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転生皇女セラフィナ  作者: 秋月真鳥
二章 ミカエル誕生

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21.猫の名前と学園の体育祭に行く準備

 子猫の名前を報告しにアルベルト様が来てくださったのは、お茶会から一週間ほどたってからだった。

 学園が休みの日で、ラファエルお兄様も同席していた。


「子猫は雄でした。エリカはヒースともいいますので、ヒースという名前にしました」

「ヒース」


 アルベルト様の言葉に、わたくしは口の中で名前を繰り返す。

 ヒースという名前になった子猫は、エリカが拾ってきたときには白く見えていたが、少しずつ柄が出てきているようであった。


「白猫かと思っていましたが、灰色の柄がうっすらと出てきています」

「ちろねこじゃなかったのでつか」

「はい。もう少し大きくなったら柄もはっきりしてくるでしょう。ミルクをたっぷり飲んで、順調に大きくなっています」


 ヒースが大きくなっていると聞いて、わたくしは安心していた。

 ラファエルお兄様とアルベルト様はティールームで体育祭の話をしていた。

 去年、わたくしは行きたいと思っていたのだが、お母様の妊娠のことがあって言い出せなかったのを思い出す。


「ラファエルはアンリエット嬢とダンスで出るのですよね」

「アルベルトは乗馬だったね」


 ラファエルお兄様はアンリエットお義姉様と一緒にダンスで出場して、アルベルト様は乗馬で出場するようだ。

 今年こそは行きたいとわたくしは思っていた。


「わたくち、おにいたまとアルベルトおにいたま、おうえんちたいでつ」

「セラフィナは学園に憧れているからね。セラフィナの応援があったらわたしも頑張れそうだ」

「セラフィナ殿下に応援していただけるとなると、やる気が出ますね」


 ラファエルお兄様もアルベルト様もわたくしが体育祭に行くのに賛成のようだ。

 わたくしも去年のリベンジのつもりで行きたいと強く思っていた。


「おとうたまとおかあたまにおねがいちまつ」

「わたしからもお願いしよう」


 その日の夕食はお父様とお母様とご一緒することになった。

 ラファエルお兄様がお願いがあると頼んでくれたのだ。


 夕食の席で、わたくしは一生懸命身振り手振りを加えて体育祭に行きたいことを伝える。


「おにいたま、アンリエットおねえたま、ダンスちる。アルベルトおにいたま、おうま、のる。わたくち、がくえんのたいいくさい、いきたいでつ」


 必死に頼み込むと、お父様とお母様が話し合っている。


「学園にセラフィナを行かせるとなると、警備をどうするかだな」

「セラフィナはまだ三歳ですし、一人で行かせるわけにもいきませんね」

「マティルダたん、いっちょ」

「マティルダが一緒でも、警備がしっかりしていないと、セラフィナが狙われるかもしれない」

「セラフィナはわたくしたちの大事な娘ですからね」


 学園の警備が一番の問題のようだ。

 わたくしは三歳だが体育祭の間大人しくしておける自信はあった。お父様もお母様もその点に関しては気にしていないようだ。気になっているのはわたくしの身の安全である。


 公爵家の嫡男のアルベルト様は町に行った帰りに襲われた。

 あのとき、わたくしが庇っていなければ、アルベルト様は殺されていたか、誘拐されていたかもしれない。

 公爵家の嫡男ですらそうなのだ。

 皇帝一家の娘となると、ますます狙うものは多くなるだろう。


 わたくしを誘拐して身代金を要求すれば、お父様とお母様はきっと支払ってしまう。わたくしが無事に戻るのならばと、どんな要求も聞いてしまうかもしれない。

 そんなことにならないためにも、わたくしは身を守れるようにしなければいけなかった。


「学園は貴族と平民の特待生が通っているので、平常時でも警備はそれなりにされていますよ」


 ラファエルお兄様が言ってくれるが、お父様とお母様の表情は晴れない。


「体育祭には他にも保護者や家族が来るのだろう? どさくさに紛れて犯罪者が来ていないとも限らない」

「セラフィナに護衛の兵士を何人つけましょうか。五人では少ないですね。十人……」

「それくらいは必要かもしれない」


 わたくしに護衛の騎士が十人も付く!?

 そんなことになったら体育祭を見るどころではなくなるのではないだろうか。

 わたくしは平和に体育祭を見守って、ラファエルお兄様やアルベルト様に声援を送りたかったが、それは難しそうだ。

 わたくしが固まっていると、お父様がわたくしに言った。


「護衛の兵士を最低でも十人は付けなければ体育祭には行かせられないな」

「体育祭ではいい子にできますか? 疲れたらマティルダさんに伝えて、休ませてもらうのですよ」


 前世と違って今世ではものすごく愛されているのを感じるのだが、お父様もお母様もちょっと過保護なところがありすぎると思ってしまう。

 それもわたくしが皇女という立場だから仕方がないのだろうか。

 皇女という立場に、わたくしは多少の息苦しさを感じてしまっていた。


 体育祭が近くなると、マティルダさんがわたくしのために衣装を揃えてくれた。

 日よけのために長袖のワンピースに、レギンスと革靴。白いつばの広い帽子も用意されている。

 汚したり漏らしたりしたときのための着替えも準備されていた。


「昼食は宮殿から持って行ったお弁当を食べます」

「あい」

「お弁当を食べた後、眠くなった場合には、帰るように皇帝陛下と皇后陛下から言われています」

「あい」


 これはどうしようもない。

 眠ってしまったわたくしを守るのは難しくなるし、ゆっくり眠れる場所が学園にはないのだ。

 眠くならないように願うが、わたくしはまだ三歳なので昼食後にはどうしても眠くなってしまうだろう。

 せっかく学園に行くので、しっかり見ておきたいところだが、わたくしの体力では午前中いっぱいで帰ることになりそうだった。


 学園から帰ってきたラファエルお兄様にわたくしは確認する。


「おにいたま、たいいくさい、おにいたまのダンス、いつでつか?」

「ダンスは午前中の最後のプログラムだね」

「アルベルトおにいたまのおうまは?」

「アルベルトの乗馬は、午前中の最初のプログラムだよ」


 それならば、わたくしは午前中で帰ることになってもラファエルお兄様のダンスとアルベルト様の乗馬は見られることになる。

 安心していると、ラファエルお兄様がわたくしを抱き上げてくるくると回る。ダンスを踊っているような動作に、わたくしは楽しくて声を出して笑った。


「アンリエット嬢と一緒に一番格好よく踊るからね。見ててね!」

「おにいたま、がんばって!」

「当日はアルマンドール公爵家のご家族も来ているし、アルベルトの家族も来ているし、ユリウスの家族も来ているから、一緒に応援してくれると嬉しいな」

「アルマンドールこうちゃくけも、ベルンハルトこうちゃくけのおじたまもおばたまも、ルクレールこうちゃくけのおじたまもおばたまも、いっちょ!」

「そうだよ。それぞれに護衛を連れているから、セラフィナが安全に過ごせるよ」


 本当ならばお父様とお母様もご一緒したかったのだけれど、皇帝と皇后として公務があるので難しい。

 お父様とお母様もラファエルお兄様の勇姿を見たかっただろう。

 わたくしがしっかりと見て、お父様とお母様に伝えようとわたくしは心に決めていた。


 アルマンドール公爵家のご家族やルクレール公爵家のご家族が来るのならば、ニコ様やリヴィア嬢、ルカ様も来るのではないだろうか。

 ニコ様はもう八歳になられるので落ち着いているし、リヴィア嬢もわたくしより先に四歳になったし元から落ち着いていたので心配はないが、ルカ様はどうなったのだろう。

 ルカ様が以前のようにイヤイヤ期で駆け回っていたら、ルクレール公爵家の伯父様と伯母様は困るのではないだろうか。

 わたくしが心配していると、ラファエルお兄様がわたくしの顔を覗き込んでくる。


「どうしたの、セラフィナ。眉毛の間に皴が寄っているよ?」

「わたくち……」


 どういえばいいのか分からなくて口ごもってしまうわたくしに、ラファエルお兄様が微笑みかける。


「学園に行くのが不安になった? マティルダさんも準備をしてくれているし、護衛もたくさんつくから平気だよ。行くときにはわたしが馬車で抱っこしてあげる」


 アルベルト様のお屋敷に行くときに馬車を怖いと思ってしまったわたくしを知っているラファエルお兄様は、優しくわたくしに語り掛ける。

 ラファエルお兄様もいるし、ルクレール公爵家の伯父様と伯母様もいるのだからきっと大丈夫だろう。


 わたくしは不安を振り払った。

読んでいただきありがとうございました。

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