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転生皇女セラフィナ  作者: 秋月真鳥
三章 セラフィナの婚約

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18.セラフィナとアルベルトの婚約式

 春になって、ラファエルお兄様とアルベルト様の合同誕生会の日が来た。

 その日にわたくしはアルベルト様と婚約式を挙げる。

 わたくしが五歳という異例の幼さなのだが、皇族ではこういうこともかつてはあったようなので、それほど問題はないようだった。


 婚約式の朝、朝食を食べてわたくしは自分の部屋で準備をしていた。マティルダさんが最後の調整をしてくれる。

 ドレスが仕上がってからわたくしはそれほど成長していないし、ドレスもある程度余裕をもって誂えてあったので、サイズは問題なかった。花冠もわたくしの頭にぴったりになるように調整する。

 小ぶりの白薔薇の造花で作られた花冠は可憐で、わたくしの髪の色にもよく合っている気がした。


 ドレスは襟ぐりが開きすぎない形で、胸の位置で切り替えがあって、スカートはふんわりと足元まで広がっている。純白の生地に銀糸で刺繍が施してあって、とても豪華だった。

 それに白いよく磨かれた革靴を合わせて、わたくしの準備が整うと、お父様とお母様とラファエルお兄様が迎えに来てくれた。


「今日の段取りは頭に入っているかな?」

「はい。お父様とお母様が壇上に立っていて、お兄様にエスコートされて、アルベルトお兄様のところまで行きます。アルベルトお兄様のところに行ったら、アルベルトお兄様にエスコートしていただいて、お父様とお母様の前まで歩いていきます」

「誓いの言葉は間違えても平気ですからね。アルベルト殿の真似をすればいいですから」

「はい。できるだけ間違えないように気を付けます」


 お父様とお母様に答えていると、お父様が額に手をやって沈痛な面持ちになる。


「わたしがエスコートしたかった……。どうして、わたしは皇帝なのだ」

「ヘリオドール様、我が儘を仰らないでください」

「かわいい娘の晴れの舞台でエスコートできないなんて」


 お父様には皇帝として婚約を承認する仕事があるので、わたくしはラファエルお兄様にエスコートしてもらってアルベルト様のところまで行くことに決まっていた。それをまだお父様は悔しがっているのだ。

 ラファエルお兄様を見上げると、手を差し出してくる。


「会場までもエスコートさせてくれる?」

「ラファエル、それはわたしに譲りなさい。ラファエルはミカエルを抱っこして」

「分かりましたよ、父上」


 会場まではお父様がわたくしをエスコートしてくれることになった。

 お父様はしばらくわたくしの手を引いていたが、我慢できなくなったようで、わたくしを抱き上げて大広間まで行った。大広間の入り口で、ラファエルお兄様はミカをオレリアさんに預けて、お父様はわたくしをラファエルお兄様に託す。


「頼んだよ、ラファエル」

「はい、父上」


 大広間の扉が開いて、お父様とお母様が中央に敷かれた絨毯の上を玉座のある壇上まで歩いて行った。

 遅れてラファエルお兄様がわたくしの手を取って歩き出す。


「セラフィナ、とてもかわいいよ。この手を離したくない」

「婚約してもわたくしはお兄様の妹です」

「そうだね。セラフィナは一生わたしの妹だ」


 アルベルト様の待っている場所まで着くと、ラファエルお兄様はわたくしをアルベルト様に託した。アルベルト様がわたくしに手を差し出して、その手の上にわたくしは手を乗せる。


「セラフィナ、本当にいいの?」

「アルベルトお兄様?」

「わたしは十歳も年上だし、セラフィナのことはかわいいと思っているけれど、これが恋愛感情なのかは分からない」

「それはわたくしも同じです。恋愛はまだ難しくて分かりません。でも、アルベルトお兄様とずっと一緒にいられたら幸せだと思う気持ちはあります」

「わたしもセラフィナとずっと一緒にいたいと思っている」


 小声で囁きかわし、わたくしとアルベルト様はお父様とお母様の前に出た。

 お父様が玉座から立ち上がり、わたくしとアルベルト様に問いかける。


「アルベルト・ベルンハルト、そなたは我が娘、セラフィナと婚約を結び、セラフィナの成人の暁には結婚すると誓うか?」

「わたし、アルベルト・ベルンハルトは、セラフィナ殿下と婚約し、セラフィナ殿下を誰よりも幸せな花嫁とすることを誓います」


 凛々しいアルベルト様の誓いに、参列している貴族たちから拍手が上がる。


「我が愛しい娘、セラフィナ・アストリアノス、そなたは、アルベルトと婚約を結び、成人の暁には結婚すると誓うか?」

「わたくし、セラフィナ・アストリアノスはアルベルト様と婚約し、十八歳になって成人したときには結婚することを誓います」


 アルベルト様のように上手には言えなかったが精一杯の気持ちを伝えると、お父様が重々しく頷く。


「婚約誓約書にサインを」


 アルベルト様がサインをした後で、わたくしを抱っこしてサインをする台に届くようにしてくれる。わたくしも震える手で「セラフィナ・アストリアノス」とサインをした。その横には「アルベルト・ベルンハルト」とサインがしてある。


 これでわたくしとアルベルト様の婚約は成立した。


 婚約式の後はお茶会が開かれた。

 お茶会の席はわたくしはアルベルト様の隣で、お父様とお母様とラファエルお兄様と同じテーブルだった。ベルンハルト公爵家の叔父様と叔母様が別のテーブルなので、今日だけは特別なのだろう。ミカも同じテーブルで、さっそくお茶菓子をほしがっている。


「ミカ、今日はわたくしの婚約式だったのですよ」

「こんにゃくちき?」

「将来アルベルト様と結婚すると誓う式です」

「けこん?」

「結婚とは男女が生涯一緒にいる約束です」

「みー、ねぇねとけこんちる」

「ミカはわたくしとは結婚できません」


 無邪気なミカの言葉に癒されながらお茶を飲んでいると、お父様の視線が厳しくなった気がする。気が付けば異国の衣装をまとった男性がお父様のところに挨拶に来ていた。


「この度はセラフィナ殿下の御婚約おめでとうございます。以前はわたしの国の使者が大変失礼を致しました」

「あの使者が単独でやったことだと言い張っているようなので、あのときは大目に見たが次はないからな」

「分かっております」


 男性はカラステア王国の王族のようだった。ちらりとわたくしを見る目が鋭い気がする。

 わたくしがアルベルト様を見れば、アルベルト様が笑顔で対応してくれる。


「わたしたちの婚約式においでくださってありがとうございます。セラフィナ殿下と婚約することができて本当に幸せです」


 どこか威圧感のある笑顔を浮かべているアルベルト様に、カラステア王国の王族は気圧されている気がした。

 その後でストラレイン王国の王族も来たが、当たり障りのないお祝いの言葉を述べて行っただけだった。


 前世では大人の悪意には慣れ切っていたが、今世では大人の悪意にそれほど触れたことがなかったので動揺するわたくしを、アルベルト様は守ってくれていた。


 婚約式が終わって、ラファエルお兄様とアルベルト様の合同誕生日のお茶会に場が変わると、ラファエルお兄様とアルベルト様にお祝いに来る貴族がたくさんいた。アルベルト様は特に今日婚約を発表したので、お祝いに来る貴族が列を作っていた。

 それにもアルベルト様は穏やかに対応していた。


 両親の愛情が分からずに泣いていた七歳のアルベルト様はもういない。

 ここにいるのは十五歳で自信に満ち溢れたアルベルト様だけだった。

 それが寂しいような、頼もしいような、わたくしは複雑な気持ちになっていた。


 婚約が成立してからも、わたくしの暮らしにはそれほど変化はなかった。

 アルベルト様が以前に増して宮殿に顔を出すようになったくらいだった。


「アルベルトお兄様、お兄様、これ、お誕生日のプレゼントです」


 当日は婚約式もあったのでとても渡せなかった花束を渡すと、アルベルト様もラファエルお兄様もとても喜んでくれた。アルベルト様にはパンジー、ラファエルお兄様にはスミレの花束を用意していた。

 今年は自分で庭から摘める花で花束を作ったのだ。


「ありがとう、セラフィナ」

「大事に飾るよ」


 アルベルト様もラファエルお兄様も喜んでくれて、わたくしは二人の誕生日を祝うことができて嬉しかった。

読んでいただきありがとうございました。

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