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転生皇女セラフィナ  作者: 秋月真鳥
一章 セラフィナ誕生する

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21.嬉しい報せ

 過ごしやすかった秋も終わり、季節は冬に近付いている。

 部屋の温度が下がるようになって、暖炉には火がともされて部屋を暖かな赤い炎が照らしていた。

 まだ暖炉の前に陣取って遊ぶような時期ではないが、もっと寒くなってくるとわたくしは暖炉の前に座って暖を取りながら遊ぶようになるだろう。


 ラファエルお兄様が学園に入学してから、三か月が経っている。

 わたくしは冬には楽しみなことがあった。


 去年の冬は小さすぎて庭に出ることを許されなかったが、今年はしっかり歩けるようになってきたし、庭に出たいと主張することもできるようになっているので、雪で遊べるのではないだろうか。

 前世ではわたくしはおもちゃなどを持たず、遊ぶ時間も与えられなかったが、雪が降ると寒い中外に出て小さな雪だるまを作って隠していたのを思い出す。上着も碌に持っていなかったのでとても寒かったが、遊べるということは子どもにとってはとても重要なことだった。


 雪が降るのを楽しみにしているのと、もう一つ、わたくしには楽しみなことがあった。


 学園が冬休みに入って、ラファエルお兄様がずっと宮殿にいてくださるようになるのだ。

 そうなるとまた一年前のようにアルベルト様やユリウス様を呼んで、一緒に勉強するかもしれない。アンリエット嬢もご一緒かもしれない。

 リヴィア嬢と会うことは難しいが、アルベルト様やユリウス様、アンリエット嬢と会えるのはわたくしも楽しい。


 二つの楽しみを胸に、わたくしは雪が降るのを待っていた。


 初雪が降った日、わたくしはとても寒くて朝、ベッドからなかなか出られなかった。

 乳母が心配してわたくしの熱を測ったり、抱っこして起こそうとしたりしたが、寒さに震えてしまって布団から出るのを思い切り抵抗してしまった。

 窓の外を見ると、ちらちらと白い粉雪が舞っている。

 まだ積もりそうになかったが、寒々しくてわたくしは着替えを終えるとすぐに暖炉の前に移動した。


「セラフィナ殿下、朝食を食べませんか?」

「さむさむなの」

「それでは、暖炉のそばにテーブルを移動させましょう」


 わたくしが寒いことを伝えると、乳母は侍女に命じてテーブルを暖炉のそばに移動させて、朝食をとれるようにしてくれた。

 皇女ともなると、寒いと言っただけでテーブルが動くのだ。

 わたくしは我がままだったかもしれないと反省する。


「わたくち、わるいこ。ごめちゃい」

「セラフィナ殿下は悪くなどありません。セラフィナ殿下が朝食を食べずに体調を崩してしまうことを考えれば、テーブルを動かすことなど些細なことです」


 さすが皇女。

 大事にされ方が違う。

 前世ならば寒かろうと暑かろうと働かされていたし、その感覚も鈍くなっていた。小さな体は感覚も鋭敏で、困ってしまう。

 これでは雪遊びなどできないのではないだろうか。


 乳母に朝食を食べさせてもらってから、わたくしが悩んでいると、お父様とお母様が子ども部屋にやってきた。


「おはよう、セラフィナ。今日は初雪が降ったけれど、セラフィナは元気かな?」

「寒かったのですか? テーブルを暖炉の方に移動させたようですね」


 寒いだけでわたくしの体調を気にしてお父様もお母様も様子を見に来てくれる。


「さむさむだったの。テーブル、だんろのちかく、ちてもらったの」

「寒いのだったらもう少し分厚い服を着せてもいいかもしれないね」

「靴下ももっと温かいものにしてもらいますか?」


 お父様とお母様の指示によって、わたくしはふわふわの上着を着せてもらって、靴下ももっと温かなものにはきかえさせてもらった。


「セラフィナの冬服が間に合っていないようだね」

「すぐに仕立て職人を呼びましょう」


 結果として、わたくしは去年よりもかなり体が大きくなっているので、冬服が足りていないことが判明して、お母様が宮殿お抱えの仕立て職人を呼んで、すぐに採寸をして冬服をたっぷりと誂えてもらえることに決まった。


「殿下、お手を失礼します」

「あい」

「このサイズでしたら、ミトン型の手袋がいいかもしれませんね。マフラーは首を絞める可能性があるので、ネックウォーマーを作りましょうか」

「セラフィナが寒くないようにしてやってくれ」

「冬の間中閉じこもり切りでは体によくありませんからね。庭を散歩できる程度の格好も用意してください」


 手袋なんてわたくしは初めてだ。ネックウォーマーもつけたことがない。冬場に学校に来る子どもの中で裕福な子は、マフラーやコートを身に付けていたが、わたくしがそんな風になれるだなんて考えたこともなかった。

 来年にはわたくしは大きくなって手袋もネックウォーマーも入らないようになっているに違いないのに、お父様もお母様ももったいないとは思っていない様子だった。


 仕立て職人が注文を聞いて帰ってから、お父様とお母様はわたくしがもう寒がっていないのを確認して執務に戻って行った。

 昼が近くなると、粉雪も溶けて小雨になって、気温は少し上がったようだった。


 わたくしは暖炉の前にテーブルが移動してきたので、椅子に座って本を読んだり、画用紙にクレヨンで文字を書く練習をしたりして過ごした。

 冬の間はこの配置にしてくれていれば、快適に過ごせるかもしれない。

 わたくしの一言で部屋の模様替えが行われてしまったが、結果的にはよかったのかもしれないとわたくしは思い始めていた。


 ラファエルお兄様が学園から帰ってきて、夕食は珍しく家族で一緒に食べることになった。

 乳母に連れられていくつかある中の家族で使う小さな食堂に連れて行かれると、子ども用の椅子が用意してあって、わたくしはそこに座る。

 ラファエルお兄様が横に座って、正面にはお父様とお母様が座った。


「たまには家族で食事をするのもいいね。セラフィナも大きくなってきたからね」

「そうですね。セラフィナもわたくしたちと同じものが食べられるようになりましたし、椅子に長時間座っていられるようになりました」

「わたしも父上と母上とセラフィナと一緒の食事は嬉しいです」

「わたくちも!」


 お父様とお母様の言葉に、ラファエルお兄様が賛同して、わたくしも同じ気持ちだと伝える。

 デザートまで食べ終わってから、お茶を用意させているお父様とお母様が、どこかそわそわしているような気がする。何かあったのだろうか。

 わたくしはお腹がいっぱいで眠気もちょっとあったが、頑張って起きていて、紅茶と牛乳が半々のミルクティーを飲みながら、お父様とお母様が話し出すのを待っていた。

 

「ラファエルとセラフィナにいい報せがあるのだよ」

「実は、わたくし、妊娠したことが分かりました。もう子どもはセラフィナで最後かと思っていましたが、もう一人家族が増えそうです」


 その知らせにわたくしもラファエルお兄様もすぐには反応ができなかった。

 お母様のお腹に赤ちゃんがいる。

 つまり、わたくしはお姉様になるのだ。


「わたくち、ねぇね?」

「そうですよ。セラフィナ、お姉様になります」

「母上、とても嬉しいです! 体調は大丈夫ですか? 苦しくないですか?」

「体調はまだ平気です。これから悪阻が来て体調を崩す日も来るかもしれませんが、できるだけ体を大事にしていこうと思っています」

「セレナには今後公務は休んでもらって、体調第一で過ごしてもらおうと思っている」


 ものすごく嬉しいと言葉も出なくなってしまうようだった。

 ただ感動と嬉しさで胸がいっぱいになっている。ラファエルお兄様もそれは同じようだった。


「男の子でしょうか。女の子でしょうか。どちらでもかわいいと思いますが」

「ラファエルには、子どもの名前を一緒に考えてもらおうかな」

「そんな重大なことをしていいのですか?」

「ラファエルのときもセラフィナのときも、名前にすごく迷ったのだ。ラファエルの意見も聞いてみたい」


 お父様はラファエルお兄様と一緒に名前を考えることにしたようだった。

 ラファエルお兄様も一緒に考えた名前を持った赤ちゃんが生まれてくる。


「おかあたま、いちゅ、あかたん、くゆ?」

「来年の夏ごろですね」

「なちゅ……わたくち、なちゅ、ねぇね……」


 来年の夏にはわたくしはお姉様になっている。

 弟であろうと妹であろうとかわいがろうとわたくしは心に決めていた。

読んでいただきありがとうございました。

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