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13.いつかの誰かへ
呑み過ぎも大概にしろとユーヤンが雷を落とした。彼が声を荒げるのは本当に珍しく、チーも眠気を忘れた。
「な、なんでぃ。他村もんが偉そうに!」
「実際俺は偉いんだよ、この国で医者が務まるのなんて、片手で足りるくらいだぞ! お前ら、酒がどれだけ人に害を成すか知らないだろう!」
ひとたび量を間違えば、あっというまに死に至る。
それを知らないから、いや、知った上で、死んだ女もいたのだ。酒はひとをバカにする。嫌なことを忘れさせてくれる代わりに、周りへの危機感を失う。
「毎晩毎晩どんちゃんやりやがって、子供らが睡眠不足になってんのを知らないのか!? 誰ひとり見てないのか!?」
「ユーヤン」
チーが腕を引いた。怒鳴っているユーヤンの方が、なぜか泣きそうに見えたからだ。
彼はふとチーを見て、ぎゅっと顔を歪めた。チーの目元に隈ができている。それに気づいていないチーは、前に買った女が自分を見た目を思い出した。
「…………あ、」
ユーヤンが着ている衣類の上を、チーの手がすべり落ちていく。その手を捕まえて、勢いで抱き上げた。腕に座るかたちでユーヤンの腕の中に収まったチーは、思わずその首に腕を回した。
(捨てないで)
「………この街は、早めに出よう」
チーの背中をひとつ撫でて、言い聞かせるようにユーヤンが言った。




