↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ディアローグ 魔法学校の殺人  作者: 屋一路
第1章 彼はそれを密室と呼ぶ
18/24

第16話 宵星の思惑



(僕はただ……魔法執判(しっぱん)官に必ず、真相を明らかにしてもらいたいだけだ)



 リィエンの目的は、それだけだった。


 本当は誰かを陥(おとしい)れても良かったが、それはライズが許容しないだろう。であれば、もう正攻法で犯人を検挙(けんきょ)してもらうほかない。

 そのためにも魔法執判官には——それがどんなにありえなさそうでも、可能性のひとつひとつに目を向けてもらう必要がある。


 けして、ライズが犯人なんて安直な結論にたどり着いてもらっては困るのだ。



 だから魔法薬学保管庫で鍵をかけ忘れたのは、リィエンということにした。

 そのほうが彼らも、この出来事を先入観なしに考えてくれると思ったからだ。



「……」


 

 歩きながら、リィエンはさりげなく魔法執判官たちに目を走らせる。


 自分とそう歳の変わらなそうな、実力も経験もさだかではない彼ら。

 けど今は、そんな彼らの捜査に賭けるしかない。


 期待はしている。けど。



(もし、ライズくんの身が危なくなった、そのときは——)






「まもなく、魔法薬学保管庫です」


 廊下でつながったいくつもの建物を通り過ぎ。

 ようやく彼らがやって来たのは、この校舎の中でも最も北東に位置する場所だった。


 ここまで来ると、校内の雰囲気もガラリと変わる。

 それまで木でできていた床は石に変わり、壁も、数世紀遡(さかのぼ)ったような古いレンガ作りに変わっていた。


 いつの間にか落ちた夕日の代わりに、廊下の壁をぽつぽつ、と。年代物の燭台が照らしている。

 校舎、というより、まるでどこかの貯蔵庫のようだった。


 ここまで来るとさすがに生徒の姿も見なくなったが——ヴァンは逆に首を傾げた。



「いつもだと、こういう現場には誰かしら見に来てるもんなんですが……」


「精霊が見張っているからでしょう。この廊下に生徒が入って来ないよう命令してあるんです」


「どおりで。それで、その魔法薬学保管庫は」


「ここです」



 先頭を歩くリィエンの足が止まる。


 彼は廊下に並ぶ古びた扉のうち、最も奥の扉の前に立っていた。

 扉は——この区画はどこもそうだが、荷物を仮置きすることを考えて、扉の前のスペースだけ壁を凹(へこ)ませた作りになっている。


 リィエンは振り向くと、扉の横に身を避けながらライズを見た。



「ライズ先生、鍵を」


「ああ」



 そう促され、ライズは白衣のポケットに手を入れる。


 指先にあたる、いつもの鍵の感触。

 持ち手をつまんで取り出すと、ヴァンが、へえ、と声をあげた。



「その先端についてるの、砂時計ですか?」



 それは、不思議な形状の鍵(かぎ)だった。

 普通の鍵同様、細長い形をしていたが、鍵穴に入れる先端部がコインのように丸くなっていて、そこに平らな砂時計がはめこまれている。


 中の砂は、傾けても下に落ちる気配はない。

 おそらくなんらかの、魔術的な仕掛けが施(ほどこ)されているのだろう。



「俺も仕組みしかわかりませんが、鍵をさすと砂が動いて扉が開くようになってるんです。ほかにも鍵を使わずに扉を開くような異常事態があれば、それもわかるようになっていて——」


「だから、あのとき正常だった、と。おっしゃったんですね」



 その瞬間、ライズは思わず顔をあげる。


 すると、ぱちり、と。

 何度も見たヴァンのターコイズの瞳ではなく、淡いピンクに色づいた珊瑚(さんご)の瞳と目があった。


 それは。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。