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【ボーイミーツガール & ハイファンタジー!】君を探して 白羽根の聖女と封じの炎  作者: 芋つき蛮族
十二章

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349. 第三の影

「影人は倒されれば消える。ミストピアの街でその情報を聞いたときは、たしかにそうだなって思ったけどさ」

 

 木箱に腰かけたまま、俺の背中に肩を預けてくる少女へと言葉を返した。

 

「考えてみれば、辻褄が合わないんだよ。いまここで戦っている影人と、俺たちが『隠者の森』で出くわした影人の最期ってさ」


 同じ名を持つ魔物であるからには、同様の特性を持っていて然り。

 それがそもそもの、思い込みだったのだろう。

 まずはその点を伝えにかかると、フェレシーラが「続けて頂戴」と、先を促してきた。

 

「最初に見かけた三匹の影人は、死体が残っていた。ここの印象が薄かったのは、まあ当然って言えば当然だ。なにせ死体が消えるなんてのを目にしたことはなかったし、普通のことだからな」

 

 指を一つ立てて、そこにまた一つ足す。

 

「次に、俺が倒した二匹。雌のグリフォン……ホムラの母親を襲っていたヤツ。こいつらは、倒した後も暫く死体が残っていた。んでもって、そこから目を話した隙に倍ぐらいのサイズの影人に奇襲受けて……俺を庇ったお前が気絶しちゃったんだよな、たしか」

「あー……うん、そうね。前使ってた盾、それで凹んじゃったのよね」


 はい、仰るとおりで。

 その節は誠にサーセンでした……!

 まあその話は横に置いておくとして。

 

「それで今度は巨大化した影人を倒したら、そいつが一旦・・消えちゃったんだよな」

「そうね。それでその後、ものすごーくよわっちぃ顔のない影人が、わんさか湧いてきたのよね?」

「そうそう。あれは倒したら消えてたな。でもこれに関しては、自壊したっていうよりはガチでダメージに耐えられなくて消滅してた可能性が高いな。そんでもって……」

 

 三つ、四つ、と指を立ててゆき、俺は言った。

 

「最後に洞窟の中でやりあった、あの鳥頭」 

 

 ホムラの母親からアトマと姿を奪い、二度に渡るフェレシーラ『浄化』により、頭部を吹き飛ばされながらも……逆巻く狂風と化して、俺たちを追い詰めた影人。

 

「あれも今にして思えばおかしかったもんな」

「ん? おかしかったって……どこがどういう風に?」

「うん。まずさ。いま現れてる影人はダメージが入れば跡形もなく消えるけど。あの鳥頭はフェレシーラの『浄化』を二度も叩き込まれて、そこから暴走したみたいな形で暴風の渦になっていた。この時点で、『ある一定以上のダメージを受けたら自壊する』っていう仕掛けが施されていなかった可能性が高い」

「んー……でもあの時は、中途半端に『浄化』が決まって鳥頭の術法式が壊れたのかも、って思ったけど。それで自壊し損ねた、って線はないかしら」

「それも思ったんだけどな。もしそれがあり得るなら、いま戦ってる影人にだって同じ現象が起きているはずだ」

「……と、いうと?」

「討ち洩らしさ」


 小首を傾げてコツンと頭と頭を合わせてきた少女に、俺は続けた。


「さっきの戦いで、フェレシーラが『浄化』を打ち込んでもギリギリ倒しきれていなかった影人、ちょいちょいいただろ?」

「ふむ……たしかにいたわね。フラムにとどめを刺してもらってた奴がかなり」

「そう。それで半死半生みたいになってる影人を『解呪』する為に同時に『分析』をかけていたんだけど。特に術法式が暴走しているヤツはいなくてさ。ダメージを受けてボロボロになったのはいても……あの鳥頭みたいに、明らかにおかしくなってるのは一匹もいなかったんだ」

「なる。それで鳥頭の術法式は壊れていなかったし、自壊する仕掛けがあればあの時点でとっくにしていたはず、ってことね」


 こちらの推測に納得がいったのだろう。

 フェレシーラはちょいちょい仕掛けてきていた、後頭部でのヘッドバット(弱)を中断すると、コクコクと頷いてきた。

 いやまあ、コツコツって感じだったし、別に嫌でもなんでもなかったけど。

 

「言われてみれば納得ね。最後の鳥頭なんて、フラムの撃ったトンデモ『熱線』で跡形もなく消し飛んでいたし。まあ、あんな分厚い岩盤を貫通しちゃうような代物が直撃したら、当たり前なんだけど……それも『影人は倒すと消滅』する、ってイメージと被っちゃってたし」

「だろ? ほんと順を追って考えてみたら、どれも消し飛ばしたか、トドメまではいってなくて合体したり逃げ出したりで……全然違うんだよ、あの影人は」

「正にさっきも貴方がいっていた、『斥候』型と『兵士』型って感じね。前者は倒されたとみてもダミーを巻きつつ逃走してから、アトマの吸収と変異強化を狙う。しぶとく生存を狙うけど。後者は戦闘向けにスペックを寄せているせいか、いまのところ特殊能力は備えていないし……」


 暫し考え込む様子を見せてきた、フェレシーラ。

 彼女が考えていることは、大凡の察しがつく。

 

「となると、例えば……両方の特性を備えたタイプが出てくると、かなり厄介だろうな」

「そうね」


 それを証明するかのように、彼女は俺の呟きに、すぐに反応を示してきた。

 

「私やフラムなら、対応もしていけるでしょうけど。兵士からは相当な被害が出るはずよ。そうなれば、アトマを奪われて更に影人が暴れまわることになるし……見た目も真似てくるのなら、相当厳しいことになるでしょうね。記憶や技術まで奪われるとしたら、そんなものが、街に数体でも出現したら……」

「大パニック待ったなし、だろうな。例えば俺が製作者で被害を出すことを優先するなら、そういう術効を持たせるように改良するだろうし」 

「やめてよ。そんな考えたくもない状況の話なんて」

「わるいわるい。例えば、の話だよ。そんな御伽噺に出てくる悪の魔術士みたいな真似、やらないって」


 珍しく心底嫌そうに顔を歪めてきた神殿従士の少女に向けて、謝罪しつつも……俺は一人立ち上がり、真っ暗な空を見上げた。

 

「なあ」


 短すぎる呼びかけに、返事はなかった。

 ただ、彼女もまた木箱に別れを告げて立ち上がったことは、見ないでもわかった。

 

「影人を操っているやつが、何処かにいるとしてさ。普通に考えたら、首謀者は近くにはいなそうだよな」

「そうね。もし影人に指示を出す為に、術者が必要だとしても……これだけの数を個人で製造・管理しきれるとは考えにくいから。協力者、ないし下っ端術士にも操らせているってパターンでしょうね」

「さすが、そういう関連性に頭を回すのは速いな」

「他のことにだってちゃんと回しますよーだ。フラムほどじゃないにしてもね」

「お褒めいただき、恐悦至極。ってやつだな」


 言いつつ、俺は腕を天に差し上げる。

 そこにバサリと翼を打ち鳴らしながら、ホムラが降り立ってきた。

 

「監視サンキューな、ホムラ。でも眠くなったら、寝れるうちに寝ておくんだぞ?」

「ピ! グルゥゥ……キュピ!」

「あら、まだまだやる気満々じゃない。それじゃそろそろ、行くとしましょうか」

「ピィ♪」


 フェレシーラの呼びかけに、ホムラが応える。


「人を選ぶ形にはなるけど、いまの話を一度しておこう。もしも俺たちの手に負えない、新手の影人が攻め入ってくるようなら……」


 そうして三人一緒になって目指すのは、方陣の中央。

 

「多分このままじゃ、援軍が来るまでもたない」

 

 その先頭を行きながら発した言葉に、白羽根の聖女が頷きを見せてきた。 



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