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只今混沌の淵にて  作者: サイカ
第一章:ファンファーレ
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第9話 犯罪の定義って?

◆◆◆




 先程、椅子を燃やした一味と認定されているのだろう。何のハプニングもなく、受付にたどり着いた。ガチガチに受付嬢も緊張しているが、新人とかではないのだろうな。


「冒険者登録をお願いしたい。私と連れのこの子たちで3人分だ」


「は、はい。かしこまりました。この紙に必要事項をご記入ください。良ければ代筆をしましょうか?」


「いや、いい。アスタもベリーも書けるな?」


「はい」


「お任せください」


 名前と年齢と性別しか書かなくていいらしい。ゲームの設定で日本語で書いているつもりが、勝手に異世界特有の文字に変換されている。


「この魔石に手を当てて、楽にしてください。念のために犯罪履歴がないことを確認させていただきますね。」


 検問所とほとんど同じようだ。管理されつくしているリアルとは全然違う。逆にざる過ぎて心配になる。しかし、これはモンスターの関係で難民が多かったり、文明がまだ発達していなかったりという関係上仕方がないらしい。それに、プレイヤーからしたら有難いことに違いはない。


 イキシアはオレンジ色の魔石に手をのせる。すると、その魔石が水色に変わり、「はい、大丈夫です」と言われ、手を外す。


 ベリーは犯罪者だったが、検問所でも同じことをして通っているだろうし、心配はいらないはずだ。


「はい。問題ありませんでしたので、説明に移らせていただきますね。冒険者ギルドでは、ギルドへの貢献度と実力によって分けられています。初めは赤レッド級のカードから始まり、その上に黄色イエロー級があります。黄色イエロー級のさらに上となると、ベテラン冒険者としてもう一度再登録の手続きをさせていただきます。そして、カードからペンダントに変わり、そのペンダントにつけられた宝石の種類によって級が見分けられます。銅級、銀級、金級、白金級、アダマンタイト級があります。」


「質問だ。実力というのは昇級試験か何かがあるということか?」


「はい。カードのうちは貢献度が主に判定基準になりますが、カードからペンダントに変わるときは昇級試験があり、実力も重視されます」


「分かった。続けてくれ」


「はい! ギルドで依頼を受けるには2通り。あちらのボードで貼られている紙をこちらに持ってくるか。ギルドを通してのご指名として、こちらから声をかけさせていただく場合の2通りです。紙には推奨される級が書いておりますが、強制力はございません。しかしながら、依頼を失敗された場合、次の方に上乗せする報酬、また依頼主へのお詫びとしての費用、違約金が発生します。また、冒険者同士の争いについてギルドは一切関与しませんので、ご注意ください。」


「最後に、ギルドでは素材の買取を行っておりますので、よろしければご利用ください。ご質問はございませんか?」


「ああ。」


 イキシアはアスターとベリーに顔を向け、質問がないことを確認すると頷いた。




 イキシアが踵を返し、受付嬢から離れると、緊張が解けた受付嬢が疲れで机に突っ伏したようだ。その時に、「何この人ヤバい。大抵の人は説明なんて分からないで流すのに……。顔よし、強さよし、頭よしだなんて。こんなスリーよしに会えるなんて。生まれてきてくれてありがとう。私の推し。生きててよかったぁ。これはこれから荒れるわね。あの人、絶対にモテルわ。いや、でも彼女さんたちがいるから……強奪⁉ キャァー。萌えるわね‼」とか何やら言っていたのは聞き間違えだろう。







◆◆◆




 所々木々が立っているものの、そこまで見通しが悪いわけではない道を歩く。リリスとローはログアウトしたが、イキシアは超ショートスリーパーなので、基本的に睡眠時間は4時間で事足りる。だから、さらにもう1時間追加でレベル上げに来たという訳だ。


「それでベリー。君は犯罪者じゃなかったか? どういう小細工をしたんだ?」


 今更な感じもしたが、聞いてみた。


「いえ。わたくしは厳密に言うと、犯罪者ではありません。」


「と言うと?」


「この世界での犯罪者というのは、放火や殺人をした人に限られます。窃盗や詐欺は何十回もしなければ含まれません。ちなみに、わたくしは窃盗を1回しただけなので、懲役は実は1年で終わりでした。ただ、行く当てもないという理由で3年近くいただけです。」


「ガバガバじゃないか。〈泡沫うたかた〉」


 ゴブリンのうち、1匹はベリーに任せ、もう1匹は斧を投擲し、その餌食にする。そして、最後の3匹の迫ってきたゴブリンから武器を取り上げ、口に泡を押し込み、窒息死させた。


「まぁ、この世界では窃盗は割と良くあります。それをいちいち記録していてはきりがありませんので。」


 少し息を上げながらも、話せるくらいには慣れて余裕が出てきたようだ。


「なるほどな。話は変わるが、それで結局、広めの部屋を5人で使うらしいが良かったのか?」


 ちなみに、アスターは街に興味があったため、気を付けるように念を押して街に置いてきた。アスターであれば、腕っぷしも大丈夫だろうし、1人は寂しいのではないかとも思ったが、それよりも好奇心が勝るようでルンルンなご様子だった。


「はい。一応、部屋は2つに仕切られていますから、若様とロー様とわたくしたちは、別室同然と言えるでしょう。それに加え、若様たちは荷物を部屋に置く必要がなく、寝るだけです。つまり、荷物はわたくしの分だけですし、いざとなれば若様に保管してもらうこともできますので。」


「それならいいんだがな」





 ちょうど会話が切れたタイミングで、初めてみるモンスターと出会えた。


 ウサギに近い見た目をしている。ウサギの色を反転したかのような色合いだ。全体が黒で耳の部分は水色になっている。他のウサギに遭遇していないため分からないが、レアな感じがする。


 逃がすのは勿体ない気がし、幸い気づかれていないため、気配を消して近づいた。


「〈雪嵐〉」


 これは、〈青嵐〉と〈泡沫〉がカンストしたため、特殊スキル〈効率〉によって統合できるのではないかと考えて、スキルエリアで〈青嵐〉の上に〈泡沫〉をスワイプとできた新スキルだ。と言っても、この2つはスキルエリアから消えただけで使える。そのため当然EPは要求されたのだが、思いのほかこれが高かった。せっかくだから、これを試してみるべきだろう。


 雪と言うよりは雹がウサギを包み込む。ウサギはどうにか抜け出そうと、走り回るがウサギを中心に起こっているため、抜け出せない。


 しかし、その速度はかなり早く、視界がふさがれているため、ハチャメチャではあるが、すぐに引き離されてしまいそうだ。


 イキシアはベリーを強引に抱えると、全速力でウサギが駆けていった方向をめがけて走った。

お久しぶりです。ストックが底をついたので、次の話からは週一更新を目指します。これからも「タダカオ」をぜひよろしくお願いします。うん? ダサい? でしたら、なんかいい感じの呼び名、教えてください。

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