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とりあえず死んでみたら?と死神君が言うもので×チャットGPT

作者: 昼月キオリ
掲載日:2025/11/30


深夜のコンビニの明かりは、街でいちばん暇そうで、いちばん優しかった。

レジ横のホットスナックから立ちのぼる油の匂いに、俺はいつものように釣られて入ってきた――はずだった。


だが今日は違った。

アイス売り場の前に、黒いフードに短パンという、季節感ゼロの少年がしゃがみ込んでいたのだ。


見た目は完全に中学生。

しかし、背中に漂う気配は妙に冷たい。

まるでこの世の者ではないみたいに。


「ねぇ、人間くん。きみ、とりあえず死んでみない?」


少年はアイスを眺めたまま、唐突に言った。


「え?なにいきなり・・・」


「だって、ふか〜く悩んでそうだから、ね、死んでみよ?」


「いやいや、コンビニ行こ、みたいな軽いノリで言わないでくんない?」


コンビニで唐突に“死んでみない?”と言われる経験は、人生で一度あるかないかだと思う。


少年は立ち上がると、フードの奥からいたずらっぽい目を覗かせた。

そして、アイスのスプーンを勝手に俺の手から取って食べた。


「っていつの間に!勝手に食べんなよな!」


「いや、軽くでいいんだよ、軽く」


「俺の話無視かよ・・・」


「体験版みたいなやつなんだ、

死後の世界をお試し!最近そんなサービス始めたんだ」


「つか、お前誰だよ」


「君の担当の死神だよ、ま、バイトだけど」


バイトの死神という言葉の破壊力がすごい。

それに何よりこの軽いノリが怖い。


「ね、とりあえず死んでみたら?面白いよ?」


「いやいやいや、面白くて死ぬやついるか!」


「いるよ。案外多いよ。人生ってさ、行き詰まるじゃん? 

そういうとき一回死んでみると、視点が変わるんだよね。

もちろんちゃんと戻してあげる。バイト続けられなくなるから」


何を基準にバイトの死神は働いているんだ。


死神君は、コンビニの自動ドアを見ながら、

ぼそりと言った。


「本当はさ、君、ちょっと限界来てるでしょ。気付かれないように隠してるけど」


言われて胸が痛む。図星すぎる。

仕事、家庭、人間関係、全部がうまく噛み合わない。

今日ここに来たのだって、なんとなく夜の空気に逃げたかっただけだ。


「でもね、僕が言う死んでみるってのは、逃げるのとは違うんだよ、

ちゃんと戻ってくる前提だからさ。」


彼はふっと笑った。


「どう?体験版、行く?」


死神君の笑顔はあまりにも軽くて、

深夜の油の匂いのように、ふっと心に忍び込んでくる。


そして俺は気付けば彼の伸ばした手を取っていた。

手は冷んやりと冷たい。血が通っていないみたいだ。

本当に人間じゃないんだな・・・。


「よし、じゃあ行くよー」


「え、今から!?」


死神君がぱちんと指を鳴らす音がした。


次の瞬間。

コンビニの蛍光灯が一つ、また一つと消えて

深夜の店内が闇に沈んでゆく。

少年の姿だけがその場に浮かび上がる。


「大丈夫だよ、とりあえず死ぬだけだから」


ふっと、体が軽くなる。

海の底に落ちていくような、ゆらゆらと水中に浮いているような不思議な感覚がする。


コンビニの自動ドアが、遠くで優しく開いた気がした。


お試しの死が、始まった。

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