6.とある朝日の
息苦しくて、チーは目を開けた。
外はまだ暗い。もう一眠りできるだろう。体を横に向けようとすると、肺から込み上げる空気があった。
「! けほっ、こほっ……こほ、」
軽く空気を出すだけのつもりが、肺から出てくる空気は後を絶たない。痰も絡んでないのに、咳が止まらない。
「……ん、ぁ?」
「!」
薄い布団を共有しているユーヤンが寝返りをうちながら眉間にシワを寄せた。
(………このままじゃ起こしちまう)
とりあえず手で口を覆って、テントの外に出た。昼間と違って、太陽の出ていない村は静かで、やけに寒かった。
けほ、けほ、と治まるまで咳を続けるが、だんだんと喉が痛みを持ってきた。
こぽ、と喉から音がした。あぁ、嫌な予感がする。
「……………あ、っ」
口から出たのは、血だった。ぞわりと背筋に寒気がはしる。見たことがあった。咳をするたび血を吐いて、飯も食えずに死んでいった、チーがいた村のひとたちだ。
『お前にも感染ってるかもしれない』
診てもらっただろ、何もなかったはずだ。だって、これがもし同じ病なら。
―――彼にも、もう感染してしまっている。
『いいかい。私が良いって言うまで、ここを開けちゃいけないよ。お前は良い子なんだから、最後まで、アタシの言うこと聞けるだろ、………なぁ、⬛︎⬛︎』
「うぁ、」
少年奴隷として自分を売った、本当の親のことなんて、もう覚えていない。自分を買ったデブなババアは、買った奴隷を数字で呼んでいた。にも関わらず、自分を親だと呼ばせるのだから、とんだイカれ者だ。
(思い出した。私は………)
「チー!!!」
そう叫んだ声は、太陽が登り始めた空にキンと響いた。