表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
只今混沌の淵にて  作者: サイカ
第二章:天変地異
16/34

第16話 犯人はだぁ〜れだです?

◆◆◆


「何も起こらないね。」

「やっぱり、そうだとは思ってたけどね。」

 現在、土曜日の0時───公式イベントの開始時間だ。

 しかし、メッセージの1つもなく、当然イベント前のオープニングムービーもある訳がなかった。


 サンサンとした太陽がこれでもかというくらい砂浜を照りつけ、焦がしている。そんな中、アロハシャツに短パンやら、可愛らしい水着やらで走り回る姿があった。ちなみに、それらは全てレベルアップもかねて集めていた素材を使ってアスターが作ったものだ。勿論、テスト期間が終わってからの話だ。

「気を取り直しましょう。」

「やってきましたー」

「ひゃぁほいです。うーみだぁーです‼」

「……」

 いつの間にか、アスターも若干恥ずかしそうにしながらも、リリスとスト、ファイラ、そしてローに混ざってはしゃいでいる。他のメンバーも、各々海に早速飛び込んだり、バカンスチェアで読書をしたりと、自由にこのバカンスを満喫している。


 実は、初めは海にも魔物がいると聞いていたため、いつも通りローブで海に行こうとした。なにせ、人造人間だ。熱さや寒さには鈍感だ。それによって風邪をひくこともない。

 だが、約8人───ギルメン全員とベリー───から猛反対を受け、ローたちと同じく、アロハシャツに短パンとなっている。ただ、同じような服でもところどころ、デザインや柄が違っていて、アスターの気合の入れようが伺える。9人分も作るとはかなり大変だったろう───と言いたいところだが、流石だ。くつろぎながら1時間くらいでできたらしい。


「ストさん。どれくらいまでなら潜れそうですか?」

 双葉のような形をした角に1対の蝶のような羽を付けた、カイコガによく似た人物は、ぷっはーとでも言いそうな顔をしている。

「うーん。30分くらいです? 頑張ったら、40分くらい行けそかもです。でも、その間、毎分HPが1ずつ削られ続ける感じーです。」

 ストは悪戯っ子で性格がかなり悪いが、決してできないやつではない。ただその幼い外見に惑わされ、ホイホイ騙されてしまった被害者が余計に増えてしまう。

「それにしても、よく竜宮城なんて見つかったねです。協力者が素直で良かったじゃんですよ。」

 ギルド拠点候補らしき竜宮城はイキシアが新しく取得したスキル〈メモリー・リサーチ〉でこの現地民の記憶を調べて得た数少ない貴重な情報だ。

 その時は普通に平日だったため、ほとんどのメンバは参加しておらず、ストも参加していなかった。しかし、何でも聞きまわる───相場は良からぬことに利用するためと決まっているが───ストが知らないはずがなく、さっきの皮肉もそういったことだろう。

 ただ、その後に付け加えられた「うっわ~です。極悪人じゃんですね。」というのは訂正してほしい。確かに、記憶を知るためにはインターネットのようにワードで検索してそれを抜きとる必要がある。そのため、そのスキルの対象は抜き取られた記憶がなくなってしまうのだ。

───だが、あなたほどじゃないな。

「ストさんには負けますね。でも、それは困りました。」

「そそ。俺はレベル8です。HPが最大で30引かれるもそこまで痛手じゃないですよ。けど、他の連中───特にファイラとかは生産職の上にレベル4らしいですから、キツイメンバーも居るだろねです。」

 それじゃです、と言って必要最低限のことだけを告げて、ストはバカンス満喫モードに再び入ってしまった。この調子だと、30分は各自自由行動にせざるを得ないだろう。

 イキシアも読みかけの本を開いて、ベリーが用意してくれた洒落たグラスを片手に読み出した。ちなみに中身は麦茶だ。





◆◆◆


「最終確認です。まず竜宮城について、リリス」

「はい」

「何してるんだ」

 いつの間にか、どこで手に入れたのか分からない黒縁メガネをリリスがイキシアにかけている。

「竜宮城はそうあると言われているだけで、確実にあるかどうかは分からない。現地民が3日前に起こった大地震で不審に思い、海に潜った。そこで、この下の海底の一部が隆起していた。ここはもともと祟り神が眠っていると言われていて立ち入りが厳しく禁止されている。だよね?」

「それにそこ! ベリーもいい感じに資料にペン入れて、丸読みさせるな。」

「あっははは。シアン君、しっかり《《せんせー》》じゃんです。」

「ぷ、ぷっぷっ、あっはははは。」

 ストは、よほどドツボにはまるったのか、腹を抱えて笑っている。他のメンバーも2人ほど顕著ではないが、笑いを禁じ得ないようだ。

「はい。次、ロー。竜宮城での行動プランについて」

「はっ。竜宮城に着くと、入る前に一度シアンとアスター以外の全員が息継ぎに上がります。そして2人は斥候として、生存して帰ることを目標として情報収集をいたします。30分を目処にここに集合となっております。その後は生産職のファイラ嬢以外の皆様で総力戦となります。ただ異業種以外の皆様は息継ぎのため、ここに書かれている通り交代でお願い致します。」

 ローが長文をロールプレイングで読み終えると、おおーっという歓声が上がった。クールな彼がやるからこそ、板についていてまるで───いや、そう間違ってはいないのだが───参謀らしく見える。

「そうだ。ストさん。依頼についてお願いできますか。」

「オケェーです。依頼は大地震の原因の調査で、前金が金貨100で基本報酬が500ですよ。情報次第で追加報酬ですです。竜宮城での拾得物は3:7で分けて、そのうち3つはこちら側が選べるでしょ?です。 でも、この依頼主さん、俺とキャラ被ってるんだよなです。」

「いや、スト君は中身JKじゃなかった……DKだけど、あの子中身DCだからさ。それに、その口調はかんなり珍しいと思うけどね。」

「付け足すなら、依頼主の言い方だと後4、5組くらいにも依頼を持ちかけてるだろうってところですね。」


「ではいざ尋常に参りましょう!」

「ちょっと、ベリーに変なこと教えたの誰ですか?」

 皆が同時に目を逸らす。それも全員だ。これは全員が関わってるやつだろう。何やってるんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ