと呼ばれるちょっと危険な集団なんですよ」


 ストリートギャングか、ならレオンを助けたのはあのギャングチルドレンのためだろう。

 こうなったら道に迷ったとでも言って話を聞いてみるしかない。

 


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