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4話 昔話と軍警


 ということで、ラパには話を聞かせてくれたらキノコを食べる条件で、なんとか口を割らせた。


 ラパの話によると――

 今から約1200年前、とある国に黒魔術を使う魔術師がいた。その魔術師は傀儡(くぐつ)を使い、人間に悪を齎らす邪素を仕込んだ。

 魔術師は傀儡と共に各地を渡り、人を邪悪な者へと変えていった。そして凶悪な犯罪が世界中に広がった。

 危惧した冥界が死神に悪人狩りを命じた。さらに朽ちた魂から生える黒キノコを神聖魔法で根絶した。

 

 ラパの話を聞いてある疑惑が過った。黒キノコが今も存在するということは、黒魔術師の傀儡がまだどこかにあるのではないかと。

 だから冥王は特別指令を下し、俺にも魔法が使えるように裁判神がラパを付けた。

 あくまで俺の推論だが……。


 そんな俺を他所目に話を終えたラパは、ぐったりと横になり文句を言う。


「ふぅ、ラパは喋り疲れたのだ、リュカちん、早く黒キノコを食べるのだ!」


 そう言って串刺しキノコを振り回す。

 何が疲れただ、俺はお前の話を整理するのにどれだけ苦労したか、解読する俺の身にもなれ。

 それはそうと、まだ疑問は残る。


「ハァ、そう急かすな。でもさ、今さら俺に魔法とか必要? ソードがあれば十分だと思うけど」

「あのね、剣だけでは白い魂は守れないのだ。はいリュカちんア〜ンして」


 うわっ、くそ不味い……。


「モグ……んー、それは防御ってこと?」

「そうなのだ、剣が届かないときは魔法が有効」

「ああ、そういうことか。で、いったい幾つ食べればいいのかな?」

「全部なのだー!」

「うぇ……」


 それからラパは付け足すように――


「青キノコは魔法の源、青キノコを食べると、リュカちんは想造魔法(そうぞうまほう)が使えるのだ」


 と言って、亡霊(ファントム)である俺にしか使えない魔法だそうで、その想造魔法には属性も詠唱もなく、俺が想像した物体や現象を操る魔法だとか。

 

 またキノコかよと、うんざりしている俺に、ラパが偉そうに助言する。

 

「リュカちんはソードで敵を倒す、離れた敵には違う武器を想造すればいいのだ」

「んー、じゃあ、敵を殴り倒したいときは、拳に代わる何かを思い浮かべるってことだね?」

「そうなのだ、石とか石とか石なのだー!」

「ああ、はいはい……」


 ラパの想像力が乏しいのと、くそ不味いキノコをなんとか平らげたので、俺は死んだ男達に「ごちそうさま」と言ってその場を去った。


 

 ――――――

 

 

 俺は気分最悪の中、来た道を辿り地下基地(ジオ・フロント)近くに着くと、スーツで身を固めた男が待っていた――思わず目を細める。


「ようリュカ、久しぶりだな。相変わらず妖艶は健在のようで目が(くら)むぜ」


「――お前は相変わらず口だけは達者だな」


 と言ったら、男が(しか)めっ面で言う。


「逢ってそうそう嫌味か、まあいい。今日は挨拶に来ただけだ、場所と日時はまた連絡する」

 

 彼は軍警のトップで、名前を奈來圭吾(ならいけいご)、裏表のない人間だが、独身のくせに口うるさいのが欠点だ。


「合同捜査の件だろ? 俺も着いたばかりだから、明日の朝またここへ来い」

「了解した。じゃあ被害者の身上書を持っていくから、大人しくしてろよ」


 既にひと暴れしたとは到底いえなるはずもなく、無言で手を振ってその場を(しの)いだ。

 

 

 翌朝――


 地下基地(ジオ・フロント)に設置された部屋で寝ていた俺は、ラパの「リュカちーん!」という叫び声で目を覚ました――いったい何事?


「ふぁ〜どうしたラパ、あれ? ラパ?」

「ラパは風呂場なのだー」


 エコーが掛かったラパの声に風呂場へ行ってみると、朝風呂を堪能するラパを発見。


「ハァ……良いご身分で、俺に何か用か?」

「リュカちんに良い物を与えるのだ」

「ん? 良い物?」

「青いキノコなのだー!」


 そう言ってラパの目線の先をたどると、体を洗うスポンジの上に青いキノコが生えていた。

 俺は一瞬、キノコを前に言葉を失う――


「黒キノコを平らげたご褒美なのだー!」


 ラパいわく、妖精が認めた者に与えられるキノコだという。そんな重要なことを風呂場なんぞでいうことか? 事後報告にも程がある。

 今更ながら思うが、ラパといい、裁判神といい、冥界の連中は本当に不可解で慣れる気がしない。

 

 それより、キノコが湿地帯を好むのは知っているよ、知ってるけど、何も体を洗うスポンジの上でなくてもよくない?


 俺はその場に立ち尽くし、無表情で尋ねる――


「……これを俺に食えと?」

「……他に誰がいるのだ?」


 俺は無表情で応えるラパを湯舟に沈め、認められた嬉しさと情けなさで、溢れる涙を堪えながら青いキノコを口に放った。うっ、不味い……。

 

 すると、蒼い閃光が俺の身体を駆け巡った。特に痛みも吐き気もなく、手の平をパチパチと閃光が弾けて次第に収まった。

 これで魔法が使えるようになったのかと、半信半疑で風呂場を出た。

 

 そんな俺を息も絶え絶えにラパは言う――


「ブホッ……リュ、リュカちん、ご、ご飯は自動で出てくるのだ……用意するのだ……ゲホ……」


 ご飯の自動とは――この地下基地(ジオ・フロント)には、フードなんちゃらとかいう機械に食事のメニューを告げると、自動で提供される画期的なシステムが備わっている。

 と解説している間にラパが危機的状況に陥っていたので、仕方なくラパを救出して体を拭いてやった。風呂場を殺害現場にはしたくないので。


「ハァ……それより、ラパは奈來に会うのは初めてだよな? どうするか……」

「大丈夫なのだ、裁判神と一緒に会ったのだ!」

「えっ、マジ?」

「キャハハ、マジなのだ!」


 ああ、下見に来たときか、それならそれで手間は省ける。なら今後の振る舞いも兼ねて、ラパだけで奈來を迎えに行かせよう、いい加減に働け。


 ラパは元気よく尻尾を振って部屋を出た――


 

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