表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【ボーイミーツガール & ハイファンタジー!】君を探して 白羽根の聖女と封じの炎  作者: 芋つき蛮族
十二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

402/474

382. 白蛇が抱いた疑念

「は……?」


 完全に理解の外にある。

 フェレシーラの指摘を受けたメグスェイダは、薄桃色の舌を完全に引っ込めて動きを止めていた。

 しかしそんな彼女(彼?)の反応もむべなるかな。

 至極もっともな反応だといえるだろう。

 

 魔人である自分が、アトマを保有している。

 魂絶神ゼストの僕とされる存在が、魂源神アーマの力、魂源力アトマを持つに至っている。

 そんな話を突然されたところで、信じろという方が馬鹿げているからだ。

 

「何をわけのわからないことを……このワタシが、アトマをもっているだって? そんなことを言って、ワタシが動揺するとでもおもってんの!? 馬鹿も休み休み言うんだね!」

「いや、正確にはアトマだけじゃなくて、ゼフトも持ってるんだと思うけどな。なんか『探知』で見てもまだら模様に欠けた赤いアトマが視えてるし」

「はぁっ!? この……まだ言うのかいっ! このメグスェイダ・フォルオーンを虚仮にするのも、程々にしておきな! いい加減、噛むよっ!」

「噛むっていっても、お前、乳歯も生えてないけどな。あ、この場合は蛇だし乳歯っていうか牙か。そういや蛇って生まれた時から牙が生えてるのが殆どなんだっけ」

「ワタシが知るかっ、そんなことっ!」


 こちらの質問に「シャーッ!」と威嚇音を発して叫ぶメグスェイダ。

 その光景を、フェレシーラが呆然とした面持ちで眺めている。


 ちなみに我らがホムラさんは、いつの間にやら俺の頭の上に鎮座中。

 この状態で結構激しく動いても、器用にバランスを取って居座るんだよな、コイツ。


「ま、アトマに揺らぎがあるのは普通のことだしな。今のお前なら『探知』で調べられたところで、ちょっと変わった話す蛇、ぐらいにしか認識されないだろうな」

「ぐ……で、でたらめ言ってるんじゃないだろうね……!」

「信じる信じないはそっちの勝手だけどさ。少なくとも、お前の仲間の魔人たちは、その姿を見て同族だなんて思わないだろうな。まあそれも、こうして腰を据えて話が出来るならなんとかなるかもしれないけど」

「……フン」


 それは具体的な場面を提示されて、その光景を想い描こうとした結果だったのだろう。

 

「その前に身内の情報を知ってるからと消されるか、実験体にでもされるとでも言いたそうだね」

 

 メグスェイダが、落ち着きを取り戻した口調となってきた。


「ま、キミの言いたいことはわかるよ。アトマを持っている云々が口から出まかせってヤツだとしても……このザマじゃ、戻ったところで爪弾きなんて程度じゃ済まないだろうしさ」

 

 そうして一度思考を回し始めていれば、自らのろくでもない現状と、この先の展望の無さが見えてきたらしい。

 

 そもそもの話。

 コイツはあの鉄巨人に仕込まれていた『爆炎』を起動する為の、時間稼ぎ要員にされていたぐらいなのだ。

 そうして味方である筈の魔人から捨て駒にされた結果が、魔人の成れの果て、喋る白蛇なのだ。

 それ自体は敵が勝手にやらかしたことなので、別に俺がどうこう横槍を入れるつもりはない。

 

 ただ、もしもコイツが――

 

「フラム」 


 メグスェイダの動きを見守っていたところに、後ろから声がきた。

 フェレシーラだ。

 まるで魂が抜けたかのようにこちらのやり取りを眺めていた彼女だが、既にその瞳にははっきりとした意思の光が輝いている。


 そしてその青い瞳が俺をまっすぐに見据えてきたかと思うと、言葉の続きがやってきた。

 

「この場は――いえ、この交渉。貴方に任せていい? 結果次第ではあるけど、上手くまとめてくれたら……可能な限り聖伐教団からメグスェイダが狙われないように、私からも尽力させてもらうから」

「へ……?」


 突然の要求と条件提示。

 予想の完全に外からやってきたフェレシーラの言葉に、今度はこちらが呆気に取られてしまう番だった。

 

「そ、そりゃあ……俺からしたら、願ってもない話だけど……なんでだ? フェレシーラは、魔人を斃すのが役目なんだろ? 聖伐教団って、その為にあるようなイメージなんだけど」

「その通りね。でも課された役目がすべて、って生き方をしているわけもないから。そこはケーズバイケースって奴よ。それに……ここから残りの魔人を掃討できる切欠を掴めるかもだし。そんなことよりも、任せていいのかどうか、返答は?」

「……ちょっとだけ、待ってくれ。頭の中で整理するから」

「オッケーよ。それじゃあ、先に――」


 彼女の意外な対応を前に戸惑っていると、フェレシーラはその視線を白蛇へと移していた。 


「メグスェイダ・フォルオーン。貴方とは一時休戦よ。またやり合うときは宣戦布告した上で、きっちりと白黒つけてあげるから。そのつもりでいて頂戴」

「そうだね、フェレシーラ・シェットフレン。正直言って、ワタシも何がなんだかな状況だけど……決着のつけ方は、それで異論ないよ」

 

 さすがに自分の力が殆ど残っていない自覚があったのか、メグスェイダが消極的な姿勢ながらもフェレシーラの提案を呑んできた。

 しかし、それにしても……

 

 なんでしょう、この感じ。

 この、なんていうか……二人の間に漂う、『一度ぶつかり合ってわかり合えた者同士』感は。

 なんか僕、絶妙に置いてけぼりにされてません?

 それとホムラさん、尻尾で人の後頭部ビシビシすんのやめてくれません?

 

 まあ、フェレシーラとメグスェイダが露骨に敵対していたら、交渉どころじゃないのは確かなので、ありがたい限りではある。

 だがそうなると、問題は聖伐教団の魔人に対するスタンスだ。

 

 フェレシーラはこう言ってくれているが、ぶっちゃけかなりのリスクがあるように思える。

 当然、話を持ち掛けてきた彼女からすれば、そこは百も承知、というヤツなのだろう。

 あれだけ魔人に敵意を燃やしていたのに、ここに来てこの変わりようは気にならないといえば、嘘になるが……

 

 そこを無闇に突いて「じゃあこの話はなしね」と元の木阿弥にされるのも非常に不味い。

 心変わりの理由とはして、やはり魔人である筈のメグスェイダにアトマが宿っていた事が――

 

 って、ダメだダメだ。

 また悪い癖が出るところだった。

 

「よし。そういうことなら任せてくれ、フェレシーラ。メグスェイダも聞いてくれ。ホムラ、ちっこくなったからってツンツンしたらダメだぞ」

「オッケ。元はといえば貴方の問題だから、しっかりとね」

「ワタシは内容によるけどね。消されかけた上に、利用だけされるなんてありえないし」

「ピ!」


 各々の反応をみて、俺は頷く。 

 

「じゃあ、まずはメグスェイダ。お前はこれからどうしたい?」

「は? どうしたいって……」

 

 おそらくは俺が、メグスェイダ自身の身の安全と引き換えに、仲間である魔人の情報を聞き出しにくると思っていたのだろう。

 その質問を耳にして、元魔人の白蛇が押し黙った。

 

「そうだね……色々と知りたいかな。ワタシが本当に捨て駒にされたのか。なんでこんな体になって、生き延びていたのか。まずはそういう部分を知りたい。そして可能なら、元の身体に戻りたいよ」

「わかった。最後の部分までは手を貸せないけど。そういう事なら可能な範囲内で協力するよ。勿論、アンタがそれを拒まないなら、だ」

「へえ? じゃあ、協力の見返りに情報を聞き出すつもりかい?」

「いや。そのつもりはない」


 メグスェイダの問いかけに短く返すと、白蛇の頭がヒョイッと持ち上がってきた。

 

「情報が必要ない? なら、なんで助け船を出そうとするのさ。見返りもなしってのは、逆に怪しいよ」

「別にそう怪しむことでもないさ。残念ながら、現時点でアンタから情報を得てもそれを鵜呑みに出来ないからな。俺は魔人についてはそこまで詳しくないし、情報の真偽を見抜けるとも思えないし」

「む……それはそうかもだけど。じゃあ、なんで手助けをしようとする?」

「協力することで、見えてくるものがあるからだよ。今回のことは、俺自身に関係している可能性が高い。だからアンタを保護して、諸々探っていけば何らかの手掛かりも見えてくる筈だ。なんの手掛かりもない状態からスタートするよりも、やってみる価値がある」 

「――」


 小さな蛇の眼が、薄い瞬膜に覆われて半眼となった。

 明らかな逡巡。

 隠しきれない迷い。

 

 一体、どれだけの刻が過ぎたのだろうか。

 

「一つだけ、聞きたいことがある」


 沈黙を破りメグスェイダが発してきた言葉に、俺はしっかりと首を縦に振ってみせた。

 

「なんでキミさ。ワタシの蛇ちゃんに噛まれたのに、ふっつーに動いて攻撃できてたの? 正直、いまワタシが一番気になって仕方ないのって、そこなんだけど。あの不意打ちさえなければ、絶対こっちが勝ってたし……!」

「――あ」

 

 心の底からといった風な問いかけに、思わず声が洩れてしまう。

 

 はい。

 そうですね。

 そういえばそうでしたね。

 

 そういやコイツには、俺が『凍結』で自分の体を凍らせて毒が回るのを防いでいたことは、伝えていませんでしたね。

 そりゃあ自分がやられた原因は、当然気になりますよね。

 

 そこに関しては誠心誠意、パパッと解説させていただきます……!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ