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転生皇女セラフィナ  作者: 秋月真鳥
三章 セラフィナの婚約

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19.初めての性教育

 婚約式を終えてから初めてバロワン先生の授業を受けるとき、バロワン先生はいつも厳格な表情だが、いつもに増して厳しい表情をしていた。それでも授業の内容はわたくしにとっては楽しいものであるし、バロワン先生を怖いと思ったことがないのでそれほど緊張はしていなかった。


「セラフィナ殿下、御婚約おめでとうございます」

「ありがとうございます」


 まずはお祝いを言ってくれるバロワン先生にお礼を返す。

 それからが本題だった。


「本来ならばもっと年齢が高くなってから行うべき授業なのかもしれませんが、セラフィナ殿下は御婚約をされました。わたくしが必要と考えましたので、これから大事な授業をさせていただきます」

「はい」

「分からないところがあれば質問をしてください。今は答えられないところがあるかもしれませんが、それはご了承ください」

「はい」


 どんな授業がされるのだろうかとドキドキしていると、バロワン先生がノートにひとの姿に模した絵を描いた。


「セラフィナ殿下は女性です。女性にとっては大事な場所があります。それは普段下着に隠されている場所です」


 あ、これは性教育ではないのだろうか。

 わたくしは前世では平民の通う学校で簡単な性教育は受けていたが、はっきりとした核心的なことは習っていなかった。男女に分かれた授業で、結婚すると男性と同じベッドで眠るので、男性の言う通りにするようにということ以外は、毎月来る月経のことなどを教えられただけだった。


「特に重要なのは胸やお尻、足の間などです。その他に、口や顔も大事です。本来ならばどの場所も大事で、セラフィナ殿下が許す相手にしか触らせてはならないのです」


 学校での性教育よりも、バロワン先生の性教育の方が詳しそうだ。

 わたくしは聞きながら頷く。

 お尻と言われたときに、前世でわたくしのお尻を触ってきた貴族がいたことを思い出し、ちょっと自分のお尻に触ってしまったが、それをバロワン先生は見逃さなかった。


「セラフィナ殿下の大事な場所に触れた相手がいましたか?」

「い、いえ! わたくし、オムツを替えてもらっていた時期はマティルダさんにそういう場所をたくさん触られていたし、今も、お風呂の手伝いをしてもらうときに触られているなと思っただけです」

「乳母は愛情をもって触れるので問題はないでしょう。セラフィナ殿下も嫌な感じはしなかったのでしょう?」

「はい。とても助かっています」


 どうやら誤魔化せたようだが、バロワン先生は厳しい顔つきで続きを言った。


「家族や婚約者であろうとも、セラフィナ殿下が触れられたくないと思う場合には、拒んでもいいのです」

「え!? 家族や婚約者でも?」

「そうです。古い教育では、女性は男性の言うなりになるべきだと教えていました。今はそんな時代ではないのです。女性も自分の意志で自分に触れさせる相手を選び、自分の意志に背くものは拒んでも構わない。それが今の時代なのです」


 平民の通っていた学校とは全く違う性教育にわたくしは驚いてしまう。

 触れさせたくなければ触れさせなくていい。

 拒んでもいいのだとか、わたくしは習わなかった。


 ベルトラン公爵家のメイドだったころに、わたくしのお尻を何度も撫でて触ってきた貴族がいた。ルナール男爵家にいたころに、わたくしに触れてこようとする男性の使用人がいた。

 ものすごく嫌だったが、触らせないと殴られたり、食事を抜かれたりすることを思うと、わたくしは拒めなかった。


 今のわたくしは皇女である。

 アルベルト様は従兄弟だが、わたくしの方が身分は高い。わたくしよりも身分が高いのは、皇帝であるお父様と、皇后であるお母様と、皇太子であるラファエルお兄様くらいなのではないだろうか。


「わたくしは、嫌なことは拒めるかもしれません。皇女ですから。平民や身分の低い方はどうなのでしょう」


 わたくしが問いかけると、バロワン先生は細い眉をきりりと吊り上げる。


「今は拒めないかもしれません。ですが、皇女であるセラフィナ殿下が声を上げていくことで、女性が発言しやすい社会が出来上がるのです。どうか、セラフィナ殿下は自分に理不尽なことが起きそうになったら声を上げてください。護衛の兵士に助けを求め、ご家族に理解を求めてください。それが上に立つものの使命なのです」


 わたくしが声を上げることで、身分の低いものや平民も声を上げやすくなってくる。それを聞けば、わたくしは自分に触れられたくないときには拒むことをしっかりと覚えなければいけないと思っていた。


 バロワン先生の授業を受けてから、わたくしの意識が少し変わった気がする。

 わたくしは小さいので抱き上げてくれる相手がたくさんいるが、自分でその相手に抱き上げられるのが嫌か、嫌でないかを考えるようになった。


 お父様は当然嫌ではない。抱っこされると嬉しいし、幸せだ。お母様も、ラファエルお兄様も抱き締められると嬉しい。

 アルベルト様も抱っこしてくださるととても嬉しい。


 嫌な相手は今のところいないという結論になったが、今後出て来た場合には、きちんと拒もうと心に決めていた。


 クラリッサのころは拒むだなんて考えたこともなかった。

 拒んでも暴力を振るわれるか、罰を与えられるかしかなかったのだ。


 わたくしは五歳で幼くか弱いが、クラリッサとは違う。

 わたくしはこの国の皇女なのだ。


「セラフィナ、最近、抱っこしようとすると少し躊躇うようになったね」


 ラファエルお兄様にはわたくしの変化が感じ取れているようだった。


「わたくし、考えるようになったのです。触れられてわたくしが本当に嫌ではないかどうか」

「わたしに抱っこされるのは嫌?」

「いいえ、嬉しいです。お兄様、大好きです」


 素直に答えると、わたくしはぎゅっと抱き締められる。ラファエルお兄様に抱っこされるのも、抱き締められるのも幸せだった。


「にぃに、みーも、らっこ」

「ミカエル、おいで」


 ラファエルお兄様がわたくしを降ろしてミカを抱っこする。

 いつかミカもわたくしのように教育を受けるのだろうか。男性には男性のための教育があるのかもしれない。

 わたくしにはあまりよく分からないが、男性と女性には違いがあるので、性教育も違いがあるのだろう。

 わたくしが平民の学校で受けた性教育は、あまりにもお粗末なもので、詳しいことはよく分かっていなかったが、しかるべき年齢になったら、わたくしにも詳しいことを教えてくれるに違いない。五歳のわたくしにすら、バロワン先生は女性にとって大事な場所を教え、そこには自分が許した相手以外は触れさせてはいけないと教えてくれたのだ。


 前世では十五歳まで生きた記憶があるわたくしでも、恋愛には全く縁がなかったし、性教育も平民の学校で、「男性の言う通りにする」などという大雑把なことしか教えてもらえなかった。

 今世では皇女として性教育が行われるのだろうが、それに関して、わたくしはバロワン先生ならばわたくしにも分かりやすく、女性としてどうすればいいのかもしっかりと教えてくれるような気がする。


 バロワン先生は言っていた。


「前皇帝陛下の御代では、女性は男性に隷属するものという感覚が強かったのです。それを変えられたのは今の皇帝陛下でした。前皇帝陛下は妃殿下しか持たなかったのに対して、今の皇帝陛下は、女性も平等だと皇后陛下の地位を与えました。皇帝陛下に万が一のことがあった場合には皇后陛下が皇太子殿下の成人までは支えるという法律を作ったのも皇帝陛下です」


 お父様の努力があってこそ、この国での女性の権利が見直されつつある。

 それをお父様の娘であるわたくしが実行しないわけにはいかない。


「ミカエルはかわいいね」

「みー、にぃに、だいすち!」


 愛し気にミカのつむじにキスをしているラファエルお兄様を見ながら、愛情と信頼があってこそこういう関係が築かれるのだとわたくしは実感していた。

読んでいただきありがとうございました。

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