5.村で噂の
「聞いたか? 例のガキ、ユーヤンの奴が面倒見てるらしいぞ」
「知ってるよ、チーのことだろう?」
「妥当だろ、あんな奴、ユーヤン以外にゃ無理だって」
そんな話を小耳に挟みながら、お遣いだと頼まれたものを抱えなおす。チーと名付けられてからは、とことんその名で呼ばれるので、もう村のみんながその名で呼ぶ。
チーは、その状況が気味悪くて仕方がなかった。
「………買ってきた」
「お、ありがとチー。昼飯にするか」
「…………うん」
ユーヤンから診察を受けてから、彼はチーに対して、やれ食い過ぎだの遠慮しろだの言わなくなった。彼が思っていたよりも、チーには栄養が足りていなかったらしい。
ユーヤンは料理が下手である。技術の話ではない、味の話だ。職業柄、薬膳のような水同様の薄味のものしか作れない。
味付けに使うと美味いらしい香辛料は高級品なんだとか。
「いつか、香辛料たっぷりの飯を食おう。もう少し西に行けば、安く手に入るそうだから」
「? お前、この村の医者じゃないのか」
「今はね。俺は《遍歴医》なんだよ、旅をしながら医者をやってる」
あぁ、だからか。
チーは納得した。他の、木でできた民家とは違って、この男は布一枚のテントで住んでいる。これは、建てやすく片づけやすく、かつ軽量で運びやすいものを選んだ結果なのだ。
「だから、お前もいずれこの村を出られる。もう少し辛抱してくれよ」
「………別に、どうでもいい」
チーが呟いて食事を再開すると、ユーヤンは呆れた顔をした。