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Part31:「星と珈琲の誓い、そして驚きの出会い」

 ――十字路周りを中心とする廃墟街の制圧、残敵の索敵掃討からの安全化は。駆けつけたRP AFの大隊の手で完了され。

 状況はキャラバンの人たちの救護保護、及びParty兵捕虜の拘束後送、他諸々の戦闘後処理へと移行していた。


 廃墟街の一角には野戦救急車が乗り入れられ、キャラバンの代表の女を始め、負傷者の回収手当てが行われている。


「――痛―っ……来てくれて助かったよ、ヴォートさん」


 一台の野戦救急車の内部で、キャラバンの代表者の女はメディックから受ける手当てに顔を顰めつつも。

 立ち会って居るヴォートに礼の言葉を紡ぐ。


 事の詳細経緯を明かせば。

 襲われていたキャラバンはRPに帰属するものであり。

 代表の女はキャラバンがPartyに襲われたタイミングで、救援要請の無線信号を飛ばしており。それをRP AFが受け取り、ヴォート率いる大隊が出動し駆け付けたのであった。


「いや、もう少し早く駆け付けるべきだった。犠牲者が居なかったのが幸いったが――それも彼女等が初動で介入してくれたおかげだ」


 しかし礼を受けたヴォートは、それを素直に受け取ることはせず。十分では無かった点を顧み、合わせて初動で介入した星宇宙等を評する言葉を紡ぐ。


「ハァ……あんたさんはいつも、ちょいとネガティブだな……――まぁ確かに、あの子らに大きな恩があるのは確かだ。あの子らが割り込んでくれなければ、私は殺されてた」


 そのヴォートの様相に少し呆れつつ、しかし星宇宙等を評する事については賛同を示す代表の女。


「だけど、最終的に決着を付けたのはあんたさん等の大隊だ。それへの感謝は取り下げないからな」


 そしてしかし、続けて代表の女は少し悪戯っぽく揶揄うような調子で。そんな言葉をヴォートに向けて紡いで見せる。


「あぁ、それは正直に受け取ろう」


 それに向けては、端的な色で受け取る一言を返すヴォート。


「――寿有亜」


 そんな所へ、ヴォートの背後より。そんな何者かの名を呼ぶ通る声が掛かる。

 そしてヴォートはその呼びかけに振り向く。

 野戦救急車の乗降扉。そこより体を乗り入れヴォートを見る、金髪のショートボブの美少女の姿身体がそこにあった。


「〝よろず〟か」


 そんな美少女を、ヴォートは彼女の名前らしきそれで呼び返す。


「お邪魔して悪いけど、〝あの子たち〟と、話をしとかないとだろ?」


 そのよろず(以降ヨロズと表記)と呼ばれた美少女は、続けてそんな促す言葉をヴォートに紡ぐ。


「あぁ、そのつもりだ。行くよ――すまない、自分はこれで外す」


 それに答えると、ヴォートは代表の女に断る言葉を向ける。


「あっと、悪いねヨロズちゃん。大事な〝スーア〟を取っちゃって」

「変に揶揄うのはよしてよ」


 その代表の女からは、ヨロズに向けてまた揶揄う言葉が向けられ。ヨロズにあってはそれにバツが悪そうに返す。


「安静にな」


 ヴォート本人はと言えば、自分の話題であると言うのに気にした様子は無く。代表の女に向けると、ヨロズを伴い野戦救急車を後にして行った。


「――どうしてあの子は、大隊長の事を〝スーア〟って呼ぶんです?」


 それを見送った後に、代表の女の手当てを終えたメディックの隊員は。素朴な疑問を代表の女に尋ねる。


「さぁね、ヴォートさん周りの謎の一つだよ」


 それに代表の女は少し揶揄う様にニヒルに。しかし同時に彼女自身にも謎だと言う様子を示しながら、そう返して見せた。




 RP AF大隊による行動作業は順調に進み、その行程が撤収の準備に入り始めていた頃。

 その騒々しく各員が動き回る廃墟街の一点では――少し珍妙なある意味の修羅場が巻き起こっていた。


「――むぅぅっ」

「――いはいいはいいはいいはいいはい……っ(痛い×5)」


 それは他でもない星宇宙とモカが顔を突き合わせ向かい合い。

 そして星宇宙がその端麗な顔の愛らしい両方のほっぺたを、しかしモカの両手指先に「むにーっ」っと抓り引っ張られている状況光景であった。


 星宇宙は痛みを訴えながらも、その様相は困ったような色であり。

 一方のモカは「むっすー」と大変に不機嫌そうな様子だ。


「星ちゃん、わかってる?あたし、すっごく怒ってるんだよっ?」

「ごみぇんごみぇん(ゴメンゴメン)って……とっひゃ(咄嗟)にアレしか思ひうかばにゃかったんらよ……」


 そして起こっている旨を露わにするモカの言葉に。引き続きほっぺたを引っ張られながら謝罪を紡ぐ星宇宙。


 事の原因は今先の戦闘の最中で。星宇宙がモカに向けて「マスターとしての命令」として、自分を置いて逃げる事を命じた事だ。

 星宇宙からすればせめてモカを逃がすべくの苦渋の決断であったが。モカからすれば一蓮托生の大事な人からのその命令は、少なからずのショックを受けるものであった。

 幸いにしてRP AF大隊、ヴォート等の参上によって危機は免れ、二人共に無事に生き残る事が出来たが。

 いや、二人して生き残れたからこそ。モカは我がマスターの自分を犠牲にしての命令に、物申さずには居られなかったのだ。


「星ちゃん……あたしは、ホントに星ちゃんとはどこまでも一緒だと思ってる」


 次にモカは続く言葉を紡ぐが。そこでモカの声のトーンは少し落ち。星宇宙の頬をひっぱるモカの指の力は弱まる。


「ううん……マスターである星ちゃんが、あたしを踏み台にすることは全然覚悟してる。でも、あたしが星ちゃんを見捨てるような事は、たとえ命令であってもできない――拒否するよ」


 そして次にはモカは星宇宙の瞳をまっすぐ見つめ、確固たる意志を込めた言葉をぶつけた。


「モカ……――えぃっ」

「ふみっ?」


 そのモカの様相に、一言を零した星宇宙。

 そしてしかし次には星宇宙は腕を伸ばし、なんとモカの柔らかいほっぺたを優しく「むにっ」と引っ張り返した。

 それに少し驚く声を零すモカ。


「ゴメンねモカ、モカにとってはすごく残酷なことを言っちゃったね……」


 その星宇宙はまず少し寂しそうな申し訳なさそうな表情を作り、モカに向けて謝罪の言葉を紡ぐ。


「でも、俺からも一つだけ怒り返すよ」


 しかし、それから星宇宙はその表情を毅然としたもの物に代えて続け紡ぐ。


「俺も、モカとはどこまでも一緒に居たいと思ってる。だから――「モカを踏み台にする」なんてことは間違っても言うなっ」

「!」


 確たる意思を宿した表情、眼で訴える言葉をぶつける星宇宙。

 それにモカは目を見開く。


「改めて覚悟した、俺たちは一連托生だ――だからお互いに今後、そういう発言も考えも一切無しだっ!」


 そして畳みかけるように、宣告の言葉をモカへぶつける星宇宙。


「――……それで、いいかな?」


 そしてしかし、そこから少し我に返ってしまい。星宇宙は若干気恥ずかしそうに、モカへ伺う言葉を紡ぐ。


「!……――うんっ!」


 だがそれを受けたモカは、その表情をそれまでから一点、パァと明るくし。

 「ニシッ」と悪戯っぽくも愛らし様相で、彼女のトレードマークの元気一杯の声量で。行程の言葉を発して見せた。




「――何してんのアンタ等」


 そんな、約束を交わすやり取りをしていた星宇宙とモカの元へ。

 傍から何か呆れ交じりの、つっこみの声が飛び掛けられたのはその時だ。


「んぇ?」

「ふぇ?」


 二人が同時に振り向けば、そこにあったのは他ならぬヴォートと。そして金髪ショートボブ美少女の姿。


「取り込み中だったか?」


 ヴォートは淡々とした、しかし若干の生温さを感じる顔でこちらを見ながら言葉を寄越し。

 ショートボブの彼女にあっては呆れた様子のジト目で星宇宙等を見ている。


「……あっ」


 今になって気づけば。星宇宙とモカは互いに向かい合ってお互いの頬を抓り引っ張り合うという、中々に珍妙な姿様子を晒していた。


「あぁ……いや、少しね……」

「あっははー……」


 自らの姿に気づいた二人は、そこでようやくお互いの頬を解放し。それぞれバツが悪そうに零し答え、あるいは気の抜けた笑いで誤魔化す。


「君等に少し用件があるんだが、都合が悪そうか?」

「あぁ、いや大丈夫……もう解決したから……」


 続け尋ねるヴォートに、星宇宙は引き続きバツが悪く少し気恥しそうに返す。


「それに俺たちも、あなたに尋ねたいことが……――!」


 そして居住まいを正し直し。星宇宙もヴォートに尋ねたい事がある旨を伝え返そうとした。

 しかしそれに合わせて、目の前ヴォートとショートボブの彼女に視線を流した星宇宙は。そこで「ある事」に気づき目を見開いた。


「――え」

「――ふぇ?」


 星宇宙が、そしてモカも。その視線を注いだのは金髪ショートボブの美少女。

 その姿格好はヴォートはじめRP AF隊員とは明らかに異色で。学生服をモチーフとしたアイドル衣装のようなそれ。

 そして大型の狙撃銃――対物ライフル、マクミラン TAC-50を装備するその姿は。

 形容するなら、「武装アイドルJK」。


「あ――く……〝繰世(くりよ) よろず〟――!!?」

「よろずちゃん!!?」


 そして、星宇宙とモカは揃って。その金髪ショートボブの美少女の「本名」を、高らかに響く声で発し上げた――

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