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転生皇女セラフィナ  作者: 秋月真鳥
一章 セラフィナ誕生する

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23/60

23.セレナとラファエルとの雪遊び

 アルベルト様に苺を食べさせてもらった日の翌日、今年初めて庭に雪が積もった。

 わたくしはたまらなくなって、お母様と乳母にコートとネックウォーマーと手袋を身に付けさせてもらって、外にお散歩に出かけた。お母様も乳母もついてきた。

 冬なので止められている噴水の端に積もっている雪を掬って、わたくしが雪を丸めようとしても、小さな手ではなかなか難しい。

 お母様がわたくしの顔を覗き込む。


「セラフィナ、何をしているのですか?」

「ゆきだうま、ちゅくる」

「セラフィナは雪だるまを知っていましたか。一緒に作りましょう」

「あい!」


 お母様が雪玉を作ってくれて、わたくしがそれを転がして大きくしていく。

 大きくなった雪玉を二個重ねると、雪だるまができた。


「しゅごーい! じぇったー!」

「できましたね。顔はどうしますか?」

「おかお! こえを、こうちてー」


 顔の相談をされて、わたくしは庭に生えていた椿の葉っぱを取って口にした。花が落ちている椿を手に取って、丁寧に発破を一枚ずつ剥がして、二枚用意して目にする。


「工夫しましたね。素敵な雪だるまができました」

「じょーじゅ?」

「セラフィナ、とても上手ですよ」


 お母様が褒めてくれてわたくしは有頂天になった。

 前世では雪が降ると寒い中一人で外に出て雪だるまを作ったり、雪ウサギを作ったりして遊んでいた。雪くらいしか遊べるものはなかったので、寒さよりも遊ぶことが上回ってしまったのだ。

 わたくしはこんなにも遊びたかったのだとセラフィナになって実感する。


「くちん!」

「セラフィナ、鼻水が。そろそろ冷えてきたかもしれませんね。暖かい部屋に戻りましょう」


 わたくしがくしゃみをすると、お母様は鼻水を拭いてくれてわたくしと手を繋いで子ども部屋まで戻ってくれた。

 くしゃみをしたら気付いてくれて、鼻水まで拭いてくれるお母様。前世の母はわたくしのことなど無関心で世話を焼いてくれたこともなかった。それを考えると皇后という尊い地位にありながらお母様はとても心優しく、愛情深かった。


 部屋に戻ってコートと手袋とネックウォーマーを脱ぐと、乳母が暖炉のそばにかけて乾かしてくれる。お母様もコートとマフラーと手袋を脱いで暖炉のそばで乾かしていた。

 子ども部屋に戻った後で、お母様がわたくしを遊びに誘う。


「セラフィナ、鬼ごっこをしましょう」

「おにごっこ?」

「わたくしが鬼になりますから、セラフィナは逃げてください」

「あい」


 よく分からないままに逃げ出すと、お母様がわたくしを追いかけてくる。

 わたくしはまだ二歳なので走るのが覚束なくてすぐに捕まってしまう。


「セラフィナ、待て待てー!」

「きゃー!」


 捕まえられるというスリルと捕まえられた瞬間お母様に抱き締められるという喜びに、わたくしは大きな声を上げてしまっていた。

 それから、お母様はかくれんぼも教えてくれた。

 鬼が十数える間にどこかに隠れて、静かにしていて、鬼に見つかったら負けというゲームだ。

 こういう遊びを全くしたことがなかったわたくしは、お母様との遊びに夢中になってしまった。


 何回も「もいっかい!」とお願いして、何度も遊んでしまった。

 お母様は嫌がらずに何度でも付き合ってくれた。


 楽しく遊んだ後は昼食の時間になって、お母様は食堂に行き、わたくしは子ども部屋で食べる。

 食べ終えると眠くなって、着替えをすると寝てしまう。

 お母様が公務を休みになってからのわたくしの生活は、ひたすらに満たされて幸せだった。


 お母様は少し悪阻が出てきているようだったが、それも酷くはなくて、おやつの時間にはわたくしに食べさせてくれることもあった。

 わたくしもフォークやスプーンを練習しているが、まだなかなか上手に食べられない。すぐに落としてしまうし、手が出てしまうので、食べさせてもらえるのはありがたかった。


「アルベルト殿からセラフィナに苺が届いていましたよ。今日はその苺を使った苺のクレープだそうです。アルベルト殿にはお礼の手紙を書かねばなりませんね」

「アルたま、いちご、くえた」

「以前にももらったようですね。セラフィナが美味しそうに食べていたからまたプレゼントしたいと思ったのでしょう」


 くすくすと笑いながら、お母様は苺のクレープを切ってわたくしの口に運んでくれる。もちもちのクレープ生地に苺とクリームが挟まれていて、とても美味しい。

 もちゅもちゅと食べていると、お母様がわたくし用の小さなカップに注がれた牛乳と紅茶が半々のミルクティーも飲ませてくれる。


「おいちい。おかあたま、あいがとごじゃます」

「セラフィナに食べさせることはわたくしの喜びです。セラフィナが毎日大きくなっていくのを実感すると、幸福感で胸が満ちます。お礼など言わなくていいのですよ」

「おかあたま、だいすち」

「わたくしもセラフィナが大好きです」


 赤ちゃんが生まれるときには、上の子どもを大事にしておかなければいけないというのを、前世で聞いたことがあった気がする。お父様とお母様はそのために、お母様が妊娠して公務を休みになったら子ども部屋で過ごすように取り計らってくれたのかもしれない。

 お母様といられる時間が増えて、わたくしは毎日幸せだった。


 雪が積もる日が増えて来て、そのうちに雪が積もらない日がなくなって、冬も本番になってきた。

 ラファエルお兄様は学園が冬休みに入ったので、宿題を子ども部屋でするようになっていた。


 子ども部屋にはラファエルお兄様とお母様が一緒にいる状態になる。


「ラファエル、セラフィナに鬼ごっことかくれんぼを教えてあげたのです。宿題が終わったら遊んであげたらどうですか?」

「セラフィナは鬼ごっことかくれんぼを覚えたのですね。セラフィナと遊びたいです」


 お母様は妊娠しているせいか、眠くなることが多くなって、ソファに横になっている時間も増えたが、わたくしのことを気にしてくれるし、ラファエルお兄様もわたくしと遊んでくれるのでわたくしは全然退屈しなかった。


「宿題が終わりました。セラフィナ、鬼ごっこをする? かくれんぼがいい?」

「おにごっこ、ちる!」

「それじゃ、にぃにが鬼になるから逃げて」

「あい!」


 わたくしが逃げると、ラファエルお兄様が手加減をしながら追いかけてくるのが分かる。


「待て待てー!」

「きゃー!」

「捕まえたー!」

「きゃーっはっはっは!」


 ラファエルお兄様もしっかりとわたくしを抱き締めて捕まえるので、わたくしは楽しくて自然と笑い声が漏れていた。二歳児の体は感情に素直なのだ。

 ラファエルお兄様と庭に散歩に行くと、ラファエルお兄様は手の平大の雪玉を何個も作って、わたくしに握らせた。


「雪合戦ができればいいんだけどね。今度、ユリウスとアルベルトとアンリエット嬢を誘って、雪合戦をしようか」

「ゆきがってん?」

「この雪玉を投げて相手にぶつけるんだよ。セラフィナ、投げてみて」

「あい!」


 雪玉を持って投げるが、わたくしが投げても近くにころころと転がるだけだった。ラファエルお兄様がそれを拾って、きれいなフォームで遠くに投げる。


「しゅごーい!」

「いっぱい雪玉を作るから、セラフィナは投げる練習をしよう」

「あい!」


 ラファエルお兄様にたくさん雪玉を作ってもらって、わたくしは雪玉を投げる練習をした。体を動かしていると、ぽかぽかと暖かくなって、雪の中なのにわたくしは汗をかいていた。

 子ども部屋に戻ると、コートとネックウォーマーと手袋を乳母が暖炉のそばにかけてくれる。それから、頬っぺたを真っ赤にしているわたくしに気付いて、額に手をやった。


「熱はないようですね。汗をかいているだけでしょうか。汗を拭いて着替えましょうか」


 乳母に促されて、わたくしは体をお湯で濡らしたタオルで拭いて、着替えさせてもらった。

 その後眠くなってしまって、わたくしは昼食を食べずに寝てしまって、起きた後で空腹でふらふらになっていた。


 昼食を食べなかったので、おやつは軽食になっていて、小さなサンドイッチとキッシュと牛乳と紅茶が半々のミルクティーだった。

 サンドイッチは自分で手で持って食べて、キッシュは乳母に切ってもらってフォークで突き刺して食べていると、ラファエルお兄様が申し訳なさそうにわたくしに謝ってきた。


「セラフィナを動かせすぎたね。楽しそうだったから長時間外で遊ばせてしまった。今後は気を付けるよ。ごめんね」

「にぃに、わるくない。にぃに、すち」

「また一緒に遊ぼうね」


 今度はアルベルト様やユリウス様やアンリエット様とも遊べるのだろうか。

 軽食のおやつを食べ終えて、わたくしは次に遊べる日を楽しみにしていた。

読んでいただきありがとうございました。

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