↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ディアローグ 魔法学校の殺人  作者: 屋一路
第1章 彼はそれを密室と呼ぶ
14/24

第12話 魔法執判官



 そこにいたのは、ひと組の男女だった。



「あの」



 そう声をかけようとして、ライズは言葉を詰まらせる。


 夕暮れの正門が近づくにつれ、だんだんとその姿がはっきりしてくる。

 石畳に長い影を敷いて立つ彼らは、年配の捜査官が来ると思っていたライズの予想に反してずいぶんと若かった。

 今年27になる自分と、そう変わらないのではないかと思う。


 そんなことを考えていると、すっと。

 遮るように、リィエンが前にでた。



「学校に何かご用でしょうか。よければ承りますが」


「あの、私たち」



 そう言いかけて、女性はさっと周囲に視線を走らせる。

 正門には誰の姿もなかったが、それでも彼女は声をひそめて言った。



「事件の連絡を受けてまいりました、魔法執判(しっぱん)官です」


「やはりそうでしたか。すみません、試すような真似をして。学校という場所はこの手の状況に繊細(せんさい)ですから」


「お気になさらないでください。私は、フィフィー・オルヴァリアと申します」



 フィフィーと名乗った彼女はライズから見て礼儀正しく——そして、どこか固い印象の女性だった。


 淡くピンクに色づいた珊瑚(さんご)の瞳に、夕陽に照り返るプラチナの髪。

 解けば腰までありそうなそれは、今はうなじが見えるほど高く結い上げられている。


 紫のシャツにネクタイ。黒を基調としたかっちりしたジャケットにタイトなズボンという出立ちは少しの隙もないように見えたが、右耳の傍に飾られた一輪の花が、不思議と目を引いた。



「そして彼が」


「はじめまして、俺はオルヴァリアさんの部下のヴァン・グリーと言います。どうぞよろしく」


 

 どこかとっつきにくいフィフィーとは違い、声色も、表情も。ヴァンはすべてが親しみやすい人物だった。


 アッシュブラウンの髪を荒く撫でつけ、ロングジャケットを着こなす様(さま)はまるでシネマや舞台の俳優のようで、本当にそうなのではと思えるほど風貌(ふうぼう)が良い。

 身長もリィエンより拳一つ分、彼のほうが高かった。


 ヴァンはターコイズの瞳で愛想よく笑うと、挨拶ついでにとショートグローブをはめた手を差しだす。

 するとリィエンは、すぐに困ったような表情をした。



「すみません、僕は重度の潔癖(けっぺき)症でして」


「そうだったのか?」



 そう尋ねたライズにリィエンはただ、かすかな笑みを返す。その間にヴァンは出していた手をひっこめると、眉を下げて笑った。



「そいつはすみません。それで、おふたりはこの学校の先生ってことでいいんですよね?」


「少し違いますが、おおむねは。僕はリィエン・チアーファ」



 すると、ヴァンがああ、と納得したように頷く。



「目の色でそうかと思いましたけど、やっぱり東のご出身だったんですね」


「よくご存じですね」



 そう微笑むリィエンの瞳は、宵(よい)の空に浮かぶ金星のような色をしていた。

 東のほうに住む人々はみな、色は多少違えど、星のような光を宿しているのだという。



「実家が、東との交易地で宿をやってまして」


「そうでしたか。……ああ、それと」



 そのときだった。

 これまでほとんど触れてこなかったのに。

 和やかな雰囲気のなか、急に、リィエンがライズを手でさし示す。



「紹介が遅れましたが、こちらはライズ・グロリエル先生」



 彼はそうライズを紹介しながら——けど顔は魔法執判官のふたりに向けたまま、こう言った。 



「魔法薬学の教師です」



 その瞬間——。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。