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転生皇女セラフィナ  作者: 秋月真鳥
二章 ミカエル誕生

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14.アルベルトのお泊り

 アルベルト様が宮殿にお泊りする日が決まった。

 学園は冬休みなので、アルベルト様は一日中宮殿にいることになる。

 宮殿のメイドたちはアルベルト様が泊まる部屋を準備するのに大忙しだった。


 わたくしは子ども部屋でエリカを背もたれにして絵本を読んでいたが、絵本の内容が全然頭に入ってこないくらいそわそわしていた。

 アルベルト様の到着が告げられたのは、昼食の前だった。

 昼食はアルベルト様とラファエルお兄様とわたくしで一緒に食べていいようだ。


「ミカたん、いってきまつ」

「あう!」


 オレリアさんに抱っこされて離乳食を食べるミカに挨拶をして、わたくしはマティルダさんに食堂まで連れて行ってもらった。エリカも一緒に連れて行きたかったが、食堂には犬は入れないので、留守番してもらった。


 食堂に行くと、アルベルト様とラファエルお兄様が椅子に座ろうとしていたところだった。


 わたくしが入って行くと、アルベルト様がわたくしに挨拶をする。


「セラフィナ、今日はよろしくお願いします。午後に一緒に散歩をしましょうか?」

「おたんぽ、ちたいでつ」

「わたしも一緒だからね!」

「おにいたまもいっちょ!」


 午後に散歩をする約束をして、わたくしは子ども用の椅子に座って昼食を食べる。昼食の蒸し野菜のサラダも、白身魚のソテーも、マティルダさんが食べやすいように小さく切ってくれた。

 わたくしはまだナイフをちゃんと使えないので、フォークで突き刺して食べるだけになる。それも最近は落としたり零したりすることが少なくなって、かなり上手になってきたと思う。

 ふわふわの柔らかな焼きたてのパンを千切って食べていると、ラファエルお兄様がパンで白身魚のソテーのソースを掬って食べていた。

 こういう風にしてもいいのだと知らなかったわたくしは、さっそく真似をしてみる。

 ふわふわのパンにソースをつけるととても美味しい。

 夢中になって食べていると、気が付けばパンがなくなっていた。


 いけない、食べ過ぎた!


 わたくしは普段はパンを一個も食べない。

 そんなに食べてしまうとお腹がいっぱいになってデザートが食べられなくなるのだ。

 デザートに出てきたチーズスフレをわたくしは泣く泣く諦めた。


 お腹がいっぱいになるとわたくしは眠くなる。まだ三歳の体なのだからどうしようもない。

 わたくしは一度子ども部屋に戻って、歯を磨いて、着替えをしてベッドに入った。離乳食を食べ終えて、ミルクも飲んだミカが、眠るのは嫌だと泣いている声が聞こえる。

 眠りはミカにとってはまだ未知の感覚で、眠ってしまうのが怖いのかもしれない。


「ミカたん、こわくないでつよ。ねぇねがいまつよ」


 呟きながら、わたくしはそのまま眠ってしまった。


 目が覚めると、窓から入る日差しは少し傾いていたが、外は吹雪いてはいないようだった。

 お手洗いに行って、着替えをしてすっきりと起きると、アルベルト様とラファエルお兄様が迎えに来た。


「お散歩に行きましょう」

「マティルダさん、セラフィナを温かい格好にさせて」


 ラファエルお兄様が命じて、わたくしはコートを着せてもらって、ネックウォーマーと手袋もつける。

 冒険に行ったときに持って行った、ポシェットも下げていると、マティルダさんがポシェットにエリカのためのジャーキーを包んで入れてくれた。


 エリカも一緒に庭に出て、雪の中を歩く。

 エリカは力いっぱい走り出して、子ども部屋の庭の生け垣まで行って、戻ってきた。エリカの吐く息が白くなっている。

 わたくしとラファエルお兄様とアルベルト様は、雪だるまを作って、雪だるまを的にして雪玉を投げた。


「セラフィナ、もっと大きく腕を振って」

「あい!」

「セラフィナ、上手だよ」


 アルベルト様とラファエルお兄様に声をかけられて、わたくしは一生懸命雪玉を投げた。雪玉は全然雪だるままでは届かなかったが、それでもとても楽しかった。

 ポシェットから出したジャーキーをエリカに食べさせて、わたくしはエリカと一緒に子ども部屋に戻った。アルベルト様とラファエルお兄様はわたくしとエリカを子ども部屋に送ると、二人で別の場所に行ってしまった。


 コートと手袋とネックウォーマーを脱いで、暖炉のそばで乾かしてもらう。

 エリカは水を与えられて、飲んでいた。


 お散歩で疲れたので、お茶の時間までわたくしはエリカを背もたれにして絵本を読んでゆっくりしていた。


 お茶の時間にはお父様とお母様もご一緒した。

 アルベルト様が来てくれたのを歓迎するためだった。


「アルベルトが泊まりに来るなんて、小さなころ以来だな」

「あのときはご両親も一緒でしたね」

「そのときのことはあまり覚えていません」

「アルベルトがセラフィナくらいのころだったからね」

「ラファエルと子ども部屋で一緒に寝て、とてもかわいかったです」


 アルベルト様が三歳くらいのときのことをお父様とお母様が話している。

 わたくしはアルベルト様が七歳のときからしか知らないので、三歳のときのことは興味深く聞いていた。


「アルベルトおにいたま、えんえんちた?」

「泣いてはいなかったよ」

「いい子で眠っていましたよ。夜に様子を見に行ったら、ぐっすりと眠っていてかわいかったです」


 三歳のラファエルお兄様とアルベルト様が一緒に寝ているのは確かにかわいかっただろう。

 それを見ることができなかったのは仕方がないのだが、見たかったとわたくしは悔しく思っていた。


「セラフィナに寝る前の絵本を読み聞かせに行ってもいいですか?」

「それはセラフィナも喜ぶね」

「お願いします、アルベルト殿」

「はい。ありがとうございます」


 アルベルト様はわたくしが寝る前に絵本を読む許可も得ていた。


 お茶の時間が終わると、ラファエルお兄様とアルベルト様はまた別の部屋で過ごすようだった。


「アルベルト、宿題の数学の問題、全部解けた?」

「解けましたよ」

「一問、分からないところがあるんだ。教えてくれる?」

「はい、いいですよ」


 そんな話をしていたから、ラファエルお兄様とアルベルト様は一緒に学園の宿題をするのだろう。

 わたくしが子ども部屋に戻ると、ミカが泣いていた。

 激しく泣いているので、オレリアさんも困っている様子だったが、わたくしが近寄って顔を見せると、ぴたりと泣き止む。


「セラフィナ殿下がいなくて寂しかったのでしょうか」

「ミカたん、ねぇね、いまつよ」

「あだ!」


 いないいないばーをしてあげると、きゃっきゃと声をあげて笑い出したミカに、わたくしはお母様から習ったことを思い出す。

 オレリアさんにミカを床の上に敷いた敷物の上に置いてもらって、わたくしはミカに近寄った。

 手をワキワキとさせて、ミカをくすぐる。


「ことことことー!」

「きゃー! きゃっきゃっきゃ!」


 ミカをくすぐると、ミカが声をあげて笑う。

 ミカの笑い声がかわいくて、わたくしは何度もミカをくすぐって遊んだ。


 夕食の時間になると、わたくしとラファエルお兄様とアルベルト様で食堂で夕食を食べた。お母様とお父様は執務が忙しくて同席できなかった。

 パンとスープと牛頬肉の煮込みを食べていると、ラファエルお兄様とアルベルト様が話している。


「宮殿の料理は美味しいだろう?」

「はい、とても美味しいです。ベルンハルト家の料理も美味しいので、ぜひ食べてほしいです」

「父上と母上は、わたしがベルンハルト公爵家に行くのは構わないと言ったが、セラフィナの件で悩んでいてね」

「やはり、難しいですか?」

「セラフィナは小さいからね」


 わたくしはベルンハルト公爵家に行っていいかどうか、お父様とお母様はまだ決められていないようだった。わたくしはベルンハルト公爵家のことを知っているが、ベルンハルト公爵家で宮殿と同じように過ごせるかは分からない。

 わたくしが前世でクラリッサとして奉公に行ったときには、アルベルト様は子ども部屋を卒業していて、一人部屋になっていたのだ。


「わたしがいるから、大丈夫だと思うのだけれど」

「乳母についてきてもらったら安心かもしれませんね」

「そうだな。マティルダさんが一緒なら父上と母上も納得するかもしれない」


 ラファエルお兄様とアルベルト様はベルンハルト公爵家にわたくしを連れて行く計画を立てているようだった。

 わたくしが死んでから三年、ベルンハルト公爵家がどう変わったのか、わたくしもこの目で確かめたい。

 ラファエルお兄様がお父様とお母様を説得できることをわたくしは願っていた。


 夕食後はお風呂に入って、暖炉の火のそばに座って髪を乾かして、ベッドに入る。

 ベッドに入る時間になると、アルベルト様とラファエルお兄様が子ども部屋に来てくれた。

 アルベルト様はベッド脇に椅子を持って来て、絵本を読んでくれる。

 アルベルト様の少し低くなった声を聞いているうちにわたくしは眠ってしまっていた。

読んでいただきありがとうございました。

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