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只今混沌の淵にて  作者: サイカ
第二章:天変地異
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第19話 実験協力って何? それ美味しいの?

◆◆◆


 出迎えてくれたメイドさんの後に付いて、廊下を歩く。歩く先には次々と蠟燭が付いていき、歩いた後には消えていく。

「ではまず、ご用向きをお伺いいたします。」

 空気が淀んでいること以外、不気味なところはなく普通で、怪しい骨や絵なども見当たらない。

「こちらではアーティファクトの研究をされている方がいると聞きました。私たちに、アーティファクトを作っていただけませんか?」

「かしこまりました。ひとまず、こちらの部屋でお待ちください。ノア様を連れて参りますので」

 待機場所として連れられたのは、そこそこ広く、大きなテーブルと1人がけのソファーが10個並べられている。人数分過不足なく、ピッタリだ。メイドが待ち構えていた時から確信していたが、やはりこの島周辺は監視されていたようだ。浜辺に落ちていた鴉の羽しかり、「梵天」「ノア」という名前しかり、ここは鴉をモチーフにしているようだ。

「それで、ここでアーティファクトを作ってもらってどうするのかな?」

「はい。あの竜宮城の攻略作戦としては、大前提としてなるべく戦闘さけ、短期決戦でボスを倒す方針です。ボスは戦闘好きで、それにあの口ぶりからシャチたちさえ、どうにかなれば後はそう時間はかからないはずです。だから、あのシャチたちは他のプレイヤーたちに相手をしてもらって引き剥がす。ですが、最初からここに入れば、シャチはこちらのことを多少なりとも気にするため、完全に振り払えない。もし、堂々と入って行っても、ギルド拠点をものにできるのは1つのギルドだけだ。上手く交渉を付けるのは難しいでしょう。」

「確かにですです。それで?」

「俺の周囲の人間──3人が限度です。それであれば、気配を消して上手く抜けられる。ローの特殊スキル〈暗躍〉で後3人は追加できる。ただあと2人が問題です。」

「それで、ローの強化ってことだね。後は、ここの研究者の勧誘までできたら、なお良しってとこかぁ。」


「では、ボス戦の対策を教えてください。」

「総力戦、さらに言えば、短期決戦にするつもりだ。〈ファントム〉で幻術をかけ、王手にする。〈ファントム〉の発動条件は対象を5秒、半径10m以内に留めること。これは相手のレベルが高ければ高いほど成功率が上がる。と言っても、元々の成功率が低い。だから、それを〈プロセシング〉で上げる。そして、さらにアーティファクトで確立を上げられれば、さらにいいな。」

「5秒ですか。少し厳しいと思いますけど。」

「ああ、そこでだ。複合魔法って知ってるか?」

「…複合魔法?」


 ガチャリと言う音とともにドアが開いた。男はブルーブラックの髪を漆黒のリボンで結い、それと全く同じ色のカラスの羽のようなものを左右に付けている。生えている感じではない。

「始めまして。私はノアだ。よろしく頼む」

「私はイキシアと言います。突然の訪問ですみません」

「なに、構わないさ。君たちはここにたどり着いたんだから。」

「やっぱり、何か仕掛けがされてるんですか?」

「いやね。私があえて何かをしていたわけではないと《《思う》》んだがね。不思議なことに、ここには、私にとって価値のあるものしか来られない。そういうふうに、もともとできているのだろう。」

 仕掛けをしたのはノアかと聞いたのに対して、していないと思うと答えた。であれば、ノアは記憶喪失なのだろうか。それとも、この口調からして随分と年を重ねているようだし、忘れているのかもしれないという意味なのか。

「さて、君たちはアーティファクトとは何か分かるかい?」

「アーティファクトというのは、アイテムよりも柔軟で汎用性が高く、精密で定期的にケアをしなくちゃいけないものですよね。」

「その通りだよ。加えて言うなら、アイテムは魔石───なるほど、君たちはでーたくりすたると呼んでいるのか───それから作るわけだ。しかし、アーティファクトはモンスターの素材から作るのだよ。」

「さて、他に質問はないかい? では、要望を聞こう」

「スキルの効果を引き上げるアーティファクトと、スキルの成功率を上げるアーティファクトです。」

「それはどれくらいの強力さかな?」

「どちらも、最低でも2倍です。」

「そうだね。誰でも使えるものであれば、材料がすぐに揃っても2週間かかるだろう。ただ使用者を限定すれば、すぐに材料を揃えられれば4日もあればできるだろう。」

「対価はどれくらいになりますか?」

「ああ、言っていないかったね。ここでは、対価にお金はいらない。その代わり、対価として実験の協力、もしくはそれ相応の技術や知識を対価としていただくことになるがね。こちらとしては、前者をお薦めしよう。なにせ、君たちは素晴らしい逸材なのだから。」

 そう言って、ノアは目を細めて薄く嗤った。


〈あの笑み、見ましたか。やめたほうがいいと思いますが…。〉

〈またここに来るのは、私も嫌なんだけど〉

〈うーん。でもね。特殊な隠しイベントっぽいし、やってみたい気なぁ。〉

〈はいはいはいです。 絶対やろうぜです! ゲーマ魂が燃えてきたーですよ〉

〈大層なパトロンがいるようだし、勧誘は難しそうだ。〉

 口ぶりからそう推察したのだろう、ローもそういうからには、やはり肯定側なのだろう。

〈だよね〜。なら、やっぱここで協力して繋がりを持っておいたほうがいいんじゃない?〉

〈そうですね。多数決にいたしましょう。〉

〈賛成が6、反対が2ですね〉

「分かりました。こちらからは実験の協力をしましょう。」

「クククッ、とてもとても楽しみだが、先に素材の確認をしようか。必要なのはシャチの角に、アダマンタイトの粉末…」

 ノアが上げた17のうち、6つはレベル上げの際に得た素材を使い、2つは近場で調達できるため、調達する。そして、残りの9つはノアのパトロンの手が及ぶところらしく、そこから調達することになった。

「ここから北へ100kmほど行きたまえ。そこのそれほど深くないところで、リヴァイアサンと会えるだろうね。必要なのは鱗だけだ。だから、私からは交渉をお薦めしたいところだね。チャーはここから南に80kmほど行ったこところにいるに違いない。こっちは洞窟だが、行けば分かるさ。」

「ありがとうございます」

「気にしないでくれたまえ。私も楽しみだよ。本当に、ね」

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