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転生皇女セラフィナ  作者: 秋月真鳥
二章 ミカエル誕生

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26.セラフィナ、四歳の誕生日

 わたくしの四歳の誕生日の朝は、小雨が降っていた。

 お散歩に行けないエリカとミカはつまらなそうだったが、朝食後にエリカをたくさん撫でてあげてから、ミカに絵本を読んであげると、エリカもミカも満足そうにしていた。


 昼食の後でお昼寝をして、起きたらわたくしとミカは急いで準備をした。

 わたくしは菫色のドレスを着て、ミカは白いシャツに臙脂色のベストとズボンを身に付けた。髪の毛は前髪を斜めの細い編み込みにして、横と後ろの髪は三つ編みにしてもらった。


 お父様とお母様が迎えに来て、わたくしはお父様に抱っこされて、ミカはお母様に抱っこされてお茶会の開かれるティールームに移動する。

 皇帝一家の暮らす棟のティールームではなく、大広間などがある棟のティールームなのでそれなりの広さがある。

 アルマンドール公爵家のご一家と、ベルンハルト公爵家のご一家と、ルクレール公爵家のご一家が揃っていた。

 ティールームに入ってきたわたくしに、お祝いの言葉がかけられる。


「セラフィナ殿下、お誕生日おめでとうございます」

「四歳になられましたね。おめでとうございます」


 アンリエットお義姉様とニコ様からのお祝いに、わたくしがお父様の腕から降ろしてもらうと、駆け寄ってきたリヴィア嬢にぎゅっとハグされた。


「セラフィナでんか、おめでとうございます!」

「ありがとうございます」


 リヴィア嬢を抱き締め返して、わたくしはお礼を言った。

 アルベルト様が微笑みながらわたくしとリヴィア嬢を見下ろしている。


「セラフィナ殿下、もう四歳になられたのですね。セラフィナ殿下が生まれてラファエル殿下がとても喜んでいたのをよく覚えています。生まれて少しのころに会わせてもらったことも。あんなに小さかったのにこんなに大きくなられて、わたしに妹がいたらこんなにかわいかったのだろうなと思っています」

「ありがとうございます、アルベルトさま」


 リヴィア嬢から離れてアルベルト様に挨拶をすると、ユリウス様とルカ様も近付いてくる。


「セラフィナ殿下、おめでとうございます」

「よっつ! おなじとしだな!」


 ユリウス様はお祝いを口にしているが、ルカ様は自分の指を四本立てて、誇らしげに宣言している。


「ありがとうございます、ユリウスさま。ルカさま、おなじとしですね」


 わたくしが答えると、ルカ様はわたくしの三つ編みが気になったようだ。ドレスと同じ菫色のリボンで結んでいる三つ編みに手を伸ばして引っ張った。


「きゃー!?」

「ルカ! ダメだよ!」


 素早くユリウス様が止めてくれたが、わたくしの髪は解けてしまった。


「申し訳ありません、セラフィナ殿下。ルカも謝って」

「えー! なんで?」

「女の子の髪を引っ張るようなことをしてはいけないよ!」

「はぁい。ごめんなさい」


 不承不承謝るルカ様に、ルクレール公爵家の伯父様と伯母様が口々に「申し訳ありません」と謝っている。

 解けたリボンと髪は、すぐにお母様が結び直してくれた。


「カスパール、ルカにはそろそろ教育を受けさせた方がいいのではないか?」

「そう思っておりますが、ルカはまだ四歳ですので」

「兄上、セラフィナは家庭教師をつけることになっております」

「そうなのですか? それでは、ルカも家庭教師をつけることを考えなければいけませんね」


 ルクレール公爵家の伯父様はお父様とお母様から言われて、ルカ様の教育を考え始めたようだった。


「セラフィナ殿下はもう家庭教師をつけるのですか?」

「リヴィアもそろそろ家庭教師を考えなければいけませんね」


 アルマンドール公爵夫妻もわたくしに家庭教師がつくことを聞いて、リヴィア嬢の教育について考え始めたようだった。


「ラファエルは三歳で文字が読めたが、セラフィナは二歳のころから文字が読めていたようなんだ。少し早いかもしれないが、ラファエルも五歳のときには家庭教師をつけたし、セラフィナは賢いので家庭教師をつけることにした」

「もう文字は読めるので、書くのもすぐに習得するでしょう」


 お父様とお母様の言葉に、ルクレール公爵家の伯父様と伯母様が驚いている。


「セラフィナ殿下は二歳のころから文字が読めたのですか!?」

「ルカはまだ文字が読めない……そろそろ教え始めた方がよさそうですね」


 わたくしは前世の記憶があるので文字が読めただけだが、普通の子どもは四歳で文字が読めないのはおかしくはないのではないだろうか。わたくしがそう思っていると、アルマンドール公爵夫妻が口を開く。


「リヴィアは最近文字を読むことを覚えました」

「もっと色んな文字を読みたいかもしれません。教えてくれる方を探しましょう」


 リヴィア嬢も文字は読めるようだ。

 三歳から文字が読めたというラファエルお兄様のような方こそ天才であって、わたくしは前世の記憶というずるをしたにすぎない。そのうちわたくしの前世の知識を超える勉強が出てきたら、わたくしは落ちこぼれになってしまう可能性もある。

 皇女として恥じないように努力を怠らないとわたくしは誓った。


「おねえさま、ミカエルでんかにごあいさつしていい?」

「リヴィア、ミカエル殿下はセラフィナ殿下よりも小さいので、急に抱き着いたりしてはいけませんよ」

「はい」

「皇帝陛下、皇后陛下、リヴィアがミカエル殿下にご挨拶をしたいと言っております。よろしいでしょうか?」


 アンリエットお義姉様がリヴィア嬢にお願いされて、お父様とお母様にお伺いを立てる。

 お母様は抱っこしていたミカを降ろして、リヴィア嬢の方に押しやった。


「ミカエル、ラファエルの婚約者のアンリエット嬢の妹のリヴィア嬢です」

「りー!」

「ミカエルでんか、リヴィアです。ぎゅってしていいですか?」

「あい!」


 リヴィア嬢が両腕を広げているのに、ミカが躊躇いなく抱き着いていく。小さなミカを抱き締めることができてリヴィア嬢はとても嬉しそうだった。


「おねえさま、ミカエルでんか、とってもかわいい!」

「ご挨拶できてよかったですね」


 笑顔でアンリエットお義姉様を見上げるリヴィア嬢に、アンリエットお義姉様も微笑んでいる。

 全員が席について、お茶会が始まった。


 ミカはお茶菓子を小さく切ってもらって、牛乳とお茶菓子を食べさせてもらっている。

 わたくしはなんとか自分でフォークでお茶菓子を切り分けて食べることができるようになっていた。


 ルカ様もお茶菓子を前にしたら大人しく椅子に座って食べている。

 男の子はみんなルカ様のようになるのかと思っていたが、一歳の時点でミカとルカ様は全く違っているので、それぞれに個性があるのだろう。


 ミカは何歳で文字を読めるようになるのだろうか。

 わたくしはそんなことを考えながらお茶会の時間を過ごしていた。


 お茶会が終わると、雨が上がった庭にお散歩に出た。ルカ様が水たまりに飛び込もうとしているのを、ユリウス様が止めている。

 リヴィア嬢はニコ様とアンリエットお義姉様に手を繋いでもらって、水たまりを避けながら歩いている。


 わたくしが大きな水たまりの前で足を止めると、アルベルト様がわたくしを抱っこしてくれた。


「アルベルトおにいさま!」

「セラフィナ殿下の靴とドレスが汚れると大変なので、失礼しますね」

「ありがとうございます」


 四歳児のわたくしには大きな水たまりも、十四歳のアルベルト様は軽々と超えられてしまう。アルベルト様もラファエルお兄様も、とても背が高くて体が大きくて、成人男性の平均くらいはあるのではないかと思う。

 お父様もベルンハルト公爵家の叔父様も体が大きいので、皇族は背が高く、体が大きく育つのだろう。


 わたくしは将来どうなるのか考えてみて、お母様の方を見れば、ほっそりとはしているがお母様も背は高い。

 お母様に似ているので、わたくしもお母様くらいの身長になるのかもしれない。


「覚えていますか、セラフィナがわたしにタンポポをくれた日を」


 水たまりを避けてからわたくしを降ろしてくれるアルベルト様の見上げて、わたくしは「はい」と頷く。


「あのタンポポを、ドライフラワーにして、わたしは栞として取っているのですよ」

「ほんとうですか!?」

「それくらい、嬉しかったのです」


 あれはわたくしが二歳の誕生日だった。

 あのとき、アルベルト様はタンポポの花を見て、一粒、涙を流した。

 あれ以来、アルベルト様の表情が明るくなったのは間違いないので、アルベルト様も少しずつ心の傷を癒しているのだろう。

 それでもクラリッサはアルベルト様の中で大きな存在として残っている。


 アルベルト様がクラリッサの死を乗り越えられるのはいつなのか。

 クラリッサだったわたくしにもそれは分からない。

読んでいただきありがとうございました。

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