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転生皇女セラフィナ  作者: 秋月真鳥
三章 セラフィナの婚約

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3.アカデミーのことを知る

 わたくしの授業のカリキュラムはお父様とお母様に報告されて管理されているようだった。

 夕食の席でお父様とお母様がわたくしに問いかけた。


「セラフィナは司法制度に興味があるのかな?」

「もう司法や政治のことも知りたくなったのですか?」


 司法制度や政治のことに関しては、どうして知りたくなったかを問われたらどう答えようかは考えていた。


「わるいことをしたひとが、どうなるのかしりたいのです」

「それでバロワンが司法制度や政治についても少しずつ教えたいと言ってきたのか」

「怖い話になりませんか? 刑罰の話になるとセラフィナには難しいのでは?」

「できるだけ残酷な話は遠ざけるように伝えておくか」


 お父様とお母様の教育方針なので仕方がないが、刑罰の詳しいところは教えてもらえないかもしれない。ルナール男爵家がどうなるかを知りたいのだが、それは難しいかもしれない。

 わたくしの計画は、バロワン先生にいい時期に質問をして、例としてルナール男爵家の情報が入らないかと思っていたのだ。

 アルベルト様を暗殺しようとしたルナール男爵家。誰から依頼されていたか分からないけれど、その情報も警察が調べていくだろう。そのうちに真相に辿り着くかもしれないが、わたくしは四歳なので何もできない。


 前世の両親に接触を図っていた貴族がいないか思い出してみるのだが、記憶が曖昧でよく思い出せない。なにより、前世のわたくしを両親は人前にほとんど出さなかったから、接触があったのかすらもよく分からない。


 本当に役に立たないと思いながらも、警察の調べでそれが分かっていくのならば、アルベルト様も救われる日が来るのではないかと思っていた。


 学園の冬休みが終わって、ラファエルお兄様がまた学園に通い出すと、わたくしは少しだけ寂しくなる。学園は昔は全寮制だったそうだが、今は警護やトラブル回避のために帝都にタウンハウスのある貴族や帝都に住んでいる貴族や皇族は、そこから通っていいということになっている。

 ラファエルお兄様が寮に入ってしまったら寂しくて耐えられなかっただろうから毎日帰ってきてくれてよかったと思っていた。


「ねぇね、あい」


 ずりずりと積み木の大きな箱を引きずってミカがわたくしの前に持ってくる。今日は積み木で遊んでほしい気分のようだ。

 わたくしが積み木を高く積み上げると、ミカは目を煌めかせてわたくしを見る。


「どーん? どーん?」

「くずしていいですよ」

「どーん!」


 声を上げて積み上げた積み木を崩して、ミカが笑い転げている。

 平和な光景。

 この光景にわたくしは前世のことを思って涙が出そうだった。


 前世のわたくしは両親にも疎まれて、愛されずに、使用人同然の暮らしをしていた。こんな風に遊んだことはないし、遊んであげる相手もいなかった。

 学校に通い出しても友達を作ることは許されなかった。学校が終わるとすぐに家に帰って使用人の仕事をしなければいけなかった。


 遊ぶということが楽しく、心を豊かにするのだと知ったのは、今世になってからだ。

 家族にも恵まれた。

 堂々として落ち着いたお父様と、優しいお母様、大好きなラファエルお兄様、かわいいミカ。もうこの家族なしでは生きてはいけないとわたくしは思っていた。


 季節は移り変わる。

 外の雪は溶けて、エリカも外で元気いっぱいに走れるようになった。寒い日もなくなって、暖炉に火を灯さなくてもよくなった。

 わたくしはミカの手を引いてお散歩に出かけ、その後でミカが午前食を食べて少し眠っている間にバロワン先生の授業を受けて、昼食を食べ、午後も週に三回になったバロワン先生の授業を受けるようになった。


 バロワン先生は司法制度について教えてくれた。


「この国の司法は、法律を学んだ法律家より選ばれた裁判官によって裁かれます。司法は独立しており、立法機関……法律を作る場所ですね、そことは関係しないようになっています」

「しほう……バロワンせんせい、しほうとりっぽうのつづりをおしえてください」

「司法とはこう書きます。立法はこうです」


 バロワン先生に習ってわたくしはノートを取る。

 独立した司法機関は立法機関の影響を受けることはない。

 立法機関は国民に選ばれた国民議会であり、その承認をするのが皇帝であるお父様だった。


「ほうりつかには、どうすればなれますか?」

「法律家や医者や政治家、軍人の高官など、専門家には、アカデミーでの勉強が課せられます」

「アカデミー……」

「学園を卒業した後や、士官学校を卒業した後、また平民がある程度の学業成績を修めた後に進学できる学校です」


 わたくしはアカデミーなどというものがあるとは知らなかった。

 平民は六歳から十二歳まで学校に通って、成績のいいものだけが貴族の通う学園に奨学生として入学できて、それ以外はそのまま働く。

 貴族は十二歳まで家庭教師について学び、その後学園に入学して十八歳までの六年間学ぶ。

 学業はそれでおしまいだと思っていた。


「おとうさまは、アカデミーにいったのですか?」

「皇帝陛下はアカデミー進学を望んでいたのですが、前皇帝陛下が皇帝の座を早く譲って隠居なさりたかったので、アカデミーに進学することは叶いませんでした」

「おにいさまはアカデミーにしんがくするのですか?」

「ラファエル殿下が進学なさりたいと仰ったら、皇帝陛下がお許しになるかもしれません」


 お父様はアカデミー進学を望んでいた。

 それは叶わなかったようだが、ラファエルお兄様はアカデミーに進学されるかもしれない。

 わたくしはラファエルお兄様に聞いてみようと思っていた。


 ラファエルお兄様が学園から帰ってきたのと一緒に、アルベルト様も来られたと聞いて、わたくしはいそいそと階段を登り、ラファエルお兄様の部屋に向かっていた。前は抱っこでないと階段が登れなかったが今は何とか自分で登ることができるようになっている。

 エリカがわたくしに寄り添って、わたくしが落ちないように支えてくれる。


 ラファエルお兄様の部屋の前の廊下で、わたくしはぴたりと足を止めた。

 部屋の中から声が聞こえてくる。


「では、セルフィナ伯爵が関わっていたということか?」

「その可能性は高いと警察は言っています。セルフィナ伯爵家の名前が書かれた手紙がルナール男爵家に残されていました」

「手紙を処分しなかったのか」

「手紙には読んだ後は処分するように書かれていましたが、処分しては証拠が残らないから、後々脅せないと思っていたのではないですかね」


 ルナール男爵家にアルベルト様の暗殺か誘拐を頼んだのはセルフィナ伯爵家!?

 わたくしはセルフィナ伯爵家を覚えていた。

 わたくしが二歳のころにわたくしを抱っこして、わたくしに「ブス」と言った挙句わたくしを落としたヴァレリア嬢の実家ではなかっただろうか。


「セルフィナ伯爵家はベルンハルト公爵家の遠縁にあたります。わたしを始末した後で、自分の息子を養子にしようとしていたのではないでしょうか」


 恐ろしい計画を聞いて立ち竦むわたくしに、後ろから追いかけてきていたマティルダさんが声をかける。


「セラフィナ殿下、どうなさいましたか? ラファエル殿下のお部屋はここであっていますよ」

「わ、わたくし、まいごになってしまったかとおもったのです。おにいさまー!」


 マティルダさんに変に思われないように言い訳をしてラファエルお兄様の部屋のドアをノックすると、ラファエルお兄様がすぐにドアを開けてくれた。


「いらっしゃい、セラフィナ。わたしの部屋まで来てくれて嬉しいな」

「今日もかわいいリボンですね、セラフィナ」


 話題を変えて柔和に微笑むラファエルお兄様とアルベルト様に、わたくしは聞いていたことを悟らせないように笑顔で対応する。


「おにいさま、アルベルトおにいさま、きょうはききたいことがあるのです」

「なにかな、セラフィナ?」

「教えてください」

「バロワンせんせいにアカデミーというべんきょうできるばしょがあるとおしえてもらったのです。おにいさまとアルベルトおにいさまは、アカデミーにしんがくするのですか?」


 話題を変えると、ラファエルお兄様がアルベルト様を見つめて小さく頷く。

 アルベルト様もさっきの話題を封印することに了承したように頷き返した。


「もうアカデミーのことを教えてもらったのだね。わたしがアカデミーに行きたいと思っているんだ。政治学を勉強したくてね」

「わたしもアカデミー進学は考えています。両親も健在ですし、学べるだけ学んで、ベルンハルト公爵となり国を支えたいと思っています」


 ラファエルお兄様もアルベルト様もアカデミー進学は視野に入れているようだった。

 ルナール男爵家のことはこれ以上聞けないが、アカデミー進学の話はまだまだ聞けそうだった。


読んでいただきありがとうございました。

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