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3話 謎のキノコ出現


 バイクの男は街中を抜けて、廃屋(はいおく)となったショッピングモール街で止まった。俺はビルの谷間に降りて辺りの様子を(うかが)う。

 

 彼方此方(あちらこちら)に黒いスーツにサングラスを掛けた男達と、黒い帽子を被った男達が(たむろ)っている。ここは奴らの仕事場なのだろうか。


 俺は構わず男達のほうへと歩き出す。

 ローブの旗めく音に、男達が視線を向けた。


「何だお前は、奇妙な格好しやがって」

「おい、あれを見ろよ――」

「なんてこった……ウソだろ」


 あれとか嘘とは何のことだ、俺のローブがそんなに珍しいのか?


「リュカちん、ラパはあいつらを知ってるのだ!」


「あっ」と思わず声が出る――


「お、おい! ぬいぐるみが喋ったぞ!」

「こ、これはかなり貴重なアイテムだ!」

「いったいどこから……」


 なるほど、お目当てはラパか。しかし――


「ハァ、何で出てきたのかな、ラパくん」

「ん? だって何も言われてないのだ」

「そうだね、でも常識的にムリがあるよね?」

「えー、知らなーい」


 そうだった、こいつは単細胞だった。しかしこの男達はラパをぬいぐるみだと思っている、当然といえば当然か。


「おい貴様、そのぬいぐるみを渡せ!」


 さてどうするか――


「嫌だ、と言ったら?」


 男達がじりじりと(にじ)り寄る、そして(ふところ)から銃を取り出し薄ら笑いで言う。


「ヘヘッ、まあいいさ。ところで、その腰にぶら下げてんのは本物か?」


 ぶら下げる? ああ、ソードのことか、ぬいぐるみとソードの関係性がいまいちわからないが、この国は何でもアリか?


「ソードのことか? もちろん本物だが、貴様らにくれてやるつもりはない」


 言うや否や、どこからともなく湧いて出てきた男達が、俺をぐるりと囲んだ。


「おい、剣と人形を置いて消えな、でなきゃ半殺しにして奪うまでだ。さあどうするよ、ナイト気取りのお忍び野郎が」


 ほう、上手いことをいう。だが俺に脅しは効かないのだ。


「フッ、奪えるものなら奪ってみろ」


 言った途端、男達の銃から一斉に火花が散る――


 《亡霊(ファントム)


 俺は瞬時に姿を消す。顔や頭、体を通過し、パラパラと銃弾が足元に転がる――


「お、おい、あいつ、何で平気なんだ……」

「い、いや、一瞬、消えたような……錯覚か?」

 

 男達からしたらイリュージョン的な現象。と、(ひる)んだ(すき)に剣を抜き、大きく一歩足を踏み出し閃光のごとく剣を振るう。男達は血飛沫(ちしぶき)と共に息絶えた。


「あ、話を聞く前に殺してしまったぞ……」

「ラパが許す!」

「あ、ラパくん、無事でなにより」

「ローブ様々なのだ! ワッハッハー!」


 いい機会だ、ラパにタイミングと危機感と、自分の身は自分で守ることを覚えさせよう――

 

 そうこうしていると、男達の体から黒い塊が浮かび上がり、砂のようにサラサラと崩れ落ちた。するとあろうことか、死体から黒いキノコが生えた。

 まるで樹海を思わす光景に、これは何の冗談かと顔を(しか)めていると、ラパがフードから飛び出しキノコを指差す。


「これは〈邪素〉キノコなのだ。ラパは食べれない、でもリュカちんは食べれる」


 何の説明にもなっていないが、おそらく、妖精には毒で、俺には何らかの効果があるから食べろと言いたいのだろう。

 なので俺は冷ややかに尋ねる。

 

「ふ〜ん、で、邪素ってなに?」

「ん? 邪素は魔素で魔力の源なのだー!」


 こいつ、説明する気ないだろ……。

 多分、邪素は毒だが毒耐性のある俺が食べると、魔素に変化して魔力の源になるのではないか。

 なるほど、裁判神が毒耐性と言った意味はこれか。確か、昔は魔術を使う術師がいたと、裁判神の従者から聞いたことがある。

 まあ、俺という亡霊(ファントム)が存在するんだ、魔力が存在しても不思議ではない、でいいのだろうか――


 この際だ、ラパに魔力について聞いてみよう。と思っていたら、どこで拾ってきたのか、木の枝で大量の黒キノコを串刺しにして俺に差し出す。


「リュカちん、さあ食べるのだ。そんでもって死神ちんより強くなるのだ、魔法バシバシなのだ!」

 

 ここでマスターを出してくる意味がわからない。黒キノコを食えば魔法バシバシで強くなる?

 いやいやちょっと待てよ、俺はマスターより強くなろうとは思わないし、なりたくもない。

 俺はマスターをこよなく愛する崇拝者の下僕でいたいのだ。


「ちょっとラパくん、俺はマスターより強くなりたくないの、わかる?」

「あのね、死神ちんは神聖魔法を使う、でもリュカちんは魔法が使えないから一緒に戦えないのだ」

「ん? じゃあ、黒キノコを食べると俺に魔力の源が備わって魔法が使えるようになるってこと?」

「そうなのだ、一度食べれば魔力の源は消えることはないのだ。沢山食べれば源も大きいのだ」


 ということは、俺に魔法が使えたら今回の仕事にも同行してくれた? そういうこと?

 ならそう言ってくれたらいいのに……だったらこんなおいしい話を逃すわけにはいかない――よし。

 

「えっと、そのおいしい話を詳しく教えて?」

「ムフフ、おいしいキノコを召し上がれ?」


 聞いた俺がバカだった……いや、ここは甘んじて受け入れようじゃないか。

 マスターのためならグロテスクな毒キノコもなんのその!


 

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