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転生皇女セラフィナ  作者: 秋月真鳥
三章 セラフィナの婚約

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14.新年のパーティーで婚約発表

 婚約の話は、あっさり決まってしまった。

 お父様とお母様とベルンハルト公爵家の叔父様と叔母様でよく話し合った結果なのだろうが、新年のパーティーの数日前には決まってしまって、わたくしは焦っていた。


 わたくしは今、お母様と一緒にドレスを選んでいる。

 婚約式はまだ先になるのだが、新年のパーティーでわたくしとアルベルト様の婚約が発表されるのだ。

 婚約式はもう少し後なのだが、新年のパーティーにはストラレイン王国とカラステア王国の王族も参加するということなので、牽制のためにわたくしとアルベルト様の婚約が決まったことを宣言するというのだ。


「セラフィナには伝えていませんでしたが、ストラレイン王国のセラフィナの婚約者候補の王族はセラフィナよりも二十歳は年上で……」

「えぇ!? わたくし、それはさすがに嫌です!」

「カラステア王国の婚約者候補は、生まれたばかりで性格も分からないような状態で……」

「それもちょっと……」


 二十歳以上年上の相手と結婚するのはさすがに嫌だったし、生まれたばかりで性格が分からない相手との結婚も考えにくい。


「アルベルト殿なら、セラフィナのことを大事にしてくれていますし、婚約なので、セラフィナが大きくなってどうしても違う相手と結婚したい場合には解消することもできます」

「アルベルトお兄様は?」

「アルベルト殿は……自分を庇ったメイドが亡くなってから結婚をしないと決めていたようです。セラフィナならばと思ってくれたので、セラフィナに対する気持ちはあると思うのですが、セラフィナとの婚約が解消になれば、もう結婚はしないかもしれませんね」


 そうか。

 わたくしは婚約を解消することによって、アルベルト様に生涯結婚しないという口実を与えてしまうことになるかもしれないのか。

 恋愛感情化は分からないけれど、わたくしはアルベルト様のことが好きだし、アルベルト様のことを大事に思っているのは間違いないので、婚約を解消するつもりはなかった。

 学園に通うころになると年齢の近い男子に心惹かれることもあるのかもしれないが、今のところ、年齢の近い男子といえば、ルカ様で、あまりにも子どもっぽくて仲良くできそうにない。


 アルベルト様の琥珀色の目の色に似た薄茶色のドレスを合わせて、リボンも薄茶色のものを用意して、わたくしはお母様との打ち合わせを終えた。


「ねぇね、かーいー」

「ミカがかわいいです!」


 ドレスを試着したわたくしを褒めてくれるミカを思わず抱き締めてから、わたくしは婚約について考えていた。

 前世のわたくしは十五歳だったが、働いてその日を暮らしていくのに精いっぱいで恋愛などしたことがなかった。どんなものが恋愛感情なのかもよく理解できていない。

 アルベルト様に対する気持ちが恋愛感情なのか、それともただの兄に対するような気持なのかもよく分からない。


 皇族として生まれた以上、生涯結婚しないわけにはいかないし、政略結婚もあり得ると思っていたから、ストラレイン王国の二十歳以上年上の相手と結婚するよりも、カラステア王国の生まれたばかりの性格も分からない相手と結婚するよりも、性格が分かっていてわたくしのことをかわいがってくれるアルベルト様と結婚する方がずっといいというのは間違いなかった。


 新年のパーティーに出席するようになったわたくしを、お父様とお母様が迎えに来てくれた。

 お父様の逞しい腕に抱っこされて、わたくしは新年のパーティーに参加する。


 新年のパーティーはお茶会から始まって、晩餐会、夜会まであるのだが、わたくしはお茶会のみに参加することになっていた。


 お茶会の席にわたくしを抱っこしたお父様が入って行くと、ざわめきが起きる。

 異国の衣装をまとった男性が、わたくしの元に歩み寄ってきた。


「皇帝陛下、新年おめでとうございます。そちらはセラフィナ殿下ですね。ご挨拶をさせてください」

「必要ない」


 お父様は異国の衣装をまとった男性を、あっさりと切り捨てた。


「あれがストラレイン王国のセラフィナの婚約者候補です」

「えぇ!?」


 どう見ても成人していた男性を見て、わたくしは驚きの声を隠せなかった。

 お父様とお母様が席につき、わたくしとラファエルお兄様も同じテーブルに着く。


「新年のパーティーにお越しいただき感謝する。この度は、めでたい報告がある。ベルンハルト公爵家のアルベルトとわたしの娘、セラフィナが婚約することになった。セラフィナはまだ小さいので、婚約式はもう少し先になるが、婚約することは決定している」

「セラフィナとアルベルト殿を共に祝ってください」


 お父様とお母様の言葉に、貴族たちが驚きの声を上げる。


「セラフィナ殿下はまだ五歳ではなかったのか!?」

「アルベルト様が社交界デビューするから、それに合わせてのことでしょうか」

「皇族とはいえ、婚約がやけに早いですね」


 その驚きも当然のことだろう。

 わたくしはまだ五歳だし、アルベルト様は十五歳だ。

 十歳差のわたくしたちが急に婚約だなんて信じられないことだろう。


「ベルンハルト公爵家のアルベルトです。この度はセラフィナ殿下と婚約を結ばせていただくことになりました。セラフィナ殿下の年齢を考えて婚約式はまだ先になりますが、セラフィナ殿下と婚約できることを大変光栄に思っております」


 アルベルト様が素早く立ち上がって一礼する。

 アルベルト様の所作の美しさにわたくしが見とれていると、貴族から祝福の拍手が上がった。アルベルト様も皇弟であるベルンハルト家の叔父様の息子で皇族だし、皇族同士の婚約はやはりめでたいのだろう。


 ストラレイン王国の男性が悔しそうな顔をしているのが見えたが、あの方が婚約したいのは皇女であって、わたくしでなくてもいいのだ。セレスティア帝国の皇女であればわたくしでなくても誰でもいいだなんて思うと、絶対に婚約したくない。


「晩餐会の後の夜会には出られないのでしょう?」

「はい、眠くなってしまうので」

「それでは、セラフィナ殿下が十五歳になって社交界デビューしたら、ファーストダンスをわたしと踊ると約束してください」

「はい、アルベルト様」


 アルベルト様がわたくしの席まで来て、わたくしに申し込む。了承すると、アルベルト様はわたくしの手を取って、小さな手の甲にキスをした。

 その仕草が格好良すぎてわたくしは顔が熱くなってしまう。


「セラフィナ殿下の愛らしいこと」

「皇后陛下そっくりですね。将来はものすごい美女になられることでしょう」

「アルベルト様も心配ですね」


 わたくしに関して好意的な話が出ているようでわたくしはほっと胸を撫で下ろしていた。


 お茶会が終わるとわたくしは皇帝一家の暮らす棟に戻った。

 お茶会から晩餐会までの間には時間があって、お父様とお母様とラファエルお兄様も着替えをするので、わたくしをついでに送って行ってくれた。


 部屋に戻ってドレスからワンピースに着替えると、お父様とお母様とラファエルお兄様が部屋に顔を出してくれた。


「これでストラレイン王国の王族も諦めてくれるだろう」

「カラステア王国にも話はすぐに広がるでしょう」

「セラフィナ、おめでとう」


 安堵しているお父様とお母様に、わたくしも安堵しつつ、ラファエルお兄様の祝福の言葉を受け止める。


「ありがとうございます。婚約式はいつごろになりますか?」

「ベルンハルト公爵家と話し合って決めよう」

「セラフィナが嫁いでしまう日が来るのを考えるだけで寂しくなりますが、ベルンハルト公爵家ならば安心ですね」

「セラフィナが婚約を解消したくなったらアルベルトのことは考えなくていいから、いつでも言うんだよ。あ、でも、ストラレイン王国やカラステア王国には行ってほしくないな」

「それは、大丈夫だと思います」


 恋愛感情がよく分からないわたくしだが、アルベルト様がわたくしのことを大事にしてくれているのはよく分かっている。アルベルト様がキスをしてくれた手の甲がじんじんと甘く痺れるような気がして、わたくしはもう片方の手で手の甲を押さえてしまう。


「アルベルトは、本気だと思う」


 ぽつりと零されたラファエルお兄様の言葉に、わたくしはどきりとする。


「結婚も婚約もしないと言っていたアルベルトが心動かされたんだ。セラフィナは特別だと思う。セラフィナと婚約を解消したら、アルベルトはそれこそ、生涯結婚しないだろう」

「ラファエル、そんなことを言ってセラフィナを追い詰めるものではないよ」

「セラフィナは自分の心に正直に生きてくださいね」


 お父様とお母様がそう言ってくれていても、わたくしはラファエルお兄様の言葉が深く胸に刺さった気がした。

 アルベルト様はわたくしと婚約を解消したら生涯結婚はしない。


 逆に考えれば、わたくしとならば結婚して生涯幸せに暮らせるのではないだろうか。


 死んでしまったクラリッサのことを忘れられなくてもいい。

 その上で、わたくしとの新しい未来を考えてほしい。


 わたくしはアルベルト様との未来を考え始めていた。

読んでいただきありがとうございました。

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